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第29話
「ねぇ、シロ…エッチしよう?」
オレの耳元で依冬がそう言って圧し掛かってきた。
眠った所だったのに…疲れたって言ったのに…
依冬は若いから、意味が分からなかったみたいだ。
「や…しない。疲れたもん…」
オレはそう言って、顔をベッドに埋めて、首を横に振った。
オレの桃尻を撫でながら、興奮した声色で依冬が言う。
「シロは寝てるだけで良いよ…?…ね?良いだろ?」
寝てるだけ…って、ププ…それじゃオナホールじゃないか…酷い奴め。
いつでもエッチが出来るからって…オレを不当に扱おうとしてんだな…!
こんなに調子に乗った依冬には、罰が必要だ…
「あ~!良い事思いついた!じゃあ…依冬、縛りプレイしてみようよ?」
オレはそう言うと体をゴロンと返して、オレに覆い被さる依冬を見上げた。
彼はシャワーから出たままの姿で、オレを見下ろしている。
「なぁに?それ?」
首を傾げてキョトンとする依冬に優しく教えてあげる。
「何か、行動を禁止して縛りを付けるんだ。今回は…依冬はオレに触れません。」
彼の鼻を指先で撫でながらオレがそう言うと、依冬は憮然とした表情になった。
「やだよ…そんなのエッチ出来ないじゃん…。」
「ただし、オレは、依冬を触れます。」
オレはそう言って依冬の首に掴まると、チュッと彼にキスをした。
「ワクワク…ふふ。」
依冬がニヤけた顔になって、ゴロンと仰向けに寝転がった。ふふ…縛りに満足した様子だ。
「じゃあ…絶対に触ったらダメだからね?触った時点で、試合終了だからね?」
オレはそう念を押して、依冬の体の上に跨って座る。
申し訳程度に巻かれた彼の腰のタオル。上に腰を下ろすと既に半勃ちした大きなものがあたった。
オレは依冬の綺麗な胸板を撫でて触る。
「依冬の胸板は…本当に美しいね。特にここが好きだよ。綺麗で、セクシーだ。」
体を屈めて彼の胸板を撫でながら、舌先で舐める。
ゆっくりと腰を動かして、彼のモノを股間で撫でながら、彼の胸に舌を這わせて、ねっとりとキスをする。
「あぁ…ふふ…シロ、可愛い…」
依冬は今の所、まんざらでも無さそうだよ?ふふ…
「あとね…ここも好きだよ…?鎖骨と首の所、美しくて…見惚れちゃう。」
彼に体を押し付けて、首すじまで顔を寄せると、耳の裏を舐めて耳たぶを食む。
依冬の股間がグンと反応して、腰がゆるゆると動き始めて、面白い…
オレは体を起こして、パジャマの上を脱いだ。
彼を見下ろしながら自分の乳首を撫でて立てると、また体ごと覆い被さっていく。
「シロ…触りたいな…?」
「ふふ…ダメだ。」
限界が早いのも若いせいだ…オレと1歳しか違わないけど…
依冬の耳たぶをチュパチュパ音を出して舐めて、彼の胸に素肌を掠めていく。
「あぁ…シロ…!」
彼の両肩に手を置いて、手のひらまで滑らせる。恋人繋ぎしてベッドに押し付ける。
猫みたいにペロペロと彼の唇を舐めて、もっとキスしようとする依冬をあざ笑う。
「ふふ…ダメな子だ…」
ベッドの端に掴まって背中をしならせて、依冬の目の前に自分の乳首を持って行く。
「依冬…舐めて…オレの舐めてよ…」
股間で彼の大きくなったモノを擦りながら、彼に乳首を舐めて貰う。
根元からこねる様に舐めまわす彼の舌に、体がゾクゾクしてくる。
「んん、依冬…気持ちい…」
「シロ…もう、もう我慢できない。押し倒したい…」
はは!まだだよ?
オレは依冬の体にべったりとくっ付いて、彼の顔を間近に見つめる。
「ふふ…だめ。」
意地悪にそう言って、彼の頬をねっとりと舐める。
依冬の目がギラギラして、ブラックホールみたいに黒く疼いて見える。
結城さんに似てる…
体を起こして、依冬を見つめながら教えてあげる。
「依冬?これはお前の躾でもあるんだよ?すぐに乱暴にするから…優しく丁寧なエッチが出来るように、教えてあげてるんだ。そうだろ?」
体の向きを変えて、所謂69の姿勢になる。
依冬の腰に巻かれたタオルを取って、彼の大きなモノを見つめる。
「こんなに大きいの…口の中に入るかな…?」
「シロ…シロのも触って良い?」
「だめ。」
即答で否定するの、楽しい…
ゆっくり手で扱きながら、トロトロの液が出た先っぽから舐めていく。
「あぁ…シロ。シロたん…」
やめろ…その呼び方をして良いのは子供までだぞ?
