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第9話

#シロ お通夜に出席する為、智の実家のある福島まで来た。 新幹線なんて、久しぶりに乗ったから到着するまで緊張してしまった… 智のお父さんと電話で話したら、駅まで来てくれるって言っていた。 優しいね…オレはお言葉に甘えさせてもらった。 事前に言われていた降り口から改札を出て、待ち合わせの場所へと向かう。 福島なんて…東北って言うけど、体感気温は東京と変わらない… 日の光にあたると暑いくらい、今日はいい天気だ。 ビルに邪魔されない空が大きく広がって、開放感が半端ない! 「気持ちい~!」 「シロさん、はるばるありがとう。疲れたでしょ?」 智のお母さんだ。朗らかな笑顔で笑いかけてくれた。 あったかい…お母さんって感じの人。…目元が智によく似てる。 「お父さんは車で待ってるよ?」 お母さんがそう言って、手を差し出すので、オレはその手を握った。 可愛いお母さんだ… 「早めに仏滅があって良かったんだ。タイミングが悪いと、ドライアイスを交換しなきゃいけないくらい火葬まで時間がかかるんだよ~?」 お母さんはそう言うとケラケラと笑った。気丈なんだ。 よく言うだろ…葬式はあえて親族を忙しくさせるものだって…激しい悲しみに飲み込まれてしまわない様に、そうするんだ。はたと、落ち着いた頃にゆっくり偲ぶことが出来るんだって…まぁ、詭弁だよ。 「シロくん、こっちだよ~!」 智のお父さんが車の窓を開けて手を振ってる。 その様子が可愛らしくて、つい口元が緩む。 こんな素晴らしい家族が居るってどんな気持ちだろう。 …ねぇ、智の家族、素敵だね? 車が動き出して、慣れた様子で智のお父さんがグングン進んで行く。 「うちは本家だから親戚がいっぱい来るけど、まぁ気にしないで。ほら、シロくん背がすらっとしてて目立つから…なんやかんや言う人も居るんだ…。智も、そう言うのが嫌だったんだろうな…」 オレの事を心配して、お父さんが言った。 髪は銀髪…肌の白い、目立つ背の高さの、体の柔らかい男。 それがオレがストリッパーだって知らない人が受ける、オレの印象だろうな… 「まぁ、珍しいでしょうね…僕は慣れているので平気です。」 「こんなイケメン、田舎にいないから、おばちゃんたちの取り合いになるよ~?」 笑いながらお母さんがそう言って、オレの肩をバンバン叩いた。 しばらく田園風景が続いて、垣根の立派な家に着いた。 智…お前ん家、凄い立派だな… テレビで見た事あるような…立派なお宅に驚愕する。 車を降りると、お母さんが手を引いて案内してくれる。 立派な玄関…向こうには長い縁側が見えて、柿みたいなものがいくつも連なって干してある。 「凄い…立派なお家ですね…」 オレがそう言うと、お父さんはへへっ…と笑いながら言った。 「土地ばかり広い田舎の農家だよ…あいつの事も理解せず、農家を継ぐことを強要して追い詰めちまう…どうしようもねえ農家だ…」 お父さんのせいじゃないんだよ… 何も言えなくなって、俯いてお父さんの後ろを付いていく。 古いのに艶がある床を通って、智の眠る部屋に案内された。 「え、カッコいい…」 智の横に座る女性に会釈して挨拶する。 「どうも、智の友達のシロです。」 そして智の頭を触って顔を覗く。 「智、お父さんとお母さん、めちゃ優しいよ?お前の家族、素敵だな。」 そう言ってポンポン頭を撫でた。 冷たいよ…智。 「ホストですか?」 「僕ですか?違いますよ。」 お父さんの忠告に従ってオレはこう言った。 「智の友達です。」 あぁ…智、明日焼かれちゃうんだ… まだ、信じられないよ。 こんな事…嘘みたいだ。 縁側に座って穏やかなお日様に照らされる池を眺める。 「おめ、目立つな~?」 縁側を歩く親戚のおばちゃんが、オレに声をかける。 オレはにっこり笑って、そう?と答える。 「ここは、雪降るの?」 オレがそう聞くと、ニカッ!と笑いながら答えた。 「盆地だから、降る時はドカッと降って、なかなか解けねぇ、カチカチのアイスバーンになるから、冬はチェーンの音があちこちでするよ?」 「へぇ~…それは凄いね…」 オレはそう言って、空を見上げる。 「おめ、少し手伝え。」 おばちゃんはそう言うと、オレの手を引っ張って奥の座敷へ連れて行く。 目の前を歩くおばちゃんを見下ろして、思った。 でら、ちっせえ… そうして連れて来られたのは、熟女が集まる大奥の様な部屋… 集まる視線に自然と背筋が伸びてしまう… 「あら、イケメン!」 「智ちゃんのお友達、イケメンね!」 「かわいい…何歳?」 矢継ぎ早に質問攻めに合って、体が固まる。 「なんだ、ガリガリかと思ったら、意外とついてんだね?ナイスバディだよ?」 「あら、ホントだ…悪くないね?」 「んだんだ、しかも、ほっぺはプニプニしてるね~?」 こんな調子で、ボディタッチが激しくて…身の危険を感じるんだ。 お店に来るイケイケどんどんのお姉さんたちよりも…強い。 でも、こんなに親戚が沢山いるのって、楽しいんだろうな… 「あんたんとこの長女も、そろそろ良い年なんだから~この子と結婚しちまいな~?」 「んだんだ、さすけねよ?しちまいな~?トラクター2台あるからよかんべよ。」 そんな暴言をうまく交わしながら、おばちゃん達と一緒に葬式の支度を手伝った。 しばらくすると原付バイクに乗ったお坊さんが来た。 凄いな…坊さんが原付とか…マジかよ。 智の遺体の前でお経をあげてもらう。 今晩はろうそくの火を絶やさないで、交代で智の傍にいる事になった。 夜ご飯をご馳走になってお風呂に入る。 おふくろの味って、あんな感じなんだな…。 ワイワイみんなでテーブルを囲んで、大皿の料理を食べる。 