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第871話◇
「おはよー、優月ー」
「あ、おはよ」
三人の友達。オレの周りに座りながら、皆が笑う。
「なんか優月、一人でニコニコしてるし」
「彼氏?」
「あ、うん。そう」
ふふ、と笑って頷くと、なんか三人にじー、と見つめられる。
「ちょっと気になること、聞いていい?」
「うん。どーぞ?」
「優月ってさ、もともと男が対象だったの?」
なんかたまに聞かれるかも。と小さく頷きながら、んー、と考える。
「違う……というよりは、考えたことも無かった感じかも」
「なるほど……」
「男は考えることなく、女の子だと思ってた感じ?」
「うん……あーでも、オレ……」
ちょっと昔のことを思い出しながら。
「好きかなって女の子はいたんだけど、大体仲良しのお友達になっちゃってて、多分、オレ、今初めて、ちゃんと好きなのかも……とは思ってる」
そう言うと、皆、ふぅん、と頷いてる。
「分かんないじゃん。皆も、来年くらい、彼氏出来てるかもしれないよね」
ふふ、と笑いながらそう言うと、皆、ぴた、と止まって顔を見合わせて、どうだろ~と笑ってる。
「こいつはねーよな、女の子大好き星人だし」
「はー? お前こそ、そうじゃん。合コンばっかしてるし」
笑いながらのそんな言い合いになったところに、また別の友達たちが近づいてくる。
「何もりあがってんの?」
「あ、おはよー」
「どうしたんだよ、朝から騒がしいし」
笑いながら皆が適当にまわりに座っていく。
「んーと……オレが元々男が対象だったか聞かれたから、そうではないかなって話してて……もしかしたら来年くらい誰か、彼氏いるかもしんないじゃん、てオレが言ったら……」
「いや、ほら、こいつとか、女の子大好きすぎだから無さそう、とかね。そんな話」
「いやいや、お前だってそうだろ、っつー話」
「そうそう、そんな感じの話」
あは、と笑いながらオレが頷いていると、ひとしきり何やらツッコみ合って、ふと、静かになった時。
「そういえば、優月の相手って、皆知ってんの?」
そう言った一人に、そこに居た皆が、ふ、と視線を向けた。
「いや、だって、優月、クラス会の時は言わなかったじゃん?」
……まあ確かに、あの会では言わなかったけど……その後お迎えに来た玲央を見た人達も居たし。オレ、学校でもたまに玲央達と居るから……ちょっとは知ってる人も増えてきてるんだろうか。でもここの皆は、あの時クラス会に居なかった人も居るけど。
そんな風に思いながら、皆の顔を、見回していると。
皆が突然、ふはっと笑い出した。
「ん??」
何で笑うの、と皆を見ていると。
「なんかあれだよな、暗黙の了解ってやつ?」
「そう、なんか……口コミみたいにさ」
「そうそう、なんか、気付くと結構知ってる奴多いっていうかさ」
ん? ……あれ??
皆のそんな会話を聞きながら、オレの頭に浮かんだ疑問。
「もしかして、皆知ってるの??」
そう聞くと、皆、顔を見合わせてから、また、それぞれクスクス笑い出す。
この感じだとここの皆は知ってるみたいだ。
「――――そっかぁ」
なるほど、そうなんだ。
……ふむふむ。頷きながら、ふと、興味が沸いた。
「あの……どう思う? オレの付き合ってる人」
皆の顔を見ながら、聞いてみたら、皆は顔を見合わせた後、クスクス笑う。
「前聞いた噂通りなら、ちょっとやめといた方がいいと思うけどね」
「確かに。男だからとかじゃなくてな」
――――まあどんな噂かは分かるから、そっか、と思っていると。
「でも食堂で優月と話してるの、オレ見たし」
「ああ、猫のとこ行くっていってたやつ?」
「そうそう。あと、移動ん時も、優月と話しにきてたり」
「クラス会の時迎えに来てたしな」
……なんか、それぞれ色々見られてるなぁ。と、笑ってしまうと。
「優月、すげー楽しそうだしな」
「彼氏も、なんか可愛がってる感じ、丸分かりだし」
「それなー。つか一緒に居るの、恥ずかしい時あったなぁ、オレ」
「なんか照れたよな」
皆、好きに話して笑ってるけど。
「でもそれの時は、付き合ってるって知らなかったでしょ??」
「そう、知らなくてもなんか、空気固まってたけど、覚えてない?」
「――――……」
なんかそういえば、不思議な空気にはなってたような……。
「後で彼氏って聞いて、納得したんだよなーオレ」
「あー、オレもそうかも。そういう奴、結構いる気がする。ああ、だからあの感じか、って」
皆が次々、思い出したことを話していくのを聞いていたら、ちょっと顔が熱くなってきた。
「…………オレ、なんか、恥ずかしくなってきちゃった」
なんか、色々見られて、分かられちゃってるというか。
玲央がきっと、あれだよね、優しすぎるというか。雰囲気ありすぎてカッコよすぎるというか。それでオレがつい嬉しくなっちゃう……という。
あれ、そんなに……そんなだったかな……??
と。バレすぎてるの、ちょっと、恥ずかしい……。
(2025/3/2)
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