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第872話◇
そこから皆の恋愛の話が始まって、盛り上がってたら、教授がやってきた。大分早く教室についた気がしてたけど、楽しく話してると、なんだかあっという間だった。
皆が前を向いて座って、静かになる。
授業を聞きながら、ふと考える。
皆が、オレの相手が男って聞いたり、その後、相手が玲央だって気づいても、あんまり驚かなかったのはやっぱり不思議だったけど……。
玲央、すごく目立つから、学校でいろいろ見られてて。そんな玲央とオレの一緒にいるところが、皆の中で合致した、てことなんだろうな。
目立つってすごい……とか思ってしまって、ちょっとおもしろくなってしまう。
――告白してからちょっと経ってきたけど。
まだ、嫌な思い、したことないなぁ……。
ノートを取りながら、ふ、と息をつく。
びっくりされても嫌がられても。
……玲央のことが好きで玲央と一緒に居て、オレの恋人は「彼女ではない」んだよって伝えておきたくて。
とかって、よく考えたら、それって、オレのエゴだったのかも……。
……聞きたくない人だっているかもしれないのに。
伝えておきたいとか。嘘つきたくないなとか――――。
――――玲央のことが好きだから。
玲央のことが好きなオレのことが無理なら。それもやむを得ない。
って、オレ、覚悟もしていたのかも。
……そう言っちゃうととっても微妙だけれど。
友達が大事じゃない訳では、絶対なかった。
ただ、玲央が、オレの中で、何よりも特別になってしまってて。
玲央と居るオレが、今のオレで……。って伝えたかっただけだけど……。
無理に分かってもらおうっては、思ってなかったよね……。
そういうのって感覚だから、嫌だなと感じるものを変えるのは難しいとは思うし。
――――人を好きな気持ちや大事に想う気持ちは、普通。
多数派じゃなくても、別に特別なことじゃなくて、普通のこと。
なんとなく、オレの周りの人たちは、そんな感じで受け止めてくれたような気がするような。
だんだん噂として広まってるのだと思うけど、嫌悪感とかを表に出す人は居ない。
オレも、今オレの周りに居てくれる皆から、何か告白される時があったら。
普通に普通に、そっかって、受け入れられたらいいなぁ……。
……なんて。
玲央と付き合っていなかったら、敢えて考えもしなかったようなことばかりだけど。
玲央と付き合うようになってから、
あんまり考えたことないようなこと、よく考えてるけど。
オレにとっては、きっと、プラスになってる。
……てことで。
結局は、玲央に出会えて、好きになれて、付き合うことができて、ほんとになんか、いろいろよかった、てことかも。
……玲央との、出会い、か。
◇ ◇ ◇ ◇
――――お昼、クロに会いに来てみた。
玲央との出会いは、クロのおかげーなんて思ったら会いたくなっちゃって。
玲央を誘ったら来てくれそうだけど、急だし、誰かともう約束してるかもなので、やめといた。
クロとゆっくりしようと思って、授業が終わったらそのまま。いつものコンビニに行って、今日は缶詰とおやつも。あと、自分のお昼用にお弁当も買った。
いつものベンチの方に向かう途中、偶然クロに会えて、おいで~と言うと、とことこついてくるの、可愛い。
クロの前に缶詰を置いて、オレもベンチで、いただきまーすと食べ始めた。
クロの可愛い頭を見ながら、ふとさっきの、コンビニのおばちゃんたちとの会話を思い出す。
『今日は玲央くんは居ないの?』
『あ、はい』
頷くと、なんだかとても残念そうに見えて。
『会いたかったですか?』
ついつい聞いてしまったら、おばちゃんたちはふふっと笑い出した。
『会いたかったとかじゃなくてね』
『そうそう、ね』
『優月くんと玲央くん、仲良しで』
『なんか見てるとおばちゃんたち元気になるというか』
なんだかアセアセと一生懸命話してくるので。
『玲央を見ると元気になるのわかります。カッコいいですよね』
ついつい笑顔で言うと。
『優月くんに会うと癒される』
『ほんと。癒し』
あは、と笑ってしまう。地元の商店街の人たちにも言われてた思い出がよみがえって、皆元気かなぁ、と思ってると。
『そんな優月くんと、一見全然タイプが違う玲央くんがね』
『そう。仲良しでクロに会いにとかね』
『そうそう、すごくイイ』
みたいな話をして、また来てね〜と言われてお店を出てきた。
……全然タイプ、違うかぁ。思い出して、ふ、と口元、笑ってしまう。
あ。この唐揚げおいしい。
なんて思いつつ。クロも見つめつつ。
確かに外見からいったら、全然タイプは違うと思うけど。
でも、一緒にずっと居ても、違和感が全然無い。
楽で、穏やかで。でも、すごくドキドキして。
めちゃくちゃ好きだと思う。
……って。
玲央もそう思ってくれてたら、いいなぁ。
「ごちそうさまでした」
小さく言って、お弁当をビニール袋に入れてから、クロを抱っこしてベンチに乗せる。「可愛い」となでなでしてから、小さめのおやつを袋から出して、食べさせてあげる。
「おいし?」
ふふ、と笑って聞いた時、ふと、人の気配。
振り返ると、玲央が居た。あれ、なんで? と思った瞬間。
オレと目があった玲央は、ふ、とやわらかく笑った。
ドキ、として。心臓の音が早くなる。
嬉しくなって。玲央、と名を呼ぶと、ますます優しい顔をした玲央が、「いるかなと思って」と微笑んだ。
(2025/3/4)
◇ ◇ ◇ ◇
◇後書き◇
3/3が優月の誕生日だったので、昨日更新したかったのですが(´∀`*)💦
一日遅れで(*´ω`*)💖
今朝 Xに書いた会話✨のっけとこ。
3月3日 0時0分🩷
この時間を迎えたくて、いちゃつきながら、ちょっと夜更かししてた二人✨
玲央「優月、誕生日🎎おめでと」
優月「ありがと~(´∀`*)ウフフ」
玲央「一番におめでとうって言えるの、いいな」
優月「…🩷」
玲央「ってこんなこと思う日がくると思わなかったけど…(急に照れる)」
優月「……っ🩷🩷」(照れた玲央にときめきすぎて死にそう…)
お遊びです(´∀`*)ウフフ。
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