笑い声がどこかしらから聞こえて、にぎやかな食卓に、自然と笑顔になった。 オレの育った環境とは雲泥の差だよ…智… こんなに楽しい家だったら、俺は死ぬまで家族と一緒に居たいよ。 今では珍しくなった土間に降りて、上を見上げる。 梁だ…初めて見た… 茶色く色を付けた梁が渡る様子をまじまじと見つめる。 立派な造りの家だ… ぼんやりと、上を見上げていると、智のお父さんに声をかけられた。 「シロくん…智は、向こうで楽しくやっていたかい?」 オレは智のお父さんに教えてあげる。 「ストリップなんて褒められる仕事じゃないですけど、いやらしい物だけじゃ無いんです。危ない技もあるし、熟練度が必要な技もある。智は真面目に練習もして、どんどん上達して、オレと一緒にステージを回していました。頼れる仲間でした…。お休みの日も一緒にご飯を食べたり、お買い物に行ったり…とにかくよく動く子でした。」 「ふふ…昔から、どっか出かけんのが好きだったんだ…じっとしてらんないんだろうな…」 お父さんはそう言って小さく笑う。 「弟の様に思ってたんです。だから…本当に残念です。」 オレはそう言って土間の梁を見上げる。 「うん…霊安室で、シロ君が号泣するの見たら、かっこつけてた自分が馬鹿らしくなったんだ…あと、こんな人が傍に居てくれて…良かったなって思ったんだよ…」 お父さんの言葉が胸に突き刺さる。 「僕じゃ…力不足でした…」 そう言って項垂れる。 力不足どころか…オレがとどめを刺したんじゃないか… 智の制止も聞かないで向井さんをぶん殴って…悲しい思いをさせたんじゃないのか。 今更答えなんて分からない…だって、智はもう答えられないんだから… 「店長さんから聞いたよ?あの日、智の部屋に寄ってくれたんだって?嬉しかった…あの子を心配して…気遣ってくれる誰かが傍に居たんだって…分かっただけで、救われた…ありがとう!!」 ありがとう…の言葉が、胸に突き刺さって抉る。 「シロ君は明け方…お線香お願いするよ。呼びに行くからそれまで寝てて?疲れたでしょ?」 智のお父さんはそう言うと部屋へ入って行った。 オレは用意してもらった部屋に行って、布団に寝転がって目を瞑った。 畳の匂い… 智の家族は智に似ていた…見た目も、朗らかさも、優しい所も…彼によく似ていた。 オレも…弟と似ているのかな… もう何年も会っていない、一つ下の弟。今頃どうしているのかな… 兄ちゃんの葬儀の時、一番取り乱していた… 不思議だった…だってオレの記憶だと、兄ちゃんと弟の繋がりってそんなになかった気がするんだよ。 だけど、弟はとても泣いていた… 兄ちゃんが亡くなった日、オレはいつもの様に喫茶店でバイトをしていた。 電話が鳴って、受け取ったんだ。 内容はお店じゃなくて、オレ宛の電話だった… その時、兄ちゃんが亡くなったことを知った。 病院に駆けつけて霊安室に入ると、丁度智と同じような感じに寝ていたんだ。 顔に掛けられた白い布を取ると、寝ているような顔なのに、紫に変色した首が…酷くグロテスクだった… 母親と弟が泣き崩れていて…オレは…オレはどうしたっけ…? 「シロ君?」 目を開くと目の前に女の人の顔があった。 「あっ!!」 驚いて起き上がる。 「もう…そんなにビックリしなくても…はぁ、かわい。次、智のお線香お願いしても良い?」 うっとりした顔でお姉さんがそう言って、オレに太ももを見せつけて来る。 何てことだ… 「はい…」 オレはそう言って、そそくさ逃げる様に部屋を後にする。 危険だ…危険だ…!! 物珍しいんだろうな、銀髪が珍しいんだ…だからあんなに積極的に来るんだ… 動揺しながら智の眠る部屋にやって来る。 少しの間、2人っきりだな… 智の隣に座って、お線香を新しくつける。 綺麗な顔で、眠ったように見えて、そっと頬を撫でる。 冷たい… 肉の塊のように感じて、手を引っ込める。 この前…ステージでチップを渡すときに触れた唇を指でなぞる。 そっと自分の唇に指を当てて同じようになぞる。 智…オレの事怒ってるの…? オレが向井さんを取ったって…思ってるの? レイプされるように抱かれたことが悲しかったの? それとも、愛した人が冷たくなって…悲しかったの? あの人はダメだよ…そういう人なんだ… きっとオレが死んでも、何も感じない…そういう人なんだよ… 可哀想に… 「オレが守ってあげればよかった…あの人から、お前を守ってあげればよかった…」 目から涙を落として、智の胸に手を置く。 ごめんね…智…ごめんね…クソったれなオレしか近くに居なくて…ごめん。 もっと良い人がいてくれたら、お前はこんな姿にならなかったのに… 今更こんな事を言っても仕方が無いって分かってる…でも、謝らせてくれよ… 「智…ごめんなさい…!!オレを…許して…!ごめんね…ごめん。もっと早く、止めればよかった…もっと強く、言えば良かった…。お前が恋しいよ…また、一緒に遊びたいよ…ペンギンのリベンジさせてくれよ…。お願いだよ。智…こんなの…嫌だよ。」 ガタッ 目の前の襖が開いて、誰かが泣き崩れるオレを見下ろして固まっている。 顔を上げて確認する。 「あ…」 目の前の人物の登場に、時間が止まって見つめ合う。 次の瞬間、怒りが込み上げて来た。 向井さんに飛び掛かると、胸ぐらを掴んで壁に押し付ける。 「お前…何したんだよ…この子に、何したんだよ…!」 押し殺す声でそう言って、睨みつける。 殺してやる…殺してやる!! 向井さんはオレの目を見つめて目を細めると、頭を撫でて言った。 「今はやめよう…」 は? 何言ってんのこいつ… 智の隣に座って、お線香をあげる薄情な噓つきの背中を見下ろした。 殺してやりたい…今すぐに、殺してやりたい…!! 