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第854話◇

 会場が暗くなって一瞬静かになったけど、そのまま数秒何も起こらず、またザワザワし始めた。  コンサートとか、あんまり縁が無かったけど……この熱気にあてられて、気持ちがどんどん勝手に 盛り上がっていくの、すごい。まだ始まってないのにこんなだと、始まったらどうなるんだろう。わくわくする。  玲央達のコンサートの時は、上の階で、少し遠かったけど。  ここ、すっごい近くだし。ドキドキドキ。ステージの人と、めちゃくちゃ近いだろうな。  ライトがゆっくり会場を照らし始めて、ステージから、会場まで、ぐるぐると照らしながら回っていく。自分にライトがあたるとテンション、上がる。  付け慣れないアクセサリーが目に入るし、玲央のも一緒に見えると、もうなんか、幸せだし。  その時、楽器の音が、鳴り響いた。まだ演者の姿は見えないけど。わっと、歓声が上がった。 「――お。すげー」 「な」  甲斐が短く言って、皆も短く返事をして、わくわくした顔をしてる。もちろん、玲央も。  ……玲央って、冷めてるとかクールとか、言われてるけど。特にオレに会う前は、とか。よく皆言うけど。  ――今、この音にわくわくしてるのは、オレが居るせいじゃ絶対ないから。  もともと、玲央はちゃんと音楽を好きで、楽しいって思ってやってたんだろうなあって。だからあんなに素敵なんだと思うと。 「ん?」  玲央を見つめていたオレに気づいて、ふと見つめられる。 「ううん。この音だけで、すごいって思うの?」 「ん。すごい」  ふ、と嬉しそうに頷いた玲央に、自然と顔がほころぶ。  好きなものがあるって、やっぱり、素敵だよね。  ――玲央の歌声も、ギター弾いてるとこも。ほんと、カッコイイし。  ピアノ、弾いてるとこも、好き。  玲央たちがすごくわくわくしてるのを感じて、オレのわくわくもどんどん増していく。その時。  会場がいきなりすごい音に包まれて。ステージ上に、人が登場。  歓声がすごい。  音楽が続けて奏でられて、派手なライトがステージを照らす。  始まったばかりだけど――「一体感」みたいなの、すごい。  わー、とステージを見つめていると、ぽんぽん、と玲央がオレの背中に触れた。目が合うと、ふたりで、笑顔。  音楽と一緒に、ドキドキした鼓動が速まる。  夏休み。  玲央達がライブをするのにくっついていっていいって言ってくれてて、それが実現しそうな感じで。  こんな風な感じで、玲央たちが歌うのを、たくさん見れるんだなあと思うと、余計にそっちへの期待も高まってしまう。  玲央たちの演奏を聴くために集まったファンの人達と一緒に。  なんかすごく楽しみ。 「優月、あの人達が去年の」  玲央がオレを見て、ステージ上の、あるグループを指差す。 「優勝した人達?」 「そう。見ててみ? 歌も、よく聴いてて?」 「うん」  頷いて、特にそのグループを見つめる。  見ててってことは、玲央が認めてるってことだよね。  ――玲央達が人気投票で、負けた人たち、か。  オレにとって、玲央達って、憧れみたいなキラキラしたものに見えるから、それに勝った、と言われると。  すっごく期待度があがる。 (2024/10/29) 【お知らせ】 恋なんかじゃない、アルファポリスのBL大賞にエントリーしました。 来年は、このお話、何かの形で本にできたらいいなあとか色々思うし。 参加は今年までかなぁ? 同だろ来年続けてるかも未知ですし。 三年間も、読者投票の10位以内に入れて頂いてありがとうございました。 今年はどうなるか分かりませんが。 とりあえず、更新頑張ります(*´艸`*)💕 玲央と優月、応援頂けたら嬉しいです✨

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