依冬は気持ちよさそうに足を伸ばすと、オレを掴んでしまいそうな手を空中でわななかせた。ふふ…
下から舐めたり、上をグリグリと舐めたりした後、ゆっくりと唇に当てて、口の中に沈めていく。
「ああ…シロ…」
気持ち良さそうな声を聞いて、だんだんと自分も興奮してくる。
オレの口に8割ぐらいまでしか収めることが出来ない彼のこれは、女の子に挿れる事が出来たのだろうか…
熱心に扱きながら、依冬の鼠径部を優しく撫でてあげる。
こんな所まで…綺麗だ。
「依冬?こんなに大きなおちんちんは女の子には入らないだろ?どうやってエッチしていたの?」
顔を下げてお腹の下から依冬を見つめると、首を傾げながら聞いた。
彼は紅潮した顔で、オレを見つめ返して言った。
「ん、入ったよ…」
嘘つけ。
でも、赤ちゃんだって出て来る所だもんな…伸縮するのかな…
首を傾げながら、ゲイ先生直伝の秘儀を使ってフェラチオする。
「ふぁっ!シロ…だめ、気持ち良い…!だめ、あぁ…イッちゃいそうだぁ!」
あはは!そんな声聞いた事無いよ?オレは笑いをこらえながら、依冬に言った。
「依冬…可愛い。お口に出して良いよ?」
舌を上手に使って、依冬のモノを秘儀でせめる。
「あぁっ!シロ…本当に、イッちゃうから…イッちゃうからぁ…!あっああ!」
喉の奥まで依冬の精液が来て、危うく鼻に入る所を、寸前で食い止める。
ヤバかった…つい夢中になって、奥まで入れて扱いちゃった…
そのまま飲み込んで、口端に垂れた彼の精液を手のひらで拭う。
同じ事をしてやる…
オレは日頃の恨みを晴らすように、依冬のモノを咥えると、また秘儀を使ってせめまくる。オレのビーストモードじゃ!抜きまくってやるっ!覚悟しろッ!
「シロ~~!触っても良いでしょ?も、もう…!触っても良いでしょ?」
限界ギリギリの依冬はギラついた瞳をしならせて、ヨレヨレになってそう言った。
なぁんだ?…可愛いじゃないか。ふふん…老犬か?
オレは体勢を変えて、依冬の足の間に入ると、優しい声で言った。
「依冬?いっぱい気持ち良くなって?オレが挿れてあげるからね?」
オレのその言葉に、ガバッと飛び起きると、オレを押し倒して首を横に振った。
「はい!1回反則!」
オレはそう言って依冬の頭を思いきり引っ叩く!
バシン!
あはは!楽しい!
「シロ…シロ…聞き間違いだよね?」
不安そうに眉毛を下げて依冬が縋りつく。
「なぁんで?桜二はさせてくれたよ?ふふ…そもそも両方付いてるんだ…挿し合いっこしたって構わないだろ?ん?」
オレはそんな嘘を吐いて依冬を虐める。
眉毛が下がりきって、依冬がクゥ~ン、クゥ~ンと何回も鳴きだす。ふふ!
「桜二が…え…きもいよ…え…嘘だろ。桜二が…えぇ…」
「オレのを気持ち良い!もっとして!シロ!大好き!って言ってたよ?大丈夫…初めは指で慣らしてあげるから…ね?良いだろ?」
オレはそう言って体を起こすと、首を横に振り続ける依冬を無視して、自分の指をしゃぶって濡らした。
依冬の表情が七変化して面白い!
「怖いの?ねぇ…怖いの?依冬?」
オレは彼の体にぺったりとくっ付いて、彼のすっかり元気の無くなったモノを通過して、お尻の方へと手を滑らしていく。
「シロ!」
依冬がそう言ってオレを掴むと、クルッと回転させてベッドに沈めた。
大きな体を乗せて動けない様にホールドすると、オレの顔を潤んだ瞳で見つめて来る。
「あぁ…依冬…反則を2回もしたね…次やったら、試合終了だ。そして、一生エッチしてやんない。」
オレはそう言って依冬の頭を思いきり引っ叩く。
バシン!
首もぐらつかせないで、依冬がオレを涙目で見つめる。
クゥ~ンクゥ~ンと鳴いて依冬がオレに縋りつく。
「仕方が無いな…じゃあお尻は勘弁してやるよ?まだ縛りプレイは続いてるからね?触ったらダメなんだからね?」
オレはそう言うと、パジャマのズボンを脱いでパンツ姿になる。
向かい合う様に据わって、足を広げると自分のモノをゆっくりとパンツの上から扱き始める。
「あっ…ん…んっ、あっ…はぁん…んっんっ」
依冬の目を見つめながらゆっくりとパンツを下げると、自分のモノを出して扱く。
腰が浮いて、ユラユラと動き始める。
「あぁ、あっ、んっ…んっ、んっ…」
目の前でギラついた目をした依冬がオレを見つめてる。
それに凄く興奮して…どんどんオレのモノが大きく硬くなっていく。
オレはトロンと潤んだ瞳で、自分の体をねっとりと指先で撫でていく。
乳首を指先で弄ると、体を仰け反らしていやらしく喘いだ。まるで、目の前の野獣を誘うみたいに、口からよだれを垂らして、快感に溺れていく。
「シロ…」
依冬が見守る中、オレは頭を真っ白にして彼の目の前でオナニーをする。
オレのモノからトロトロの液が溢れて出て、最高に気持ち良くなっていく。
こねる様に先っぽを弄って根元まで強く扱いて、ファックしてるみたいに腰を動かす。
「あぁ…イキそう!」
そう言って乳首を摘まんで乱暴にこねると、背中をビクビクと震わせながらベッドに倒れ込む。
依冬がオレの上に覆い被さって、オナニーするオレの顔を見下ろす。
自分のモノを扱きながら、オレのオナニーを見つめてる。
ふふ…エロい…
あぁ…依冬…イッちゃいそうだよ…
「あっ!あっああ!!イッちゃう…!あっああん!!」
オレはそう言って、依冬の目の前でイッた…
ふはは~!ざまあみろ~。や~い、や~い!
オレをオナホールの様に使おうとするから、お預けにされたんだ!