台所から包丁を持ってきて、この背中に突き刺してやりたい!! 気が狂いそうになって、オレは部屋から飛び出した。 なんて奴だ…信じられない!良くもぬけぬけと…ここに来られたな… どんな神経してるんだ…許せない…許せない!! あいつ…ぶっ殺してやる…!! 朝が来て、葬儀社が智を棺に納める。 オレは智のお気に入りの曲を一緒に入れてもらった。 そんな中、新しく入った背の高い男に熟女たちは夢中になっている… 「智ちゃんの知り合いはイケメンばっかだね?」 そう言って笑うおばちゃんに笑顔で対応する向井さん… あんたはそう言う事、得意だよな…クズ。 智を乗せた霊柩車を追いかけて火葬場まで向かう。 熟女たちが向井さんの車の権利を取り合う中、オレは智のお父さんの車に乗った。 「…あの人、良い人だね。シロ君も知り合いなの?」 智のお母さんが笑顔で俺に聞いて来る… 良い人…?あいつが…?そんな訳無いよ…あいつはクズだもん。 「うん…」 オレはそう言って頷いて、答える。 火葬場に着いたら、後は早かった。 炉に入れられて、骨になるまで焼き続けるんだ… こんな悲しいことは無いよ… ちょっと前まで生きていたのに…出てくる時には誰かも分からない…骨になってしまうんだから…!! 火葬場の外に出て、智が焼かれて出る煙を眺めた。 「あぁ…智…行かないでよ…行かないで」 涙がボロボロと落ちて止まらない… 兄ちゃん…智が、行っちゃうよ…止めて…止めてよ… 届きもしない両手を伸ばして、智を掴もうと手のひらを握る。 震える手が暴れて体を揺らすから、ギュッと掴んで体に押し付ける。 「シロ…」 オレの名前を呼んで後ろから近づいて来る男… 振り返って彼を見つめる。 悲しそうな顔をして、オレを見つめて来るんだ…笑っちゃうだろ… 白々しくてさ… オレは彼の目を見つめたまま言った。 「…オレ、向井さんの事、好きだよ…」 虚ろな目で彼に手を伸ばす。 驚いた顔をして駆け寄ると、オレの顔を覗いて聞いて来る。 「シロ…どうしたの?」 どうしたの…?笑わせんな… お前の望み通りにしてやってんだろ…うれションして喜べよ。 オレは手の先に触れた彼の体に抱きつくと、胸に顔を埋めて泣いた。 「もう、どこにも行かないで…兄ちゃん…」 オレは今、ノーガードだ… オレの狂気と一緒に、お前を道連れにしてやる!! 「なんで?なんで…あんなに、智を虐めたの?!」 向井さんがオレの口にキスして、熱い舌を絡めてくる。 息が漏れて、顔にあたる。 熱くて、どんどん気持ち良くなっていく… 「…知ってるでしょ?」 耳元で低く囁く、彼の熱い吐息に背筋がゾクゾクする… オレと向井さんは智の納骨を見届けた後、智の実家を後にした。 彼の運転するレンタカーで福島駅まで戻り、近くのホテルを取って部屋でセックスしてる…。 最低だろ…? 部屋に入った瞬間、お互いを激しく求める様に抱きしめ合って、キスをした… 向井さんがオレの服を剥ぐ様に脱がして、体に舌を這わせてキスする。 オレは彼の髪を掴んで、泣きながらずっと同じ事ばかり聞いてる。 「なんで…なんで…言ってよ…。ねぇ、なんで!あんなになるまで…虐めたんだよ…」 喚き散らすオレをベッドに押し倒して、乱暴にズボンを脱がす。 ベッドのきしむ音がして、ギラギラした目の彼がオレを見下ろす。 そのまま、オレのモノを口に咥えて離れない様に足を抱え込む。 押し寄せる快感に体が仰け反って、虚ろな目に天井が映る。 …最低だ… 「んんっ…はぁ、はぁ…ん、あっ、あぁん、はぁ…ん、ん…、いい…きもちい…ぁあっ、ん!」 腰がゆるゆると動いて、掴まれた足がきつく締め付けられて気持ちいい… …もうめちゃくちゃにして欲しい 「オレが…ん、良い子にすれば良かったの?…ぁあっ、んんぁっ…オレの、せいなの…?ねぇ!!」 聞いても彼は何も答えずに、貪欲にオレを貪ってる… 最低だ… 体を起こして、オレの股間に顔を埋める向井さんの髪を掴んで、無理やり自分の方を向かせる。 「教えてよ!…ん、んぁあ…ね、教えて…んっ、んんっ…んぁ、ぁあん、ん、んんん…!」 うっとりとオレを見つめながら、オレのモノを舌を這わせて舐めて口に入れる彼を見て…堪らなく、興奮する… 口からよだれが垂れて、顎に流れる。 堪んない…すごい、気持ちいい… 彼のくれる快感が、今までの何よりも最高に気持ち良くて…体が仰け反って顎が上がる… 背中がビクビク痙攣して、爪先まで小さく震える。 最低だ… 「シロ、イッていいよ…」 「あぁああっ! はぁあん!はぁ、はぁ…ん」 向井さんがそう言うと待っていたかのように、オレは激しく腰をビクつかせて射精した。 項垂れて呆けたまま、股間の中の彼を見つめる… 頭をもたげてオレの顔に猫みたいに顔を擦り付けて、熱いキスをする。 そのまま足の間に体を入れて、オレの腰を引き寄せると自分の膝に座らせる。 お尻を撫でながら、手を滑らせて指をゆっくりと押し挿れて来る。 「んぁっ!…あ、ぁあっ! んん…ん、んぁあ…!!」 快感を感じで、仰け反るオレの腰に腕を回し、首筋に舌を這わせて、指を増やす。 トロけてしまいそうなくらいの熱い熱を感じて、彼の胸にピッタリと体を寄り添わせる。 オレの中を、彼の指が止まることなく刺激して腰を震わせる。 すごく、きもちいい… 彼の頭にしがみ付きながら、下半身に与えられる快感に身もだえる。 「シロ…かわいい、もう…お前に夢中だ…」 向井さんはそう言うと、うっとりした目でオレの顔を見つめる… …最低だ。反吐が出るよ。 オレの頭を掴んで自分に向かせると、舌を出してキスをねだる。 オレは顔を寄せて彼の舌を舐めると、唇を合わせてキスする… 待てない様に、オレの口を塞ぐようなキスをして、逃げて行かない様に頭を押さえられる… 「ん、んっ…ん、ふぁっ…あっ、んっ…んん!」 