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第894話◇

 今考えてるいろんなことって。  一緒に暮らす、とかもあるから、余計に考えなきゃいけなくなっちゃってるのだけど……。普通は付き合っても、きっとそんなにすぐに一緒に暮らしたりしないもんね。男女とか関係なく、きっとその話になったら、やっぱり親にも話すことになるのだろうから、やっぱりちょっと大変そう。でも、玲央が一緒に暮らしたいって言ってくれてるのは、すごく嬉しいし。オレも、一緒に過ごせるの幸せだし。  ……ていうか。何がこの先あったとしても。  今の、オレの、玲央のことが好きって気持ちは変わる気がしないけど。  初めてこんなに好きになって――初めて、キスしたり抱き合ったりした人だし。今のオレの心の中なんて、玲央への大好きでたくさん埋まってるもんね。  ――だから、とりあえずは、玲央のこと、好きで、大事ってことは大切にして、あとは、もう少しずつでも前に進んでいけたらいいのだけど。  授業を聞いてノートを取りながら、頭の遠い方でいろいろ考える。  今のところ、オレ達のことを知った皆が、予想以上に好意的に受け止めてくれちゃうものだから、ぜんぶうまくいきそうな錯覚もあるけど。  そうとは限らないのも、どこかでちゃんと、分かってはいる。  ――ふむ。  まあ。いろいろ、頑張ってくしかないよね。  授業が終わって、皆と歩きだした時、玲央からメッセージが届いた。 『練習のあと、事務所に行くことになった。社長と打ち合わせだって』  お。そう、なんだ。授業が終わったら、あとから練習場所に行くことになっていたのだけれど……今日はやめとこ、と返事を打とうと思った時。 『ごめんな、先にマンションに帰ってて?』  そんな言葉を読んで、「分かった」と入れてから、ふと気付く。  玲央が居なくても、オレは玲央のマンションに帰るんだな。  別にオレ、自分のマンションに帰ってもいいのにね。  玲央の家で玲央を待ってるのが当たり前、みたいに玲央が言ってるのが、気付いてみたら――とっても嬉しい。 「先帰って、待ってるね」  追加でそう返事をすると、玲央から「ん、ごめんな。夕飯は食べて帰るから」と入ってくる。 「分かった(^^) オレはレポートの本、読んでる。頑張ってね」  やりとりを終えて、スマホをしまうと、「彼氏?」と聞かれる。 「うん、そう」  頷くと、「仲良しだな~」と言われる。 「そだね。仲はいいかな」 「連絡とるだけで、そんなニコニコしてるんだもんな」 「オレ、ニコニコしてた?」 「してた」 「なんかそれ最近よく言われるなー」 「いんじゃね、幸せそうって話だから」 「まあ……そうだね」  ふふ、と笑って頷いた。 ◆◇◆  授業が終わって、友達と別れて帰途につく。何かお弁当でも買って帰ろうかと思ったけど、カレーを食べたくなって、結局スーパーで材料を買って帰ってきた。  煮込んでる間に本も読めるし。明日も食べれるし。  玲央が夕飯に何を食べるか分かんないけど、お腹空いて帰ってきたらちょっと食べさせてもあげられるし。  腕まくりをして、キッチンに立つ。  いつもは玲央と一緒だから、一人はちょっと新鮮だ。  鶏肉、玉ねぎ、ジャガイモ、ニンジンを炒めて煮込んで、カレーは出来上がり。ご飯もスイッチ入れたし、サラダも作ったし、完璧になったところで、先にお風呂に入ることにした。  まだあと三十分、ご飯が炊けるまでに時間がかかるから、湯船にお湯をためて、お湯に浸かることにした。 「きもちー……」  浴槽に寄りかかって、思わず声が漏れた。  改めて一人で入ると、めちゃくちゃ広いお風呂だなあと実感する。  いつもは玲央と入ってるから……。  ふ、と、玲央を思い出してしまう。  濡れてる玲央。  めちゃめちゃカッコいいんだよなぁ……。  髪の毛から伝う雫までが、なんだか、キラキラに見える。  