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第888話◇

「ほんと、優月の髪、柔らかいよな」 「――そ、そう?」 「ん。洗ってても気持ちいい」  泡立てられた指先が、頭皮をマッサージするように優しく動く。  気持ちよさに、うっとり。 「気持ちいい?」 「うん……」 「よかった」  玲央の声があったかい感じで耳に落ちてきて、胸の奥まであったかくなる。  ほんとずるいなぁ、って思う。  こういう何気ない仕草とか……なんならもう、玲央の呼吸が触れるだけで、好きって、思わされちゃうし。 「なあ、さっきのさ。弱気になったとか、優月を信じてないとかじゃなくてさ」 「……ん」 「急がなくていいからって、一回言っておこうと思っただけだからな」 「……うん。分かった」  優しい声に、ふふ、と笑ってしまう。  ……急いでるのかな。  …………まあ確かに。  付き合ってすぐ、家族に会ったりしてて。不思議だけど。  別に無理矢理急いでいるというよりは、そういう縁みたいな感じがあって、そうなってるだけで……。  希生さんなんて、蒼くんのところで偶然会っちゃってるしなあ……。 「……オレ、玲央が居てくれたらなんでもいいよ?」 「ん。分かった。ていうか、それ、オレもだから」  クスクス笑いながら、優しく地肌をマッサージされてると。  なんかくすぐったくて。きもちくて。  シャワーで流し始めてくれたのだけれど。  耳の側、指がくすぐって、びく、と震えてしまった。 「ひゃっ……!」  びくついて、首をすくめちゃうと、玲央が笑った。 「目はつむってて」 「……っひ」  ぞく、としてぎゅうっと目をつむる。 「泡、ついちゃったから」 「……っっん、ン……」  耳の中に手が入って、くるん、と滑らされて、変な声が出た。 「や、くすぐったい……」  顔、めっちゃ熱い。だって、洗ってくれてるだけなのにオレってば変な声だして……っっ。 「あ、悪い」  玲央はそんな風に言うので、わざとじゃない、のかな。  でも、耳って、玲央がキスするときとか、よく触るし、ベッドでも、耳に舌、とか入れるし。  絶対、玲央と付き合ってから、耳がヤバい場所になっちゃった気がしてるんだよ。それまで、耳なんか、普通、触んないし。なんともない場所だったのに。  やばい。なんか。下。反応、しそう。  お風呂の中だから、見えないかな……っっ。  わーん、もう、早く、終わって、早く。  ぎゅうう、と目をつむって耐えていると、玲央が、はい終わり、と言った。  はあ、よかった……。  平気を装って、顔を上げるけど、なんか体の奥の方が、なんだかゾクゾクしてて……。  もうオレのバカ……、と思ってると。  不意に玲央に手首を掴まれて、くるん、と逆向きにさせられてしまった。  その上、お湯の中から、引きだされて、しまい…………。 「なんで、反応してンの?」  クス、と笑う玲央の瞳に。  羞恥に、顔が、真っ赤になった、と思う。 「だって……玲央が、触り方……」 「オレはただ耳洗ってあげてただけだろ」  からかうような言い方。  でも、愛しそうに、オレを見下ろしてくる。恥ずかしすぎて、目に涙が滲むと。  ちょっと目を見開いた玲央が、くす、と笑った。その手が伸びてきて、オレのを、包み込むみたいに触れてきた。一瞬で、心臓が、跳ねる。 「……んん」 「……可愛すぎじゃねえ?」  耳もとにかかる低い声が、体の奥に響いてしまう。 「……っぁ」  急に激しく刺激されて、腰がびくんと揺れた瞬間、強張った体を抱き寄せられる。首筋に舌が這ってきて、その熱さに、ぞわっと背筋が震える。 「……ん、ぅ」  喉の奥から勝手に声がこぼれて、玲央にぎゅ、としがみつく。 「んん、ぁ、……っ」  気持ちいとこ、刺激されてあっという間に、全身熱くなる。 「かわいーな」 「ンッ……んん」  敏感になりまくってる耳に玲央の舌が入ってきて、脳に響く水音に大きく震えた。 「ん、や……っ……ん、っぁ」  あっという間に玲央の思うままで。  うう。くやし……。  と思うのだけれど。  普段は涼しい顔してる玲央の、甘ったるくて熱っぽい顔を見られるこの時が。やっぱり好きすぎて。  ついつい自分から、玲央の唇に、唇を寄せてしまった。    (2025/9/14) フジョさんでは、888ページ🩷 いつもありがとうございます✨

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