舌が絡まって、気持ち良くて…オレのモノがすごく熱くなる。 触って欲しくて、腰が動いて、彼の腹に勃起したモノを押し付ける。 「ね、触って…オレの触ってよ…。ねぇ…兄ちゃん…シロのきもちよくして…ねぇ…」 トロけた瞳でおねだりすると、向井さんの顔が歪んだ。 オレのお兄ちゃんプレイ…好きなんだろ…? うんと甘えてやるよ… お兄ちゃん。 向井さんは大きくなった自分のモノを、オレの中に挿れると小さく呻き声を出した。 快感に体を仰け反らして、自分のモノを扱きながらよだれを垂らして彼を見つめる。 「あ!あぁっ、い、いい…兄ちゃん…んん…」 腰を強く掴まれ、下から突き上げられる。 突き抜けていくような快感に身もだえて、両手で彼の背中を抱いてしがみ付く。 よだれが垂れて、オレを見つめる彼に落ちる。 彼の唇をねっとりと舐めて、キスをする。 息が漏れるキスをしたまま、向井さんはオレのモノを扱く。 …もうすごい…きもちいい…ぶっ飛ぶ… 「はぁあんっ!いく、イッちゃう!にぃちゃん…シロ、イキたい…!ねぇ、あっ…んっ、んん…!」 「シロ…キスして…」 「イキたい…!」 オレは向井さんの首に両手を回して、腰を激しく動かす。 堪んないんだ…気持ち良くて、堪んない… 腰が勝手に動いて、もっと気持ちよくなりたいって…勝手に動くんだ… 「…ん、…はぁ、はぁ…シロ、まだダメだよ…」 「んんんっ…や、やぁ…イキたい!…はぁ…ん」 「…ん、兄ちゃんに…キスして……」 「あぁああっ!んんっ…!…はぁはぁ…」 向井さんは、彼の上で完全にイッちゃってるオレの頬を優しく掴むと、自分に向かせてキスした。 笑っちゃうくらいの優しいキスに、口元が緩んで、気が狂いそうになる… 「イッていいよ…」 「んんんんっっ!あぁああっ!はぁあ…はぁ…」 やっと許可が下りて極まったオレは、向井さんの体を押し倒しながらイッた。 オレの下敷きになった向井さんが、腹の下で笑ってる声がする… 「シロ…すごいね。薬も使ってないのに…こんなにキマるなんて…一体どんなことされてきたの…?」 快感の余韻に襲われて、腰が震えて、項垂れる様に彼を圧し潰す。 オレの下から抜け出ると、うつ伏せるオレの上に覆い被さって、腰を引っ張り上げる。 そして、中にまた挿入してくる。 強くつかまれた腰に、向井さんの指が食い込んでいく… 再び訪れる快感に、頬を預けたベッドのシーツが大きなしわを作っていく。 「ん、あっ…あっ、んぁ…きもちい…兄ちゃん…」 背中に熱い体が圧し掛かってきて、彼のモノが、オレの奥まで入って来る。 「ひゃあ…!あっ!ああ…ん!」 彼の荒い息遣いが、オレの髪にかかって、揺れる。 完全に覆い被さられて、首すじを食むように舐められながら、押しつぶされる。 彼の腰が止まる事無く動いて、ベッドに突っ伏すオレの下半身をガンガン突いて来る。 「シロ…きもちい?」 もっと… もっと…だ 「足りない…もっと…、もっとぉ!とびたい…!」 ふふ…と、耳元で彼の笑い声が聞こえる。 優しく舌で耳を舐め上げられて、腰がゾクッと震える… 体を圧し潰す圧迫感から解放されて、背中が涼しくなる。 向井さんはオレの腰を引き上げると、注文通りにガンガンと突いてくる… もう何も考えたくない…ただ、真っ白になって、快感だけに溺れたい… 智…ごめんね…オレが、守ってあげればよかったんだ… 「んぁあっ!いい…ぁあ、んんっ、はぁ…ん!」 背中をしならせて、尻を突き出す。 オレのモノを扱いて抜けよ…! もっともっとイカせて… 「足んない…!足んないよ!!」 そう言って、自分のモノを扱きながら、ガン突きされる。 狂わせて…もう何も考えなくていい位、快感だけ与えて、狂わせてくれよ… 智…ごめんね…可哀そうだ…可哀そうだ…智、何も悪くないのに…可哀そうだ… こんなクズ2人の間に入って…傷ついてしまったんだ。 「シロくん。すごく激しかったね…そんなに俺に抱かれたかったの?」 うつ伏せて寝るオレの髪を、指先で分けて目を覗く向井さん。 この人は兄ちゃんに似てる。 顔が似てる訳じゃない。でも似てる。 言葉では説明できない、オレにしか分からない感覚。 彼の物腰や、彼の視線、彼のオレを見つめる瞳に…兄ちゃんを感じるんだ… それは堪らなくオレを興奮させて…おかしくさせる。 彼の言葉に、彼の声に、彼の欲に、兄ちゃんを感じて、甘えてしまいたくなるんだ… 初めて会った時から、オレはこの人に兄ちゃんを感じていた。 なのに見て見ぬ振りをしたんだ… 兄ちゃんに触れるのが怖かった。 失う時の事を考えたら、怖くて近づけなかった。 もう怖くないよ…オレはノーガードだ…一緒に溺れて死のうよ。 まるで感情の無い駒を使う様に、智を弄んでオレを揺さぶったね。 構って欲しい…クソガキみたいに、オレの目の前でいちいち感情を煽って来たね。 まるで、オレに…愛されたいみたいだ… クズの癖に…愛なんて信じてんの? 笑わせるよ。 オレ達はクズなんだ…クズに愛なんて笑わせるんじゃねぇよ。 オレ達が欲しいのはただの肉欲だよ…セックスしたくて仕方がないだけなんだ。 サルみたいに、ひたすらしたいだけなんだ。 勘違いすんなよ… 兄ちゃんはオレに優しかった…特別に優しかった。 オレが母親に虐待されていたから? 違う。 兄ちゃんはオレを守ってくれた…あの混沌の時間から… 自分の心を犠牲にして…守ってくれた。 オレの目の前にいる事で、オレがそれ以上傷つかない様に守ってくれた。 それが愛だ…まぎれもない愛だ… あの人にしか出来ない、あの人しかくれない、あの人だけの特別な愛だ。 忘れた記憶を呼び起こして、兄ちゃんを思い出して、お前と重ねよう。 この愛をお前がオレにくれるの? 