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幕・136 ペナルティ

「―――――まずは、リヒト」 腕の中の身体を抱きしめ、なだめるように背を撫でる。 その動きだけで、リヒトは身を震わせた。 「イってないって、証明しな」 リヒトが、悔し気に奥歯を食いしばったのが分かる。 こういうところが、ヒューゴは好きだ。 男に抱かれながらも、男であり続けるところ。 もちろん、ヒューゴはリヒトの、雄としての機能をダメにしたいわけではない。 やり過ぎれば、雄ではなくなる。それはいけない。 健全な雄であると同時に、雄を求めずにいられない雌を抱きたい。 どちらか片方だけでは物足りない。 肩で息を吐きながら、リヒトはよろり、とヒューゴから離れた。 柔らかな明かりの中、上気した頬が艶やかに映える。 黄金の目が、ヒューゴをえぐるように睨みつけた。 同時に、焦ったような指先が、ぎこちなく腰の前を緩める。服を寛げた。 は、は、と短く息を刻みながら、リヒトはいっきに下着まで下ろして見せた。 ぶるん、と勃起した陰茎が露になる。 リヒトは、見世物になる屈辱を堪えるように顔を背けた。 恥ずかしいのか、頬が先ほどよりもっと濃く色づいている。 「はは」 そこがすっかり濡れそぼっているのを余裕なく見下ろし、ヒューゴは口調だけ軽く言い放った。 「びしょびしょだな」 剃毛された性器が濃い桃色に染まり、漏らしたかのように薄い明りの中で濡れ光っていた。 じっと見つめれば、視線にも感じたかのように、先走りが先端からまた溢れる。 ねちりとした体液が、つぅ、と輝く雫となって、幹を伝い落ちていく。 下着を覗き込めば、そちらもぐっしょりと湿っていた。 「ああ」 興奮した雄のにおいが立ち込めている。同時に、どうしようもなく―――――雌のにおい。 「イイ子だ」 ヒューゴは目を上げた。 濃紺の瞳で、真っ直ぐ、黄金の瞳を見つめる。 それだけで。 …は、とリヒトが吐きだす息に、また、興奮が増した。 無抵抗な身体の向きを変えさせ、ヒューゴはリヒトを背中から抱きしめる。 そうして、耳元で囁いた。 「ほら」 リヒトの服の下へ手を潜らせ、胸元に手を伸ばす。直に乳首を抓るように摘まむと同時に、囁いた。 「イって、いいぞ」 ―――――もう、限界だったのだろう。 リヒトは操られるように、前へ腰を突き出した。全身が弓なりに仰け反る。 「…ああ…っ!」 あえかな声がこぼれるなり。 リヒトの先端から、ソレは放たれた。触れてもいないのに。命じられるだけで。いや、それほど。 耐えに耐えていた。 リヒトをそんな風にしたのは、ヒューゴだ。育てたのは、ヒューゴだ。ヒューゴのものだ。だから。 …腹が立つのも、仕方がない。 こんな状態のリヒトを、わずかでも他人に見られたことが。リヒトが、他人に見せたことが。 不可抗力だと分かっていても。 「あっ、あ…!」 どこまで耐えていたのか、また、リヒトが放った。 ヒューゴは、特等席で、リヒトが熱を放出する光景を見守る。 一番色の濃い性器の先端から、びゅぅっと白い体液が跳び、放物線を描きながら、床の上に飛び散った。 同時に、甘い精気がリヒトの全身から噴き出す。神聖力に満ちた精気だ。 一番油断するだろう、射精の瞬間。 リヒトのその様は、みっともないというより、ひどく美しい。 二度、三度、射精は続き、ばたばたと床に体液が落ちる音が静かな室内に響く。 何度かの放出の後、リヒトの身体が弛緩した。がくがくと全身を震わせるリヒトが座り込もうとするのを、後ろからヒューゴは抱きとめる。 「よくできました」 言いながら、ヒューゴはリヒトをエスコートするように、わずかに移動。 机の上にリヒトの両手をつかせる。その上半身を屈ませ、腰だけ後ろへ引き寄せた。 中途半端に太腿で蟠っていた服を床へ引きずり落とす。 そのうえで、差し出すようにされた尻を両手で割り開いた。拍子に、 「ぅ、く」 リヒトが息を呑んだ。 吞み込んでいた球体を取り落とさないようにと、女のようになった穴に力を込めてしまったのだろう。 だが力を籠めすぎては、押し出してしまう。 リヒトの入り口が、ひくひくっと痙攣するのが、ヒューゴの目に映った。 もちろん、その球体は物質とは言い難い。 それこそ、リヒトの神聖力によって、ぎりぎり消されない程度の魔力で構成した―――――大いなる魔力の無駄遣いだ。 しっかりと中にそんなものを複数個飲み込んでいるとはとても思えないほど、可憐に窄まった入り口を、ヒューゴが悪戯にこすれば、 「や、ぁ!」 悲鳴に似た声がリヒトの喉から駆けあがった。その身が丘に上げられた魚のように痙攣する。 「さあ、俺の可愛いリヒト」 『俺の』。 無意識な、所有意識。 その言葉に一番感じたように、抱きとめたリヒトの身体が震えた。 「ご褒美だ」 言うと同時に、リヒトの内部、その粘膜を押し広げている魔力の球体を、 「あ、あ…っ、揺らす、な…!」 ヒューゴは悪戯に振動させる。 リヒトが目を瞠って、下腹あたりを押さえた。とたん、 「止め…、ひ、あぁ―――――…っ」 リヒトは中を強く締め上げてしまったのだろう。 五つ飲み込んでいたソレが、リヒトの入り口から、立て続けに外へ飛び出した。 入り口をそれがこすれる感触に、びくん、とリヒトの身体が跳ねる。それが、五回。 「ふ…ぅっ」 がくがく震えるリヒトの身体を引き寄せ、ヒューゴは耳元で囁いた。 「まだまだ。ちゃんと頬張って、上手にしゃぶれよ。教えた通りにな。―――――…そぉら」 「―――――ぁ、は…っ」 わざと形を教え込むように、ゆっくりと挿入していけば、入り口にカリまで入り込んだ、 まだ先端だけというのに、それだけで、リヒトはヒューゴのモノを強く食い締めてしまう。 「はは」 ぎこちなく、余裕ない声で薄く笑って、ヒューゴ。 「俺だけじゃ不公平だな、リヒトも命令するか?」 「な、にを」 「許すまでイっちゃだめって」 甘えかかるように、耳元で告げれば、ふ、とリヒトが息を詰めた。 「なあ、言ってみろよ。聞いてやる。我慢しよう。さて、ペナルティは何にする?」

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