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第890話◇
湯気の残るバスルームから、玲央と一緒に、リビングへと戻ってきた。
体の中がまだ、じんじんしてるみたいで、敏感になってる。
髪の毛を乾かしてくれた時も、なんかちょっと変に触られると、ぞくぞくしてしまって、やばい感じ。
なんかオレの体、どんどんやばい感じになっている気がする。
「あ、そういえば」
「え……?」
リビングの電気をつけたところで、不意に玲央が止まって、顔を見て呆けてるオレに、くすっと笑った。
「さっきオレを待ってる時、何見てたの?」
「……??」
「オレが話しかけた時、すげー驚いてただろ? スマホで何見てた?」
「スマホで? ……あ」
あれか……! ずっとらぶらぶでいるにはって検索してたやつ……!
玲央ってば、覚えてたのか……。
そういえばあとで聞くって言ってたっけ。
忘れてくれてよかったのに……。
咄嗟に口を押えたまま、固まってると、玲央がくすっと笑う。
「そんな顔されるとほんとにやばいの見てたのかなって……すげーおもしろいけど」
「や、ばくはない……けど、恥ずかしい、かも」
顔がめちゃくちゃ熱くなってくる。
恥ずかしいよね、だって。それ、玲央とのことだし。
そんなの調べてるのって、いつも変なの検索してるみたいに思われたらいやだしー! うう、いつもは見てないよー!
何て言ったら良いのだろう。なんか……適当になんか……。
「なんだよ? 言ってみな?」
くすくす笑って、玲央がオレの頬に触れてくる。
「なんか赤いんだけど――可愛いな」
ちゅ、と頬にキスされて、そのまま間近でオレを覗き込んでくる。
なんか適当に……とかよぎっても、一瞬でそんな考えは消え去る。
だって、オレが玲央に嘘なんてつけるはずもないのだ。
「あの……友達にね?」
「うん」
「ラブラブでいろよな、みたいなこと言われたのね、オレ」
「……オレと?」
「そう。それで、オレ、ラブラブって何だろうって思って、調べたの」
「――ふうん」
玲央がなんだかニヤニヤしている。
「そしたら、カップルが仲が良いことって書いてあったから、仲はいいかなぁ、って思ってたら、その下に、勝手に追加で、ずっとラブラブで居るにはっていうリンクがあって……」
「うん」
「だからね、それを、どれどれって思って押そうとしてたら、玲央が来ちゃって」
玲央があんまりに楽しそうな顔をしてるので、なんだかものすごく恥ずかしい。
「ふーんそんなことか……エロいのじゃなかった」
「あんなとこでそんなの見ないし!」
「あんなとこじゃなければ見るの?」
お? と玲央が興味津々な顔をして、オレを見つめる。
「い、いや……見ない……」
「そういえば、興味あるな。優月って、そういう時、どんなの見て……」
「……っっっ」
ぼん、と火が付いたみたいに真っ赤になったオレに、玲央は、お、と驚いた顔を見せた。
「なに、そんなヤバいの見るのか?」
くすくす笑う玲央。
……もー絶対遊んでるし……!
「見てないよ、ほんとに……だからほんとに、オレ、そういうの、あんまり……」
「でも、生理的にはあるだろ、そういう時――」
「…………っっじゃあ玲央は?」
「ん、オレ?」
「……玲央はどんなの、見て……」
そう聞いたら、玲央は「見てない」と即答。
あ、見てないんだ、と思った瞬間。その理由が思い浮かんでしまった。
「あ、そっか。相手が居るもんね……」
突然現実に戻って、なるほど、と頷いていると。
玲央は、ぷは、と笑い出した。
「あーもーおもしろ。お前」
くしゃくしゃと撫でられて、至近距離で瞳を覗き込まれる。
「納得すんなよ、そんなの。ていうか、むしろ、少しくらいムッとしてくれていいのに」
「――」
「ソファ座ってな。とりあえず水もってく。風呂上がりでほっぺ、めちゃ熱そうだし」
「……これはお風呂より玲央のせいだし……」
ぶつぶつ言ってると、玲央は「座ってな」と言って、オレの頭をまたよしよししながら、冷蔵庫の方へ。
「あとで、ラブラブでいるにはって確認しような~」
とか、楽しそうに言っている。
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