絶対に無理だね… クズのオレにクズのお前が…愛をくれるって…? それは楽しみだよ…偽名の向井さん。 オレの髪を撫でる彼を見つめる。 そっと手を伸ばして指先で彼の体に触れる。 驚いた顔をしてオレを見つめる彼を微笑んで見つめながら、指先を動かして体を舐める様に撫でる。 体を寄り添わせて、甘える様に胸に顔を擦り付けて目を瞑る。 向井さんは固まって動かなくなった。 オレが甘えたのがそんなに驚く事だったの…? だったらこれからもっと驚きが待ってるね…こんなもんじゃないよ… そっとオレの肩に触れるあの人の手は、優しくて温かかった。 オレの体を引き寄せて強く抱きしめると、大事そうに髪を撫でて頭にキスを落とす。 「…向井さん、オレの事好き?」 オレは彼の胸に顔を埋めたまま、小さくそう呟いて聞いた。 「ん…すごく…」 「…じゃ、キスして…」 顔を上げて口を開けて、彼を見つめて誘う。 ふふ…と口端をあげて彼が笑う。 そして、オレに顔を近づけて舌を入れてキスする。 むせ返る様な…熱くて、熱のある…依冬みたいなキス… そうだよ…大好きなオレに溺れろよ… 沢山甘えて、沢山愛してやるから…一緒に死のう。 絶対に許さないよ… 智を虐めた事も、オレに兄ちゃんを思い出させた事も、勝手な愛を与えたがってる事も…全て後悔させてやるよ。 オレは狂ってるからね… 14:00 歌舞伎町の自分のアパートで目が覚める。 あの後、すぐ東京行きの新幹線に乗って帰ってきた。 向井さんに車で送ってもらって、今までずっと眠っていた。 沢山寝たおかげか、体の疲労感が少し和らいだ… 怠い事に変わりはない…あんなにセックスしたんだ…怠いよ。 両手を上に上げて伸びをして、体を捩る。 「イテテ…イテテテ…」 変な筋肉が筋肉痛になっている。 あぁ…兄ちゃんに会いたいな… 向井さんとセックスしたから、すっかり兄ちゃんの事で頭がいっぱいになる。 既に狂ってんだ… 携帯電話を手に取って、電話をする。 「シロ…どうしたの?」 電話口の相手が驚いた声を出すから、口元が緩んで来る。 「ちょっとだけ会いたい…家に来てよ…」 一方的にそんなわがままを言って、通話を切る。 両手を上に伸ばして手のひらをヒラヒラと動かす。 指先、手首、肘、肩…肩、肘、手首、指先…アイソレーションして腕を自在に動かす。 ウェーブさせる様に手を動かして、自分の手が言う事を聞くことを確認する。 これからオレは堕ちて行くかもしれないね…あの人と一緒に…地獄に行くんだ。 だから…彼に伝えておかないと… コンコン 思ったよりも早くにノックの音がした。 「早いじゃん!」 オレはそう呟いてご機嫌で玄関に向かう。 「依冬~!」 玄関を開いて、目の前の彼に甘えて抱きつく。 ジャケットの下に手を入れてシャツの背中を撫でる。 「シロ…寒いから…」 半そで半ズボンのオレの格好を見て、依冬がオレを抱えて部屋に入る。 「寒くない!お前はあったかいじゃん…」 そう言って彼のジャケットのボタンを外して、シャツに顔を擦り付ける。 「ねぇ…智君の事、聞いたよ。シロ…福島に行っていたの?1人で?大丈夫だった…?」 優しい声…オレに向けられてない、優しい声。 「向井さんがいた…でも、大丈夫じゃないよ。全然大丈夫じゃない…」 オレはそう言って、依冬の胸で泣き始める。 「依冬…依冬…智が死んじゃった…オレのせいだったんだ…オレのせいで、智が死んでしまった…」 「違うよ。」 「違くないんだ…全然、違くないんだ…依冬…オレ、狂ってるんだ。」 オレは体を起こして、依冬を見つめる。 その目はきっと結城さんのグルグルのブラックホールの目と同じ黒さだ… 動揺もしないでオレの目を手のひらで覆うと、依冬が言った。 「大丈夫だよ…今は少し、ショックだっただけだよ…」 ゆっくり一緒に床に座ると、オレの頭を撫でて依冬が言った。 「シロのせいじゃない…絶対違うよ。自分を責めちゃダメだ…」 優しい声が耳の奥に届いて、オレの鼓膜を揺らす。 「…向井さんが…兄ちゃんに、見えるんだ…」 そう言って、覆われた目からドロドロの涙を流す。 「子供の頃…母親に虐待されていた…オレの事を守ってくれたのは、10歳年上の兄ちゃんだった。小4の時、兄ちゃんの前でオナニーした。そうしたら、兄ちゃんがオレのをフェラしてイカせた。大好きだった兄ちゃんが、オレをイカせたんだ…」 これから堕ちていくんだ… 大好きなんだ、依冬。 オレの覚えてる全てを話すよ…だから受け取って。 「幼い頃、母親がオレを使って売春をした…それを兄ちゃんはずっと見続けたんだ。怖いから、一緒に居てとねだって…兄ちゃんに見せた。その時、兄ちゃんはまだ高校生だった…」 オレの目を覆っていた手を離すと、依冬はオレの体を強く抱きしめた。 苦しい位に強く抱きしめて、すすり泣くような声が聞こえる。 「怖かったんだ…だからそれが終わるまで、ひたすら兄ちゃんを見続けた…兄ちゃんはずっと涙を流して…オレを見続けてくれた。…あの気が狂いそうな時間を一緒に過ごしてくれたんだ…」 オレはそう言って依冬の顔を覗き込む。 「そんな…そんな事があったのに、オレは兄ちゃんにオナニーを見せたんだ。…分かってした。分かっていたんだ。兄ちゃんが…壊れてしまうって分かって見せつけた…。ずっと傍に居て欲しかったんだ…殴られるのを守ってくれるのは…兄ちゃんだけだった。だから、離れて行かない様に…オレに、オレに…おかしくなる様に…必死に誘惑した。」 自分が何をしたのか…どう思ってそうしたのか…汚くて、ズルくて、いやらしい自分の全てを彼に言う。 「子供だからじゃない…オレは知ってた…全部、知ってた…兄ちゃんがオレを抱くようになることも…全部知ってた。オレを触りたがっていた事も分かっていた。