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第919話◇

 とりあえず勇紀は黙らせ、優月はオレの隣に座った。  優月は面白そうに笑いながら、「いただきまーす」と食事を始めた。  向かい側に座った颯也と甲斐も、「勇紀、うるさ」と言いながら食事を始めた。 「だって、玲央がさぁ……」  はー、とため息をつきながら、でももう説明するのも嫌になったみたいで、すぐに切り替えて、優月を見た。 「北海道と京都の話は聞いた?」 「うんうん。聞いた! どっちもいいね」 「北海道なら、どこ行きたい?」 「小樽とか札幌とか……?」 「ラーメンとかジンギスカンとか」  勇紀が楽しそうに言うと、優月が瞳をキラキラさせてる。 「北海道って食べ物おいしそうだよね……ってライブに行くんだよね」  えへへ、と笑った優月に、勇紀は楽しそうに笑い返す。 「ライブ以外は観光でしょ! 行くとこ決めようね~」 「うんうん!」 「あと静岡とか大阪とか、いろいろ候補あがってたけど――オレは、沖縄に行きたいなぁ、夏だし」 「わー、どこも、いいねえ、沖縄もいいなあ」 「行ったことある?」 「ううん、ない! 海が綺麗でしょ~いいなー」 「なー!」  いつもだけど――勇紀と優月が喋ってると、延々とのどかな感じだな。  この二人が仲良かったのは、まあ、分かる。 「て言ってもまあ、現実的に考えて、同じとこでいくつかライブハウス回ったほうがよさそうってなると、絞らないとって感じだったけど」  そんな風に言いながら、勇紀はふとオレに目を向ける。 「優月の独り占めは、旅行中はだめだかんね」 「――夜は?」  そう言った瞬間、優月が、んっ? という顔でオレを見た。  ぱちくりしているので、なんだかそれが可愛くて、ふ、と笑いが零れたところで、勇紀が呆れたように眉を寄せた。 「夜も! ていうか、夜が一番、皆で楽しいんじゃん」  そう言った瞬間、颯也が苦笑した。 「毎晩一緒でなくてもよくないか? オレ、一人がいいな」 「オレもー、毎晩雑魚寝とか無理」  颯也に続いて甲斐もそんな風に言って肩を竦めている。 「はー? なんだと思ってるの、皆! 交流を深めるところだよね?」  一生懸命な勇紀に、「分かる~」と呑気な優月の返事。 「だよね、優月~!」  テーブルを乗り越えてきそうな勢いの勇紀にもひるまず、うんうんとニコニコしている優月。 「じゃあ、各地、雑魚寝一泊、残りは個室。優月とオレは一緒、でいいんじゃねえの?」  そう言ったオレを、優月はまたぱっと見つめてくる。  な? と首を傾げると、優月はちょっと微笑んで、小さくこくこく頷いていて、可愛い。 「それなら交流も深められるし、玲央の我儘もきけるから、玲央の機嫌もいいだろうし、名案かも」 「オレもそれに賛成」  甲斐と颯也の追い風と。  おそらく、優月がこくこく頷いてるのが一番大きそうだが。  勇紀は降参したように頬を膨らませて、「もーそれでいいや」と頷いた。 「ていうか、今さら交流深めなくても、よくね?」  甲斐が苦笑しながら言うと、「ほんとそれ」と颯也も笑う。 「んなこと言わないでさぁ。交流って大事だよ」  とか勇紀が騒いでいると。  優月がふふ、と笑いながら言った。 「でも、オレは、皆ともっと仲良くなりたいなぁ。知り合って、ちょっとしか経ってないし」  その言葉を聞いて、皆。オレも含めて全員が、優月を見つめた。  一斉に視線を浴びた優月は、え。と強張っている。 「変なこと、言った……?」  そんな風に言う優月に、甲斐が笑い出した。 「なんか優月って、ずっとここに居た気がしてた」 「オレも、そう思ってた」  甲斐と颯也が苦笑してる。 「まあオレは、去年から友達だけどね」  ふふふん、とよく分からない自慢をしてる勇紀を横目に。 「――なんか優月って、ずっと一緒にいた感、あるよな」  オレがそう言うと、皆、くすくす笑って頷いた。  優月だけ、ちょっと不思議そう。  でもすぐに、ふ、と嬉しそうに笑って。 「楽しみだね、夏休み」  たぶん皆、その言葉で、夏休みが楽しみになったんだろうなぁ、と思う。そんな顔で、皆、笑ってた。

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