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第867話◇ ※
◇ ◇ ◇ ◇
服を脱いで一緒に、バスルームに入った。
何度もキスしながら、前も後ろも思うまま触れて、ローションで慣らして。
鏡に手をつかせて、後ろから――――。
最初の頃に比べたら、慣れてはきた気はするが、繋がる瞬間、背中が強張る。
――――ゆっくり中に入れると、ふ、と少しずつ。吐息を漏らす。
「……んっ……ん、ん、ぅ……」
まだ激しくは動かない。そのままゆっくり、馴染むまで待つ。
緩く動くたびに、耐えきれないように声が漏れて、鏡についた手が、ぎゅ、と握りしめられる。目の前の鏡は見ずに、俯いてる。
「優月……」
後ろから、優月の背中に密着して、腕を前に回して抱き寄せる。
ん、と声を漏らし、そのまま、一生懸命振り返ってくる。
「――れ、お……」
涙目。顔、上気して赤い。……可愛い。
恥ずかしいんだろうな、ここで全部丸見えで、立ってするの。
ゆっくりと抜いて、中まで。
んん、と背中が震えて、きゅっと中を締め付けてくる。
「――優月」
もう一度、ぎゅう、と抱き締める。
「……最初にお前に触れてた時にさ」
「……ん、ン……?」
また、潤みまくりの瞳で振り返って見つめてくる。
「……いっこずつ丁寧に覚えさせて、体全部、オレのにしたい、とか。言ってたの、覚えてる?」
本当は、もう――――思うまま動きたい衝動がある。でもあと少し慣らしてから、と思って、そう聞いた。
自分の声が、熱を帯びてる気がする。抑えないと、息が上がる。
優月は少し間を置いて、ん、と頷いた。
「お、ぼえてる……」
一生懸命な返事に、そっか、と微笑んでしまう。
「どこ触っても気持ちよくなるようにしたいって、言ったと思うんだけど」
言いながら、後ろから優月の耳元にキスして、「――そうなってる?」と囁いてみた。びく、と震えて、そのまま うんうん頷いてる。
「……なってる……から」
なってる、から? と続きを待ってると。
「も、大丈夫、だから――――早く……」
鏡に縋りつくみたいに、ますます俯いて。鏡で体を支えてる拳にも更に力が入ってる。後ろから見て、耳まで真っ赤。
「……っ」
早く、だって。
――――なんか、たまに天使みたいとか思うほどに純粋なとこも、知ってるから。
ヤバいな。ギャップに、余計、熱くなる。
一度抜いて、優月が「ひゃ……」と震えた中を奥まで突き入れた。仰け反る優月の綺麗な背中に、ゾクリとした感覚が走る。
「んん……っぁ!……あ……っ」
声。可愛い。もっと聞きたくて、弱いとこばかり責めてると、震えた優月がイって少し硬直――中を締め付けてくる。きつくなるその中を、また動き出すと。
「あ……っ待っ……」
待って、言いたかった言葉は分かってるけど。
待てる訳、ない。「悪い、無理」と言いながら、少し笑ってしまうと、優月がくる、と振り返った。すげー泣いてる。とろけた顔してて、息も荒いし。エロい顔、してる優月に、めちゃくちゃ惹かれる。
「優月……」
「……んン、ぅ……あ」
顎を掴んで深く口づけて、舌を絡めとる。
「んんっ……ん、ぅ……」
気持ち良さそうに漏れる声。優月の感じるとこなんて、どこもかしこも、もう分かりやすすぎて。素直な反応が、可愛くて。
「……れ、お……」
唇の間で呼ばれる自分の名前。
――たかが、名前。
なのに。
赤い顔に潤みまくった瞳に、ふにゃ、と下がった眉毛。
濡れた声で、縋るように呼ばれると。体中に熱が沸くみたいだ。
「……っ……あぅ……っ……は、あ……」
中の感じる部分を刺激すると、優月がまた鏡に寄りかかる。
「……れ、お……」
腰を掴んで、奥を突き上げて、小刻みに刺激する。
「……っあ……ぁん……っ」
甘える声が。
愛おしすぎて、体中、熱く燃えるみたいで。
「気持ちいい? 優月」
「ん……っ……んっ、ふ……」
こくこくこくこく。
小さく何度も頷く。
「へんに、なりそ……」
言って少し顔を上げると、前の鏡に、優月の顔が映った。
「優月――そのまま鏡越しに、オレのこと、見てて」
「……? あ」
不思議そうな優月と鏡越しに目が合うと、恥ずかしそうに息を顰める。中を突くと、一度俯いたけれど。またすぐ顔を上げて、頑張って、オレを見つめてくる。
「……っ……」
こっちで抱く時は、いつも顔は見えないから。新鮮、つか。
「――――……かわい……」
鏡に映ってる自分の姿に、めちゃくちゃ恥ずかしそうな顔してる。
目が合うと、またふにゃ、と眉が下がる。
その瞬間。
「……っっふ……ッ……」
ぽろ、と涙が溢れた優月に、オレが驚いて止まると、そのまま続けてポロポロ涙をこぼす。
「優月……」
愛しい感情でいっぱいになりながら、一旦やめるかどうしようかと鏡越しに見つめていると、優月は、ごしっと涙を拭って、振り返る。
「……ごめ、ん……はずかしすぎ、るから……前から……ぎゅ、てしてほしい……」
「――――……っ」
涙も言い方も。言ってることも。
可愛すぎて、ぐっと息が止まった。
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