必死に我慢してる事も分かっていた。一線を越えない様に、踏みとどまっていた事も、全部知ってた。だけど兄ちゃんの前でオナニーしてイッたんだ。」 依冬はオレの頭を抱いて、自分の胸に押し付ける様に抱きしめる。 彼の目から涙が落ちていた…それは、湊じゃない、オレに向けての涙… 「オレは可哀想なんかじゃない…。可哀想なのは…オレに付き合わされた兄ちゃんだ…。そんな兄ちゃんが自殺してしまったのは…オレのせいなんだ…。後悔してもしきれない。だから、オレは向井さんから離れられない…彼が、兄ちゃんに見えるんだ…智は向井さんを愛してた…でも、オレが居るから…オレが兄ちゃんを離さないから、傷ついてしまったんだ…」 オレはそう言って、涙でグチャグチャの顔のまま依冬の顔に頬ずりする。 「依冬に教えるのは…オレがお前を好きだから…だから教える…。誰も知らない、オレもこの前思い出した…ずっと忘れたくて思い出さなかったこの話を、お前にだけ教える…だから…オレが壊れても気にしないでくれ…自分を責めたり、傷ついたり…しないで。」 そう言って彼の体に自分を埋めていく。 このままこの人と一つになりたい…自分が消えてなくなれば苦しみも終わるのに… 「シロ…シロ…」 オレの名前を呼びながら、すすり泣く依冬の声を聴く。 悲しそうに泣いている彼の声を聴いて、呆ける。 オレのグルグルのブラックホールの目を覗いて、涙目の依冬がにっこりと笑いかけてくる。そんな、いつもと変わらない彼の笑顔に、堪らなくなる。 「…依冬!」 彼の首にしがみ付いて、きつく抱き付いて、しがみ付いて顔を埋める。 「シロ…シロは知らないかもしれないけれど、人は誰でもいくつかの悪い事をしながら生きてるんだよ。俺だって…シロに言えない酷い事をしてる…それを全て自分のせいなんて…思って無いよ。」 そう言って依冬はオレの顔を見つめる。 「お兄さんの事も、智君の事も、シロが悪いんじゃない。自分を責めるからおかしくなるんだ…おかしくならないために、自分を責めることを止めるべきだ…」 オレの頬を両手で包んで、ジッとブラックホールを見つめて来る。 「向井さんが必要なら利用すればいい。俺が必要なら利用すればいい。それをズルいなんて思わない。きっと彼もそんな風には思わない。お兄さんが必要なら今みたいに泣けばいい。それだけの事なんだ…そこにはシロを責めるものなんて…何も無いんだよ。」 「ダメなんだ!ダメなんだよ!それじゃダメなんだ!」 「ダメじゃない…誰も責めたりしない。それだけ…シロは傷ついてるんだ。お兄さんだって…シロを責めたりしない。愛してたんだよ。」 「違う!違う!!」 「違くないよ…愛してたんだ。利用されたなんて…思ってない。愛してたから、そうしただけなんだよ。」 依冬の声にグルグルのブラックホールがドクドクと脈打って彼を飲み込みそうに渦を巻く。 オレは両手で目を押さえた。 そうしないと、依冬を飲み込んでしまいそうで…怖かった…!! 「大丈夫…大丈夫だよ…」 そう言ってオレを抱いて頭を撫でる依冬の胸の中で、グルグルのブラックホールを開いたまま、呆然と口を開けて、闇の奥を見つめた。 これがオレがひた隠しにしてきた…逃げる様に避けて来た狂気だ… 兄ちゃんが死んで…家族の元を離れた。 1人暮らしの部屋の中で、こうやって黒い瞳で宙を見つめるんだ。 何も手に着かなくて、何も食べなくて、死んでいくように生きることを止めるんだ… こうなる事を避けて…兄ちゃんの事を思い出さない様にしてきた… でも、もう無理なんだ。 思いきり開いた箱の蓋は吹き飛んでしまった…もう閉じない。 閉じないんだ。 「シロ…寝てる?」 「起きてる…」 だいぶ落ち着いたオレは依冬の体の中で、彼のあったかさを自分の体に伝えてる。 膝の上に跨って彼の胸に体を預けると…とても落ち着いて来るんだ。 おかげで目の奥のグルグルのブラックホールも、いつの間にか閉じた様だ。 「キスしていい?」 そんな依冬の声に、オレは顔を上げて彼を見た。 彼はオレを見下ろして、変わらない優しい笑顔を向ける。 そっと唇を近づけて、彼にキスする。 依冬の手がオレの頬を包み込んで、熱いキスをくれる。 彼の舌がオレの舌を絡めて、気持ち良くしていく。 「怖くないの?」 「なんで?」 オレの唇を外しておでこを付けたままクスクス笑って聞いて来る。 「だって…オレは」 「狂ってなんて無いよ…可愛いシロだよ。」 オレは依冬の唇にキスをする。 熱くてむせ返るようなキスを執拗にする。 これがオレのしつこくて…粘っこい愛だよ。 静かな室内にいやらしいキスの音だけ響いて、頭の中がクラクラしてくる。 依冬のスーツの下に入れていた手を動かして、ジャケットを脱がせる。 そして、彼のワイシャツのボタンを上から外す。 露わになった胸板に指を這わせて、指先でいやらしく愛撫する。 「シロ、したくなっちゃうから…」 「していいよ…好きなんだ…」 依冬の膝の上に跨って、両手で顔を包んでねちっこいキスをする。 両手で彼の胸を撫でて素肌を感じる。 肩を露出させて、美しい筋肉に舌を這わせてキスする。 オレのパジャマの下に滑り込んで来た依冬の手が、腰から脇へと体を撫であげる。 「あふふっ!こしょぐったい…!」 オレはそう言って体を捩って笑った。 依冬がそんなオレを見て、ショックを受けた様に固まった。 「ん…どうしたの…?」 首を傾げてそう聞くと、依冬は我に返ったようにハッとした。 どんどん顔が歪んで…大粒の涙があふれて落ちる。 「こうやって…湊を、愛せたら良かったのに…!」 そう言って、肩を震わせて泣き始める… オレはさっき依冬がそうしてくれた様に、あいつの頭を撫でて抱きしめた。 あんなオレを見ても動揺しなかったのに、こんな些細な事で彼は泣き崩れた。 