肌も綺麗だし。筋肉が、綺麗だし。 「……ふ」  なんか、顔熱くなってきちゃった。  ちょっとお湯に沈んで、ぶくぶくしてみる。  ……大好き、玲央。  早く、帰ってこないかなぁ。  いつも一緒の、この大きなお風呂に一人は、ちょっと寂しい気もする。  ほっこほこにあったまってからバスルームを出て、今日はポメのTシャツを着た。お気に入りの可愛いシャツ。玲央の着てるものとはだいぶ違うのだけど。こないだ着てたら、似合う、可愛いって笑ってくれてたし。  ドライヤーをしながらも、そこでもまた、いつもは玲央が、優しく触ってくれるなぁ……なんて思って、また、思い出してる自分に苦笑してしまう。    ダメだ、オレ、玲央の側にいても、いなくても。  というか、むしろ、いない時の方が、玲央のことを思い出しているかもしれない。  そんな風に思いながら、バスルームのドアを開けると、消していたはずのリビングの電気がついていた。途端に嬉しくなって、早足でリビングへ。 「おかえり、玲央、早かった――ね……?」  めちゃくちゃ笑顔で言った言葉は、最後の方は小さくなっていった。  オレを振り返ったのは、玲央じゃなかった。  めちゃくちゃ、美人な、女の人。  水色のブラウスに細身のパンツ。長い髪を緩くまとめてる。  可愛いパールの金のネックレスとピアス。    若く見えるけど、彼女とかの年ではない。  思い当たるのは。  もしかして。……玲央の。お母さん、かな。  咄嗟に、声が出せないまま。  可愛いポメのTシャツとか、着なきゃよかったかも……と。  思った。 (2026/2/7) ◆◇◆ 少しだけ失礼します。 投票や社会のことと、創作について思うことを少し書きます。 作品の余韻を大事にしたい方は、ここで閉じていただいて大丈夫です。 ◆◇◆ 皆さん、投票は行かれましたか。 もし迷っている方や、今回は見送ろうかなと思っている方がいたらと思い、 選挙について考えるヒントのような文章をxとnoteにまとめました。 創作のあとがきでこういう話をするのは少し迷いました。 でも、好きな作品を書いたり読んだりできる環境って、世界では当たり前のことではなくて、 実は日本の社会の仕組みや、表現の自由といった権利に支えられているんだなと、最近あらためて感じています。 特にBLのようなジャンルだと、なおさらそう感じます。 特定の政党をすすめる内容ではなく、 こういう視点で考えてみるのもありかも、という形で書いています。 自分で調べて考えて、 まだの方はぜひ、投票に行きましょう……というような内容です。 投票を終えている方も、 もし興味があれば、読んでいただけたら嬉しいです。 私は、これからの子どもたちに笑顔でいてほしい。 多分、この作品を読んでくださっている皆さんも同じ気持ちではないかな、と思っています。 瑛士さんと凛太が、玲央と優月が、大翔と奏斗が、颯と慧たち皆。(私の作品のキャラたち) あの子たちが笑っていられる世界で、ずっとハピエン小説を書いていたい。 そして、これからも安心してBLを楽しめる世界であってほしい。 その気持ちも含めて、書きました。 朝5時にxを投稿したのですが、xでは長文がなかなか届きにくいのと、 xとnote、最近ほとんど発信できていなかったせいか、思った以上に届いていない感じなので、 今日中に一人でも多くの方に届いてほしくて、 一番見てもらえるこの場所でもご紹介させていただきました。 今日更新分の後書きには、これをつけさせていただきます。 期間限定で置いていますので、 もしよければのぞいてみてください。 「星井悠里 x」 とか「星井悠里 note」と検索して頂けたら、 いちばん上に出てくると思います。 これからも、楽しい作品を書き続けられる環境が続いたらいいなと、 そんな気持ちでいます。

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