「シロ…こんなに興奮させて…どうするの?」
「ん?」
依冬はそう言うとオレの足を掴んで有無を言わさずに広げた。
オレは驚いて体を起こして、依冬の手を解こうと突っぱねる。
そんな事はお構いなしに、オレの足の間に体を入れて、イッたばかりのオレのモノを口に咥えて扱き始めた。
「ん~~っ!依冬!馬鹿!だめっ!だぁめ!」
彼の頭を掴んで引き剥がそうとするけど、グングンと強烈な快感がめぐって、体に力が入らなくなる…
オレは依冬の頭の上に顔を乗せると、彼の顔の動きに揺らされながら喘いだ。
「んんっ…依冬ぉ…イッちゃう…イッちゃうよ…だめ、だめぇ…ん!」
依冬の背中の筋肉が…美しくて…手のひらで優しく撫でる。
「こらぁ…だめって言ってるでしょ?…依冬!」
快感がどんどん強くなって依冬の頭から顔を起こして、体を仰け反らせていく。
腰がビクついて、依冬の口の中でオレは気持ち良くイカされる…
「依冬の馬鹿!せっかく楽しく遊んでたのに、すぐに本気になって!」
そんなオレの声も聞こえないみたいに、グルグルのブラックホールを目の奥に作った依冬が、オレの顔を覗き込んで貪るようなキスをする。
足の間に強引に入れた腕でオレの足を押さえつけながら、オレの中に指を入れて、強引なくらいに中を刺激し始めると、オレの太ももに自分の勃起したモノを擦り付ける様に腰を振った。
ビーストモードだ…子犬から狂犬になって、老犬になった後、野獣になった…
「はぁっはぁはぁ…ふっ…んん…ふあっ…ふっ…あぁあ…」
キスした口から呻き声とも喘ぎ声ともとれるような声を出して、執拗な彼の舌に翻弄されながら息苦しいキスをする。
「あぁ…シロ、我慢できないよ…」
そんな甘い声を出したって…お前が甘いどころか、激辛だって…オレは知ってるよ?
オレをうつ伏せにすると、腰を掴んで持ち上げる。そのまま自分のモノをオレの中に強引に沈めていく。
ギチギチとキツイ音を立てながら、無理やり入って来る彼のモノに悲鳴を上げる。
「ひゃああ!依冬ぉ…待って…待ってぇ!」
こうなると、息を吐いて筋肉を緩めるしかない…無茶すると切れてしまいそうなくらい、彼のモノは大きくて…無理やり入って来るんだ。
こんな大きなモノがあの小柄な女性に入る訳ないよ…
「はぁはぁ…はぁはぁ…ふぅ…」
お腹が苦しい…お尻が痛い…まだ何も動いていないのに息が上がる。
興奮した汗じゃなくて、冷や汗がオレの背中を流れて落ちていく。
「あぁ…シロ…気持ちいいね。可愛い。大好きだよ…」
オレの背中に覆い被さると、ゆっくりと腰を動かし始めた。そのストロークが長いのは彼のモノが大きいから…
「んんっ!依冬…もっとゆっくりして…苦しい…」
彼の体の下でオレは悲鳴を上げ続ける。
苦しさと快感が半々な…依冬のセックスの落し処…THE依冬スタイル。
笑えないよ…
「ぁああっ!んっ…!ひっ、んっ…依冬…奥、やだ…奥まで苦しいっ!あっ、あっ!」
体を捩ってオレに覆い被さる依冬を引っ叩いて制止する。でも、効果なんてゼロだ。
「シロ…かわいい…もう我慢できないよ…シロ、シロ…愛してる…」
「あっ、あっ、んんっ…依冬!イッちゃう!オレ、イッちゃう!」
オレの中で依冬が激しくひと暴れして、熱い精液を吐き出した。オレは彼の後を追う様にイッてしまった。
「退いて…」
オレはそう言って、背中に乗ったままの依冬を退かすと、うつ伏せて果てた依冬のお尻を見つめる…。
逆襲してやる!!
オレはお尻からダラダラと彼の精液を垂れ流しながら、依冬の背後に回って彼のお尻に自分のモノをあてた。
「やめて!」
女の子みたいな声を出して、依冬が暴れ始める。
オレは彼のお尻に自分のモノを押し込もうと頑張る。
「なぁんで!全然入らないよ!」
オレはそう言って彼のお尻のほっぺをペチペチと叩いた。
力を入れられた彼のお尻のほっぺに阻まれて…中に挿入する事を諦めた。
「でも、オレは知ってる…お尻のほっぺに挟んでやってみれば良いんだ。」
ドントギブアップ!ネバーギブアップ!
オレは依冬の上に覆い被さると、彼のお尻の割れ目に自分のモノを挟んで、ゆるゆると腰を動かし始めた。
「やめて!」
依冬がそう言って悲鳴を上げてるけど、オレは気にしないで腰を振った。
筋肉でしまった依冬のお尻はキュッとしまって気持ちいい。
「あぁ…依冬、お尻気持ち良いよ…?うんとキツイね…プリプリじゃないか。はは!」
上機嫌で依冬を背後からファックしてやる。
「いや!やめて!」
俺だって付いてるんだよ?良いじゃないか…?そうだろ?
どんどん硬くなっていくオレのモノを彼のお尻のほっぺの間に挟んで擦りまくる。
「依冬ちゃ~ん、気持ち良いよ~!あっ…イッちゃいそうだ!」
オレはそう言いながら依冬のお尻に射精した。
「シロ!シロ!」
「あ~ははは!気持ち良かったよ?依冬のお尻、気持ち良かったよ?」
トロけた目でそう言うと、依冬はジト目を止めてオレに甘いキスをした。
「今度は俺にさせて…?」
マジか…
「嫌だ。」
オレはそう言って、浴室へ逃げて行く。
毎日、毎日、飽きずにエッチばかりして…オレは辟易しているんだから!