優しく愛したかった… こんな風に… 優しく、愛したかったんだ。 なんだよ…みんな、普通に見えるのに狂ってるんだ。 何かに縛られて、何かに後悔して、何かに狂ってるんだ… 「これから出てくるんだよ?オレ知ってるもん。」 仕事中の依冬を拘束して、一緒に古いホラー映画をDVDで鑑賞する。 あの後、オレ達はセックスしなかった。 依冬が言った言葉に、そんな気が一瞬でなくなった。 湊くんの事が今でも、忘れられないんだ… 「ほら!出て来た!」 オレはそう言って依冬の体を叩く。 「これは一体いつのホラー映画なの?お約束過ぎて、全然怖くないじゃん。」 「良いの!こういうのが良いの!分かってるけど、怖いだろ?それで十分なんだ。」 文句を言う依冬の口を塞いで、もっと出て来るポイントを教えてあげる。 「あと、逃げてる時にも出てくるんだよ?バッて足を掴むんだ!」 オレがそう言って教えてあげると、丁度逃げてるシーンが映った。 「ほら、ほら…来るよ?来るよ?」 そう言ってテレビの前に移動して、カウントする。 クスクス笑いながら依冬がオレを見てる。 それが可愛くて…すっかりカウントを忘れてしまう。 「あッ!出ちゃったよ?もう言ってたシーン終わっちゃったよ?」 良いんだ。また見ればいいもん。 オレは巻き戻しをして再生させた。 「もう一回!」 「なんだよ、それ…ダメじゃん。」 ダメじゃない… 依冬に抱きついて彼と一緒に問題のシーンを再生する。 「ね?言った通りだろ?」 オレがそう言って得意げにすると、依冬がチュッとキスをくれた。 それが嬉しくて、彼にもたれて甘える。 あんなに優しく慰めてくれたのは依冬が初めてだよ…そもそも、あの話をしたのは…お前が初めてだ…初めてなんだよ… 大好きだよ。 癒しなんかじゃない、大好きなんだ… 「またね?」 「何かあったらすぐに連絡してね…」 たっぷりと依冬と遊んで、彼を帰してあげた。 にっこりと笑ってオレに手を振る彼を見送る。 今日は狂犬にならなかった…忠犬の依冬だった。 きっとオレの狂気に動揺したんだ… 今日はお仕事は行かない。 ベッドに寝転がって自分の手を眺める。微かに震える手に、自分が堕ち始めていることが分かって鼻で笑った。 携帯が震えて着信を知らせる。オレは画面を見てから電話に出た。 「もしもし?」 「シロ、何してた?」 向井さんだ。時計を見ると18:00オレが店にいつも行く時間だ。 今日、出勤するかどうかの確認電話かな… 「今日はお仕事行かないんだ…疲れちゃったから。」 オレはそう言って鼻歌を歌う。 「随分ご機嫌だね?何か良い事があったの?」 「うん。依冬と遊んだ~。」 オレはそう言ってクスクス笑うと兄ちゃんに言った。 「兄ちゃんは何してたの?」 「…お仕事だよ。」 もうすぐ帰ってくる時間だ。きっとスーパーに寄るから少し遅くなる。 「んふふ。今日は何を作るの?」 「シロ…」 「シロはらっきょは要らない…嫌いなんだもん、だから、らっきょは買ってこないで?」 「…」 「兄ちゃんのカレーは辛いから…甘口にしてね?シロは食べられるけど、健太が辛いのが嫌でしょ?だから、甘口を買って来てね?待ってるね?」 そう言って電話を切った。 オレはノーガードだよ…一緒に堕ちる?それとも、逃げ出す? 兄ちゃん… コンコン ドアをノックする音が聴こえた。 ふぅん… 玄関を開くと向井さんが立っている。 手にはスーパーの袋。 「兄ちゃん!」 オレはそう言って向井さんに抱きついた。 彼のスーツに顔を擦り付けて喜ぶ。 「シロ…依冬君と何してたの?」 オレの肩を抱いて、顔を覗き込むようにして彼は言った。 それが気になるの…? オレは兄ちゃんの首に両手を回して甘える。 「映画を一緒に見たんだけど、全然怖くなかったよ?だって、シロはあれ何回も見てるもん。でも、依冬は怖いって泣いてた。」 そう言ってクスクス笑って兄ちゃんの胸に顔を付けてうっとりとする。 大好きだよ…兄ちゃん。 「シロ…ご飯が作れないよ…」 「要らない…ご飯いらない。」 台所に立つ兄ちゃんの背中にしがみ付いて邪魔をする。 兄ちゃんのスーツの中に手を入れて体を撫でまわす。自分よりも大きな体に興奮してくる…目の前の大きな背中に堪らなく興奮してくる。 「兄ちゃん…シロとしてよ…?好きなの。兄ちゃんが好きなの…」 向井さんを惑わす為に、自分も堕ちていく。死なば諸共って言葉の通り、一緒に死ぬ。この終わりのない…狂った世界に連れて行く。 「シロ…」 困った顔をして、困惑してるね…知ってる。オレは狂ってるんだ。 それが好きなんだろ… だからたっぷりあげる。 「どうして?…シロの事好きじゃないの?」 オレがそう言うと、向井さんは泣きそうな顔をしてオレを抱きしめる。 「好きだよ…堪らなく好きだよ…でも、お前が壊れて行くよ。こんな事をしてたら、お前が壊れて行くよ…。やめて…」 何言ってんだよ…智の事は壊した癖に… オレは自分のパジャマのズボンの中に手を入れてマスを掻き始める。 「兄ちゃんがしてくれないから…シロ、自分でやる…」 そう言って彼の前でオナニーを始める。 兄ちゃんにしたみたいに、オナニーする。 「はぁはぁ…んんっ…あっああ、兄ちゃん…兄ちゃん…はぁはぁ…気持ちい…気持ちいの…シロのここおっきくなったの…兄ちゃん…舐めてよ…シロの舐めて…?」 腰をゆるゆると動かしながら目の前の向井さんを誘う。 彼はオレを見て固まってる…ウケる。 彼の手を掴んでベッドに座らせて、彼の上に跨って乗る。 パジャマの上をまくって、剥き出しになった乳首をいやらしく自分で撫でて喘ぐ。 腰をうねらせて、うっとりした視線を彼に送って、誘う。 「はぁあん…気持ちい…兄ちゃん…して、シロにしてよ…?」 