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第844話◇

 めちゃくちゃ……疲れた。  だるーい……。  あの後、ぐったりしてるオレを、玲央がシャワーに連れて行ってくれて、そのままバスローブで巻いて、ベッドまで連れてきてくれた。  うつ伏せに転がって、うとうとしてると、「優月」と玲央に呼ばれた。 「水飲んで」 「……ありがと」  手をついて起き上がって、ぺたんと座ったまま喉を潤す。 「おいしー」 「ん。喉乾いてたよな」  クス、と笑いながら、ちゅ、と頬にキスされて、撫でられる。  …………甘ーい、なあ。玲央。  優しすぎて、これが普通になっちゃうと、ちょっとまずいのではないだろうかと思うくらいに、優しい。 「ここ出たら、アクセサリー見に行こう」 「うん」 「何が似合うかな」  何を考えてるのか、じっとオレを見て、ふ、と微笑む。 「肌白いから、何色でも似合いそうだなぁ」 「んー……玲央はいつも何かつけてるけど。オレ、つけたことないよー」 「あー……そうだな」 「アクセサリーじゃないけど、何かつけるとしたら、腕時計したことあるくらいかなあ」  言いながらもう一口、水を飲む。  ふと、玲央の手がオレの頬に触れて、ん? と見上げると、玲央の顔が傾いて。キスされるのかと思っていたら、玲央が、首に顔を埋めた。 「ひゃ……」  びく! と震えて、ペットボトルを落とさないようにするので精一杯。  ちゅ、とキスされて、片方の手が逆の首筋をなぞった。 「……っ」  ゾクゾクして、固まってると、ふ、と玲央が笑う。 「何つけさせようかなー。楽しみ」  クスクス笑いながら離れた玲央に、むう、と思わず膨らむオレ。ペットボトルの蓋をきゅ、としめた。 「ん? どうした?」 「……っ……」 「優月?」  頬にすり、と触れられる。 「玲央、オレ、まだ、ゾクゾクが残ってるから」  何を言ってるんだろう、オレ、と思って、不意にかあっと熱くなる。 「ふうん?」  くす、と笑う玲央に顔を上げさせられる。 「まだ気持ちいい余韻、ある?」  玲央の手が、する、と首筋から下りて、バスローブの合わせ目から中に入って胸に滑る。 「……っ待って」  ほんとにその気になっちゃうよう……さっきあんなにしたのに。  襲ってくるゾクゾクにぎゅう、と目をつむった時。  クス、と笑った玲央に抱き締められた。 「外に出るからもうしないけど」  ぎゅむ、と抱き締められて、「可愛いなあ、ほんと」と、頭に玲央が頬ですりすりしてくる。 「気持ちいいのに弱い優月、可愛い」 「……玲央さんのせいですけど…………」 「……つか、だから、余計可愛いですけど?」  なでなでと頭を撫でられて、クスクス笑いながらそんな風に言う玲央に、むむ、と黙りながらも。  ……大好きだから、それ以上は何も言えない。 「優月」 「ん?」  玲央の腕から顔を上げて、玲央を見上げると。視線が合った玲央は、ふ、と微笑んだ。 「……オレ、こんなに可愛いと思うの、マジで初めて」 「――――……」 「こんなに触っていたいと思うのも。側に居てほしいって思うのも」  玲央の瞳。キレイ。  少し茶色に見えて、キラキラしてる。  玲央の言葉は、まっすぐで、綺麗。  玲央が遊び人みたいな噂あったけど。  ……周りの人、皆思ってるみたいな感じだったけど。そう見えてしまっていたのも分かるけど。  話せば話すほど。玲央は、まっすぐで。  ……体の関係が複数の人とあっても、玲央は、相手一人一人に、まっすぐだったと思うし。本気になったらおわり、はそうなったら辛すぎると思うけど、それも、期待を持たせてだらだら続けないように、だったと思うし。  人を裏切ったり、嘘をついてごまかしたり、そういうのは無い人なんだろうなぁ。男女どっちもっていうのも、それを隠すこともないし。なんか、相手を好きならどっちも好きになれるって、すごい。  ……とか、色々思っていると。  じんわりと浮かんでくる、気持ちは。 「玲央は、すごく綺麗」 「……は?」  思わず出た言葉に、玲央は、少し首を傾げて、何回か瞬きをした。なんか不思議そう。 「ほんとにほんとに、大好き」  少し首を伸ばして、玲央の唇に、キスした。    

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