愛してる。愛してるけど、これは違う。拒否するのは愛してない訳じゃない。
体がもたないんだ!
ダンスの練習が出来なくなるんだ!
浴室の中で依冬に掴まって、結局その後も気持ち良くイカされた…
桜二のお見舞いに行った帰りに公園でダンスの練習をして、そのまま仕事へ向かう。そして、夜は依冬に激しくせめられ続ける生活を1か月過ごした。
朝ご飯は食パンから調理パンに進化して、夕飯は外食からテイクアウトに変化した。オレの洗濯物は相変わらず毎日洗濯機をまわって更新されて、依冬の洗濯物は放ったらかしのまんま、定期的にクリーニングに出されるスーツと一緒にいつの間にか消えていた。
依冬はすっかりオレに甘えんぼになって、オレは彼の性癖に翻弄されつつも、デレデレと甘える依冬に鼻の下を伸ばした。
そして、とうとう桜二が退院する日を迎える。
やっと…やっとだ…
「桜二、やっと帰れるね?お部屋に帰ろう?」
沢山の荷物を依冬に持ってもらって、オレは桜二の隣に立つと彼の腕を支えてあげる。
病院の先生が見送る中、自分で立って帰られるなんて…!!
「桜二~!やっとだ!嬉しい!」
オレは堪らず彼の隣ではしゃいで回った。
「シロ君。まだ安静が必要だから…あまり無茶な事はしたらダメよ?」
看護師さんがそう言ってオレに言い聞かせる。
「薬はちゃんと飲ませてね?あと、自分の事は自分でするのよ?この前、自動販売機のジュースを買わせに行っていたでしょ?ああいう事は自分でおやりなさい。」
オレは看護師さんを見つめて首を傾げた。
「オレは言ってないよ?桜二が自分で行くって言ったんだよ?だからお願いしたんだ。」
「傷が開いたらまた入院だよ?嫌でしょ?」
念を押されて頷いて答える。
ちぇっ!
依冬の運転する車の後部座席に桜二を乗せて、オレは隣に座った。
我慢出来なくて、桜二の体にもたれかかって甘ったれる。
退院するまで1か月もかかった…
表面からは見えない部分の傷が酷かったみたいだ。内臓を傷付ける傷や血管を切ってしまった部分の治りを待っての退院だ。
まだ完全に回復した訳じゃないけど、徐々に体を動かして元の生活に戻していくんだって…
「桜二~?キスして~?」
オレはそう言って、桜二にべったりとくっ付いて彼の鼻をペロペロなめる。
「ふふ…良いよ。もうちょっと口を下に向けて?」
「ん、やぁだ。」
「ふふ…なぁんで?」
「やぁなのぉ。」
オレは桜二の首に両腕を回して、彼とおでこを付けると、腰をユラユラさせて甘ったれる。
「車出すよ?」
そう言って依冬が車を急発進させた。
「おっと!危ないだろ?依冬~!」
オレの体がよろけたのを、桜二はすかさず手で支えて、守ってくれた…
「ふふ…桜二ったら、オレの事…守ってくれたの?ねぇ…オレの事守ってくれたの?」
そうして、さっきの続きを繰り返す。
「あぁ…桜二の舌オレの舌に絡まって来てるよ?ふふ…エッチだね?だめだよ?そんな事したら、逮捕して貰わないとダメなんだよ?」
「ふふ…良いよ?シロに逮捕されても良いよ?」
「もうすぐ着くよ~。」
依冬がそう言って、左に思いきりハンドルを切る。
「あぁっ!危ないだろ?依冬は若いから運転が荒いんだ…。ごめんね?桜二…。でもいつもはとっても良い子なんだよ?笑顔が可愛くて、子犬みたいにクゥ~ンて泣くんだ。でも、最近はもっと可愛くなったんだよ?オレに甘えんぼなんだ。良いだろ?」
オレはそう言って依冬の頭をナデナデして、髪にキスした。
「シロ、俺もシロに甘えんぼだよ?」
桜二がそう言ってオレの体を自分に抱き寄せた。
「ふふ…桜二は甘えんぼじゃないだろ?桜二は…きかんぼだ!」
オレがそう言うと、運転中の依冬が大笑いして、桜二が、納得出来ない。と呟いた。
桜二の部屋に久しぶりに戻ってきた!
