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第900話◇

 会ったときも、絵を描きたいって思ったけど、今の可愛い感じ、もっと書きたいかもしれない。  玲央のお母さん。玲央と、似てる。  希生さんに似てるって思ったけど、多分目元とか、黙ってる時の雰囲気が、すごく似てるんだと思う。  希生さんと香澄さんが混ざって、かっこよくなったのが玲央かな。ふふ。  玲央のお父さんは、どこが似てるんだろう。  楽しみになっちゃうなぁ。 「ねえ優月くんは、玲央のどこが好きなのか聞いてもいい?」 「えっ。好きなところですか。えっと……」  えっと。全部って言ってしまいたいけど、きっと、それじゃなくて……。  香澄さんは、玲央のこと褒められるのがすごく嬉しそうだからきっと、細かいところ、聞きたいんだろうな。 「なんでもできます、玲央」  なんでも? と聞き返されて、はい、と頷く。 「ピアノとか歌とか音楽関係は全部すごくて、料理もプロみたいだし。立ってるだけでももうカッコイイし。いろんなこと知ってるし。運転も上手だし。そういうの全部、頑張ってきたから出来てると思うんですけど、でもなんか頑張ってない風な感じでやれちゃうとことか、もう全部カッコよくて尊敬してます」 「うんうん。あとは?」  楽しそうに聞かれる。 「えと。あとは……めちゃくちゃ、優しいです。いっつも」 「うんうん。あとは?」  え、あとは。えーとえーと。  ……なんか、延々とギャグを求められる芸人さんの気分が分かってきたような。 「えっと、あとは、話してて楽しいし、玲央が笑ってるだけで嬉しいし。でも、たまにちょっと、可愛いなってとこもあって……やっぱり、全部かも」  あ。結局、全部って言ってしまった。  なんか香澄さんがにこにこしながら頷いてるから、ついつい。  お母さんに向かって、好きなとこ、言い過ぎたかも?  んん、と口元を押さえたオレを見て、香澄さんはくすくす笑った。 「あの子、可愛い? ふふ。――すごく嬉しい、かも」 「……嬉しい、ですか?」 「玲央って、なんていうか……人の中心にはいるんだけど、クールというか熱っぽくないっていうか……友達はいるけど一歩引いてるというか……? 大学に入ってからは見れてないから、高校までの玲央なんだけどね」  なんとなく、頷いてしまう。というのも、ちょっと想像できるから。  皆の話からも、玲央の話からも、なんとなく、香澄さんの言ってることと繋がるもんね。 「うちの子、だるそうだなーって思ってたから」 「え。だるそう、ですか?」 「そう。だるそう。もうなんかカッコつけて、この子は……! って思ってたんだけど……」 「でも、バンドしてる玲央は、めちゃくちゃ熱くて、カッコいいですよ」 「あ、もしかして、この間のライブ、行った?」 「はい」  頷くと、香澄さんは、むむ、とちょっと眉を寄せた。 「行きたいって言ったのに断られたのよね」 「あ……」  知り合い皆に挨拶して回るって。玲央が言ってたやつ……。 「もしかして、知ってる?」 「あ、はい、行きたいってお母さんが言ってたって」 「だって、あの子が唯一、自分から一生懸命やったことだから。もう、今度は絶対行こうっと。勝手にチケット、買っちゃうし」  楽しそうに言ってる香澄さんに、ふふ、と笑ってしまう。 「あ、夏休みに、ライブでツアーみたいなことするって言ってましたよ。あ、その前に、大学でもコンテストみたいなのがあるみたいで」 「えーほんとー? やだ、優月くん、ありがとう。ね、連絡先、教えてくれる? 情報回してくれると嬉しい。あの子、私たちには隠すから」 「あ、もちろん」  オレは立ち上がって、充電していたところから、スマホを手に取った。  連絡先を登録すると、香澄さんから「よろしくね」とスタンプが入ってきた。  オレも、よろしくお願いします、と送って、顔を見合わせてにっこり。  そこで、玲央から連絡が来ていたことに気づいた。   「あ、玲央から連絡来てました」 「帰ってくる?」 「あ、はい。そうみたいですね。あれ、もう近くにいるみた――」  その時、ピンポンとチャイムの音が響いて、ドキッ。 「あ」  一瞬、空気が止まって、オレと香澄さんは、顔を見合わせた。

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