腰をいやらしくうねらせて向井さんの腹にあてながら、体を仰け反らせて、誘う。 「シロ…!」 向井さんがオレの体を舐め始める。がっちりと腰を掴んで逃げない様に強く抱きしめて、オレを抱く。 「兄ちゃぁん…あぁ…兄ちゃん、大好き…大好き…大好きなの…」 兄ちゃんの頭を掴んで、顔を埋めて、何度も髪にキスする。 兄ちゃんの匂いがする…オレの兄ちゃん…誰にも渡さない… オレの中に指を入れて、兄ちゃんがオレにキスをくれる。 「シロ…シロ…愛してるよ…」 愛… 頭の中に響くキスの音を感じながら、荒い息を交換するみたいに口を離さないで貪るようなキスをする。 気持ち良い… 「兄ちゃん…気持ちいい、はぁはぁ…んっん…あっああん…やぁあだ…イッちゃう…」 オレは体を仰け反らせて、兄ちゃんの指の気持ち良さを感じてる。 何本も増えた指を中に咥え込んで、いやらしく腰を動かしてもっと気持ち良くなろうとする。 「シロ…良いよ…イッて良いよ…」 兄ちゃんがそう言ってオレの乳首を舐める。 「んんっ!!あぁああん!」 激しく腰を震わせて、オレはイッてしまった… 兄ちゃんの肩に顔を置いて、息を整えながら兄ちゃんのモノを扱いて大きくする。 挿れたいんだ… 「シロ…待って…」 「挿れて…兄ちゃん…してよ…シロの事好きじゃないの?もう、やだよ…何で何回も聞かせるの…ねぇ…うっく…ひっく、ひっく…ヤダぁ…兄ちゃん…シロの事、嫌いなんだぁ…あっああん…酷いよぉ…シロはこんなに好きなのに…酷いよぉ…」 オレがそう言ってボロボロと泣くと、兄ちゃんをオレの頬を包むようにして持ち上げる。 「シロ…愛してるよ。嫌いな訳無いだろ…」 そう言ってオレにキスすると、兄ちゃんはズボンから自分のモノを出して、手で扱いた。 「兄ちゃん…兄ちゃん…」 オレはそう言って喜んで兄ちゃんに何度もキスをする。 兄ちゃんのおちんちんが…オレに挿れられるの… 熱いキスをしながら、兄ちゃんがオレの腰を掴んで、自分のモノの上に下ろしていく。 体が仰け反って、快感に頭の先まで痺れていく。 「んんっ!!兄ちゃん…あっああ…気持ちい…気持ちい…兄ちゃんのおちんちん、大好き…大好きなの…もう、もう、もうどこにも行かないでよっ!!シロを一人にしないでっ!言ったでしょ…大きくなっても、シロだけ愛してるって…言ったでしょ…」 泣きながら、兄ちゃんの上で腰を動かして快感を貰う。 体にしがみ付いて、兄ちゃんを感じて、兄ちゃんにありったけの愛を送る。 こんなに愛してるのに…どうして1人にしたの…あんなに愛したのに… どうして…1人にしたの… 「あぁ…シロ、イキそうだ…もうちょっとゆっくり…」 「あははぁ~ダメだよ…兄ちゃん…シロの気持ち良いようにして良いって…言ったじゃん…これが気持ちいの…兄ちゃん…我慢して?シロがイクまで…我慢して…?」 兄ちゃんが苦悶の表情を浮かべて…可愛い。 兄ちゃんの唇をねっとりと舐めて押し広げると舌を絡めて深くキスをする。 もっと…もっと…もっと欲しい。 「兄ちゃぁん…きもちいね…これ、すっごい気持ちいね…?」 体を仰け反らせて、ギンギンの兄ちゃんのモノを堪能するみたいに、何度も擦って扱く。 兄ちゃんの顔に汗がにじんで垂れていく。オレはそれを舌でねっとりと舐める。 腰をいやらしく動かして、限界ギリギリの兄ちゃんのモノを何度も扱く。 「はぁはぁ…ダメだ…シロ、兄ちゃんはイキそうなの…もう、ダメ…」 「ダメじゃない…まだもっと我慢して…我慢して…シロの事、好きなんでしょ?」 オレは苦悶に歪む兄ちゃんの目を見つめながら頬を両手で包む。 兄ちゃんの口に喘ぎ声を入れるみたいに唇を付けながら、ゆっくりと腰を動かして兄ちゃんを見つめる。 仰け反る頭を抱えて、兄ちゃんの体に自分を押し付けて一心不乱に腰を振る。 あぁ…気持ち良い…イッちゃいそうだ…堪んない 「兄ちゃぁん!気持ちいい!!あっああ!!んっん…はぁああん!!」 そのまま兄ちゃんを押し倒して、自分の中から出た精液を指に付けて、口に入れてあげる。 「舐めて?…シロの、舐めて綺麗にして…?」 翻弄される兄ちゃんを笑う様に、膝の上から退くとベッドに横になって、股を開く。 射精して汚れたモノを扱きながら兄ちゃんを、誘う。 「舐めて…?」 兄ちゃんはオレのモノを舌で舐めると綺麗に口の中に入れる。 「んっ!んんっ…はぁはぁ…にいちゃぁん…にいちゃぁん…」 目から涙があふれて頬を伝って落ちる。 兄ちゃん…会いたいよ… 兄ちゃんの髪を掴んで快感をくれる兄ちゃんの口にファックする。 もう止まんないよ…止まんない。 このままぶっ壊れて行くんだ、この人と一緒に、このままぶっ壊れて行くんだ… 「シロ…愛してるよ。」 耳元で囁かれて、オレの中に兄ちゃんのモノが入って来る。 強く抱きしめられたまま中を激しく突かれて、顎が上がって、首が伸びる。 「にいちゃぁん!にいちゃぁん!!気持ちい!気持ちいよ!!」 背中にしがみ付いて、兄ちゃんの筋肉を撫でて、肩の厚みを撫でる。 兄ちゃん…会いたい…会いたいんだ… オレの顔を見つめて、苦悶の表情を浮かべながら、兄ちゃんがオレの涙を拭ってくれる。溢れて止まらない涙を拭って、優しくキスしながら快感をくれる。 真っ白になっていく頭の中で、兄ちゃんの声がする。 荒い息遣いと、オレの名前を呼ぶ声と、愛してるといった声… 堪らなくなって、嗚咽を漏らして泣きじゃくる。 どうして…してしまったんだろう…あんな風に。 あんなに愛していたのに、どうして… 止まらなくなったんだ…自分を止められなかった。溢れてくる激情に、飲み込まれてしまった…

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