オレは急いでベッドの下の“宝箱”を手に取ると、ソファに腰かける桜二に飛びついた。
「イテテ…」
「あぁ!兄ちゃんの写真…久しぶりに見た…」
オレはそう言って桜二の体にもたれかかる。
「イテテ…」
「見て?かっこいいでしょ?オレの兄ちゃんが一番かっこいいでしょ?」
写真を手に取って、少しだけ微笑む兄ちゃんを見つめる。
兄ちゃん…兄ちゃん…会いたいよ…。
急に寂しくなって、桜二の首にしがみ付いてシクシクと泣き始める。
「イテテ…」
「もう!なんだ!何ですぐにそう言うの!流行ってないよ?そんなの巷じゃ流行ってないよ?」
オレは桜二がイテテ…と言うのが嫌だった。
兄ちゃんの為に溜めた涙を桜二に向けて文句を言う。桜二は困った顔をしてオレを見上げる。そんなオレを見て依冬が言った。
「シロ、その人は、怪我してるんだよ?」
そんなの…知ってる。
知ってるもん…
「ベッドで横になってた方が良いよ。」
依冬がそう言って桜二を寝室に連れて行った。
寝室からもイテテ…と聞こえて、オレは怒って大きな声で言った。
「そんなの、巷じゃ流行ってないんだ!」
「シ~ロッ!」
寝室から依冬が怒った声が聞こえる。
…でも、オレは悪くない。
流行ってないのをしつこく言う桜二がいけないんだ…
トボトボと寝室の入り口に行って、病院に居た時と同じ様にベッドに横になる桜二を見つめる。
「シロ…おいで?」
そう言って手を伸ばす桜二をじっと見るだけで、近くには行かない。
だって…オレが近づくと、桜二はまた言うもん…イテテって言うもん…
「何で行ってあげないの?桜二に会いたかったんでしょ?嬉しかったんでしょ?ほんと、分かんないな…そういう所。」
呆れた様に依冬がそう言って、オレの体を抱きしめると髪にキスをしてリビングへと行ってしまう。
オレはじっと寝室の入り口でこっちを見つめる桜二を見つめてる。
「どうしたの?シロ…いじけたの?」
そうだ…オレはいじけた。
眉毛を下げてオレにおいでおいでする桜二を睨みつける。
「なぁんでそんな顔するの…おいで?」
行かない…
「フン!」
オレはそう言ってリュックを掴むと、依冬に怒鳴って言った。
「レッスンに行ってくる!」
「送るよ?」
「良い!」
「なぁんだよ…」
そう言って追いかけてくる依冬を無視して、玄関のドアをバタンと締めると、ドカドカ足音を鳴らしてエレベーターへ向かう。
もっと…もっと甘えたかったんだ…!
なのに、桜二がすぐイテテって言うから…甘えられなかった。
それが嫌だった…欲求不満なんだ…
兄ちゃん…シロはわがままだよね。桜二は死にかけたんだよ?それなのに、ほんのちょっとの我慢も出来ないで…優しく出来ないなんて…
エレベーターの中、下を向いて俯いたままポロリと涙を落とす。
人通りの多い道を抜けて、タクシーを停めると新宿のスタジオまで向かった。
桜二、あんな困った顔して…可哀想だったな。
後悔は後になってやって来るんだ。
「シロ。彼氏退院するんだよね?良かったね?心配したでしょ?」
陽介先生はそう言うとオレをギュッと抱きしめて振り回した。
「…うん、ありがとう。もう退院したんだ…」
シュンと落ち込んで背中を丸めるオレに、陽介先生が顔を覗き込むように体を屈めて聞いて来た。
「何か…あったの?」
こんな事、ダンスの先生に話す話でもないのに、堪えていた気持ちが込み上げてきて、我慢できなくて話し始める。
「…うっうう…オレがわがままで…桜二に酷い態度取っちゃったぁ…自分の事ばっかり言ってぇ、困らせちゃったぁ~っ!うわぁん!うわぁん!!」
ボロボロと涙を落として泣くオレに、陽介先生は呆然とした顔をしたかと思ったら、頬を赤くして嬉しそうな顔をして抱きしめてくれた。
「シロ…大丈夫だよ…?」
優しくそう言って背中をさすってもらうと、グスグス言いながら陽介先生に甘ったれて胸に顔を擦り付けながら言った。
「退院が…嬉しかったのに…前みたいに甘えられないのが悲しかったの…。酷いよね…わがままだよね…こんなの…ううっううう…嫌われちゃうよね…グスン、グスン」
「あぁ…シロ、可愛いな…天使だな。あのね?そんな事で嫌いになったりなんてしないよ?何でそうしちゃったのか、理由を今みたいに話したら良いじゃないの。ね?ね?」
こんな生徒のプライベートまで相談に乗ってくれるなんて…陽介先生は懐の深い男なんだ…。申し訳ない気持ちでいっぱいだよ…
「うん…そうする。ごめんね?こんな話の…グスン、相手なんてさせちゃって…」
目を擦って涙を拭くと、陽介先生を見上げてそう言って、グスグスと鼻をすすった。
「…おぅ。」
陽介先生はそう言って、オレの頬をそっと撫でた。
「練習お願いします…時間の無駄使いしちゃった…」
気持ちを切り替えてオレはスタジオの隅に行くと靴を履き替えた。
意識して練習時間を取る様にして、毎日欠かさず躍り込んでいるから、体が鈍いと感じる心配は無くなった。でも、細かい重心移動や次のステップへの体の流し方など、自分だけでは気が付けない癖や、バランスの悪さが目に付くようになってきた。
もっとスムーズに…まるで一本の糸のように、繋がったダンスが踊りたい。
その為にも何度も同じ曲を踊り込んで、修正していく必要があるんだ。
「おお、今の良いね…」
陽介先生の前で何度も踊り込んでいく。褒めて貰った所は意識して、注意が入った所をしっかりと修正して体に叩き込んでいく。
オレの望む形に仕上がって来ている…
このまま納得のいく形まで持っていけたら…やっとオーディションを受ける甲斐が出てくるってもんだ。
最後の仕上げ…今はそんな細かい平行線をちょっとずつ上がって行く時期なんだ。
ひたすらずっと踊り続けて、今日のレッスンが終わった。
陽介先生がトコトコと歩いて近づいて来る。こういう時は大抵いつものお誘いが来るんだ。オレは陽介先生を見ながら彼が話し始めるのを待った。
「シロたん。お昼ランチ行ける?」
ほらね?ふふ…
毎回断られるのに、いつも同じように首を傾げながら誘ってくる。
「うん、良いよ。」
変な愚痴も聞いてもらったし、断れないよ。
スタジオの隅に行って汗だくのTシャツを脱ぐとタオルで体を拭いた。新しいTシャツを手に取って袖に手を通すと、俯いた視線の先に陽介先生の足が見えて、顔を上げる。
目の前の陽介先生はおもむろに膝をつくと、オレの肩を優しく押して床に押し倒した。そのまま体の上に覆い被さってオレを見下ろした。
あ…なんだ…
「シロ…好きなんだ。」
陽介先生がうっとりとオレを見つめて首元に顔を沈み込ませる。
「あ…ああ…!ダメ!ダメだよ先生!オレ…先生とそんな風になりたくないよ。尊敬してるから…やめて…」
陽介先生の肩を押し返して、足をばたつかせる。
こんな事になるなんて…想定外だ。
依冬や桜二に言ったら、絶対シロが煽るからいけないんだと言われるヤツだ…。
「…俺の事、尊敬してるの?」
首元に顔を埋めたまま陽介先生が尋ねて来た。
そうだ。そうだよ?こんな関係になって、そんな気持ちを失いたくないんだ!
「うん。先生のダンスが好きだよ?あと、明るくてかっこいい所も好きだよ?でも…」
「彼氏にはなれないんだな…」
そう言いながら顔を上げてオレを見下ろす彼は…いつものふざけたあの人じゃない。
細めた目は彼の垂れ目をより魅力的にみせる。意外なイケメンの顔を覗かせる陽介先生に、吹き出して笑った。
「ぷっ!…先生って…意外とイケメンだったんだね…?」
オレがそう言って笑うと、陽介先生は見た事もない笑顔をオレに向けて言った。
「諦めるよ。諦めるから…一回だけ、キスさせて?」
え…ええ…えっと、どうしたら良いんだ…こういう場合の答え方は…?
目を泳がせて思考を巡らせ続けるオレに、陽介先生は容赦なくキスをした。
「んっ…ふっ…ん、んっ…はぁっ…せんせ…まって…」
両手で陽介先生の肩を押し返すけど、全然びくともしないでオレに覆い被さって来る。
舌の絡まるキスをして頭の中がジンジン痺れて来る。肩を押していた両手で、いつの間にか先生の首を抱えると、もっとしたいと自分からキスを貰いに行く。
たまに漏れるキスの音がいやらしくて、オレの髪を撫でる彼の手がいやらしくて、その気になるのをグッと堪えながら、キスをした。
糸を引いて唇を離すと、トロンとトロけた瞳でオレを見つめて来る。紅潮した頬が…息遣いが…いちいちエロくて…クラクラしてくる。
「せんせ…ビックリした…」
こんな顔をするなんて…反則だ!今まで見た事もない大人の表情を見せて、陽介先生がオレの唇を指で撫でて微笑んだ。
ギャップ…ギャップ萌えだ…!振り幅が凄いんだ。
陽介先生は体を起こすと、何も言わないで、スタジオの後片付けを始めた。
は?!何これ…すごくドキドキしてる自分がいる!!
オレは体を起こして袖に通し済みのTシャツを着る。動揺してるのか、ドクドクと鼓動する音が胸の中から聞こえて来る。
フワフワした頭のまま着替えを済ませると、リュックを手に持って、窓の外を眺めている彼に声を掛ける。
「…陽介先生?ご飯行こう?」
「わ~い!シロたんとご飯だ!」
そう言って振り返った彼はいつものふざけた陽気な陽介先生だった。
この人の彼女になる人が羨ましい…この振り幅は、魅力的だ。
断った事を後悔した…?そうだね…この人はとっても魅力的だ。
でも、オレにはもったいない。
これで良いんだ。
きっと、これで良かったんだ…
「じゃあ、陽介先生?MJだったら何が好き?」
「スムクリも良いし…ビリージーンの最初は未だに痺れるねぇ~!」
「分かる~!かっこ良いんだよね?んふふ!」
お洒落なカフェテラスで陽介先生とランチを食べながら、好きな音楽やダンスの話で盛り上がる。ここは彼のお友達のお店。厳つい店員さんが狭い店内を真面目に働いている。ふふ…
オレの目の前でずっとラッパーの物まねをして見せる彼に、涙を流して大笑いする。
「もうやめて…!アハハ…その曲で、踊れなくなるから…!オレのストリップのレパートリーに入ってるんだよ?思い出して笑っちゃうよ?踊れなくなっちゃうから、もうダメ。」
オレがそう言ってやめさせようとしても、陽介先生はもっと誇張して物まねを続ける。オレのレパートリーが1つ潰された。こんなの、面白くて思い出し笑いしちゃうもん…しばらく封印するしかない…ふふ
さっきあんな事をした癖に、目の前の彼はいつも通りの陽気な先生だ。
もしかしたら、オレが思っていたよりもこの人は大人なのかもしれない。入り辛いうちの店にも、平気な顔して1人で来るし…
生徒のオレには“ダンスの先生”という一面しか、見せていないだけなのかもしれない。底知れぬチャームマスタ―だ。
ランチを終えて、先生と一緒に大通りへと歩き出す。
「彼氏とちゃんと話せると良いね…シロ。」
そう言って陽介先生がオレの手を握ってきた。
ドキドキの治まった胸が再び激しく鼓動を鳴らす。少女漫画で言う…ドキン!てなる瞬間だ。この人がこんなにさり気なく触る人だとは思わなかった。
「うん…そうだね。オレは素直じゃないから…いつもヘマするんだ~。」
握られた手をギュッと変な意味無くにぎり返して、先生の目の前にかざすと、ふざけてそのまま一回転回ってみせる。
ギュッと後ろから体を抱かれて動きが止まる。
「シロはヘマなんてしないよ…素直じゃない訳でも無いよ?」
オレの耳元で陽介先生がそう囁いて、彼の熱が冷めていない事を実感する。
先生が…ゲイになって、オレに求愛している。
それも、とても魅力的に…
流されて行きそうな自分に喝を入れて、手を上げてタクシーを停めた。
「先生、またね~?」
オレは逃げる様にタクシーに乗り込んで行き先を告げた。
窓の外に手を振って、ロマンチックな彼と物理的距離を取った。
ヤバい…まずい…これは、この事態は…冗談にもならないよ?
桜二に言ったらシロのせいだって言われる…依冬に言ったら、シロのせいだって…言われる。
オレが煽ったせいで…陽介先生がゲイになってしまった。
タクシーの中で、陽介先生が握った手のひらを見つめて、ぼんやりと眺める。
あの人が…あんなにセクシーな雰囲気を醸し出すなんて…思わなかった。
六本木ヒルズに着いて、桜二の寝てる部屋に帰ってきた。
玄関を開くと室内はしんと静まり返っている。依冬の姿も見当たらない…。
リュックから洗濯物を取り出すと洗濯機に入れて、シャワーを浴びた。
あぁ…桜二は寝てるかな?それとも、イテテって言って、まだ起きてるのかな…
どう謝ろうか…
部屋着に着替えて、そっと寝室の入り口から顔を少しだけ覗かせて桜二を見る。
彼はすやすやと眠っている様子だ。
ゆっくりベッドに近付いて無防備に眠る彼の顔を覗き込む。
こんなにぐっすり寝てる姿を見た事が無いかもしれない。それは意識不明で目を瞑っていた時と同じように、全く起きそうにないくらい熟睡した無防備な表情だ。
「桜二?オレは、わがままだった?」
「いいや…」
答えなんて求めていなかった問いに、思わぬ答えが返ってきて、驚いて彼の顔を見た。薄目を開けて微笑む桜二はオレの頬に手を置くと、優しく撫でて言った。
「シロ…ごめんね。こんなんじゃ嫌だろ?歯痒いね…ごめんよ。」
「ううん…退院したのが嬉しくて、前みたいに甘えたくなってしまったの…怪我して弱ってるのに、酷いよね…。自分の事しか考えられなかった…可哀想な桜二。ごめんね。」
オレはそう言って彼の手を握ると、一緒にベッドに横になって添い寝した。
「桜二…そのうちよくなる?」
「ふふ、良くなるよ?」
「抱っこ出来るようになる?」
「なるよ。だから…捨てないで。」
捨てたりしないよ…だって、兄ちゃんだもん。
「…考えとく…」
意地悪くそう言って桜二の体にくっ付くと、彼の胸に手を置いて優しく撫でた。オレの言葉に彼の笑い声が聞こえたけど、オレは一緒には笑わないよ。
だって、弱ってる桜二がつまらないのは…変わらないんもん。
「先生は元気だった?」
「先生?…素敵だった。」
オレがそう言うと、桜二が体を揺らして笑った。そんな彼の顔を覗き込んでオレは教えてあげた。
「オレ、先生に求愛されちゃった。しかも、めちゃめちゃセクシーにだよ?桜二がこのままポンコツなら、先生とイチャイチャした方が楽しそうだ。ねぇ…そう思わない?」
オレの目を見つめる桜二の目が固まって、フッと吹き出して笑って言った。
「あぁ…シロ。シロはまだ、いじけてるのか…」
桜二はそう言ってオレの頭を抱き寄せると、体全体を使ってオレの体を全て抱きかかえた。オレは抵抗もしないでされるがままに包まれて彼を見つめる。そして、無表情を作って彼に言ってやった。
「いじけて無いよ?つまらないからそう言ってるんだ。だってすぐにイテテって言うんだもん。つまらないだろ?」
「あ~、そうだね。つまらないかもしれない。でも、あの先生なんて…きっと、もっと、つまらないだろうな…」
桜二はそう言うとオレを体の下に抱き抱えて、チュッチュッと唇に何度もキスをしてきた。それが、軽いキスだったり、舌を這わせたり、少し舌が入ったりと…色んなキスをしてくるから、面白くて彼の顔を見ながらクスクスと笑った。
「機嫌直して…俺の可愛いシロ。もう言わないよ。イテテなんて、もう言わないから。ね?ご機嫌直して?」
優しく笑う彼の目に見つめられて、オレはしばらく考えるふりをする。
「ん~…どうかな…」
「ふふ…俺はシロの為に何でも出来るよ?」
「嘘だ。すぐにイテテって言うくせに…嫌いだ。桜二なんて嫌い。」
「言わないよ。もう二度と言わないから…許して。シロ…愛してるんだ。ね?お願いだよ…俺を許して…」
オレの唇に優しくて甘いキスをして、桜二が微笑みかけて来る。彼の額に脂汗が滲んで見えても…オレは彼を見つめたまま答えを出さないで笑いかける。
「…考えとくよ。」
オレはそう言って彼の体の下から抜け出して、横になって眠る。
呼吸を一旦整えてから、桜二がオレの体を後ろから抱きしめて横になった。
痛いんだろうな…ふふ。でもオレは知らない。桜二が勝手にやってる事だもん。
「もっとギュッとして…」
オレはそう言って背中の桜二に注文を付けて甘える。
「はいはい…」
桜二がそう言って、オレの体をギュッと抱きしめてくれる。
髪にキスして、強く抱きしめて、どこにも行かない様に絞めつけて来る彼の腕に、そっと手を置いて優しく撫でる。
背中があったかくなって、そのまま一緒に眠ってしまう。
怪我の治りきっていない弱った桜二を、虐めた。
「シロ…シロ起きて?」
うっすらと目を開くと目の前にスーツ姿の依冬が居た。
部屋の中は薄暗くなっていて、日が傾いた事が分かった。
手を伸ばして彼の髪を撫でて、にっこり笑うと、そっと目を閉じる。
「寝ないでって…全く。仕方ないな…」
オレと桜二の間に腕を突っ込んで引き剥がすと、よいしょと抱き抱えてリビングまで連れて行く。
「何だかんだ仲良く寝てるじゃないか…よく分からないな…そういう所。」
そんなボヤキを彼の肩の上で聞きながら、クスクス笑って足を揺らした。
オレをソファに降ろして、目の前のテレビを付けると隣に座って指を差した。
「ほら、これ見て?」
テレビ画面を見ると、そこにはオレを襲った連れ去りレイプ犯2人組みが警察署に連行されていく姿が映し出されていた。あの時よりも、だいぶしょぼくれた様に見えるのは、メンテナンスを怠っているせいなのか…?それとも、依冬の与えたダメージがでかすぎて…人相が変わっちゃったのかな…こわ。
「逮捕されたの?」
依冬の顔を覗き込んでそう尋ねると、彼はテレビを見つめたまま頷いて言った。
「そうだね…逮捕されたみたいだ。これから裁判をして刑を決めるんだ。支配人さんが訴えた裁判もあるし、余罪もあるみたいだから…実刑は免れないよ。ねぇ、シロ?あいつらの会社…うちの子会社だったんだ。」
苦々しい表情をしてオレを見つめると、依冬は涙を落としてオレに謝った。
「シロ…ごめんね。親父が…親父が絡んでいたみたいなんだ。シロの連れ去り事件に…親父が絡んでいたみたいなんだ…。本当に…申し訳ない。」
知ってたよ?依冬…
それに…お前が謝る事じゃない。
「…知ってたよ。刑事さんから聞いた。桜二はそれを知って、結城さんを煽ったんだ。そして、彼に刺された…。でもね、どうして刺されたのか…それがまだ分からないんだ。何を言ったのか桜二に聞いても、答えてくれなかった。依冬はどうしてか…知ってる?」
彼の腕にもたれてそう聞くと、依冬はシュンと黙ってしまった。
知ってるけど…オレに言えない事、なんだな…。多分。
「依冬?謝らなくて良い事を謝るのはお前の悪い癖だよ?お前が襲わせたわけじゃないんだ。謝る必要はない。…そうだろ?」
オレがそう言うと、依冬は眉毛を下げてクゥ~ンと鳴いた。
21:00 時計を見て驚いた。15:00位に戻って来て、16:00位から寝たとしても、こんな時間まで寝てしまうなんて!
久しぶりに桜二の隣で寝たから…安心して、ぐっすりと眠ってしまったみたいだ。
「シロ、一緒に夜ご飯、食べよう?買ってきたんだよ?」
ダイニングテーブルに沢山置かれたテイクアウトの袋を指さすと、オレの背中にくっ付きながらえっちらおっちらと歩いて行く。
「依冬?桜二は何か食べるかな?」
背中の彼に尋ねると、依冬は首を傾げて言った。
「良いんだよ。適当で。」
ダイニングテーブルに腰かけて、依冬が買ってきたテイクアウトを次々と袋から出していく。
「プリンと…スープちょうだい?」
オレはそう言って自分の前に置いてもらう。
依冬はガパオライスと、唐揚げ…、春雨サラダに、キンパ…そして、プリン。明らかに食べ過ぎだ。この中の1つでも桜二に食べさせてあげたい所だけど…
桜二にはもっと栄養のある物が必要なんだよ。
オレはキッチンに行くと包丁が入ってる扉を開いて中を覗いて見た。何か食べ物は入ってないかな?栄養になる物は…入って無いかな?
依冬はそんなオレを無視して、携帯を見ながらご飯を食べ続ける。
カタッと音がして、奥の方で何かが落ちた音がした。手を伸ばして手探りで探すと、指先に触れる硬い物を摘まんで持ち上げる。
初めて実物を見た…これはカセットの入ったカセットレコーダーだ…
血が、付いてる。
これは多分、桜二の血だ…
あの日、これを触っていた事になる。そうだろ?
それをわざわざこんな所に入れたんだ…隠したい事がこの中に入っているに違いない。
「何かあったの?」
首を伸ばして依冬が聞いて来るから、オレはそれをポケットに隠して首を振って答えた。
「何もなかったぁ…桜二にはプリンをあげよう?どう思う?依冬?」
依冬はどうして結城さんが桜二を刺したのか…察しが付くみたいだった。そして、桜二同様、それはオレには言えない事の様だ。だから、この血の付いたカセットレコーダーの事は黙っておくよ。だって、オレはどうして桜二が刺されたのか…知りたいんだ。そして、結城さんが言った…“桜二が湊を誑かした”その言葉の意味も、知りたいんだ。
「適当で良いよ…適当に、水とか飲んでおけば良いんだよ…」
依冬のその言葉に、オレは水をコップに入れて寝室に持って行く。
途中、自分のリュックにカセットレコーダーを隠して、チャックを閉じた。
「桜二?お腹空かないの?」
ベッドに乗って、スヤスヤ眠ったままの彼の胸を撫でる。
うっすらと目を開いてオレを見つめると、にっこりと微笑んで手を伸ばした。
「もう夜の9時だよ?三年寝たろうになっちゃうよ?」
彼の手を握って優しく撫でると、首を傾げてそう言った。クスクス笑いながら、目を細めて桜二が言った。
「ふふ…ほんと?シロの隣で寝たから、ぐっすり寝ちゃったみたいだ…」
可愛い…
オレは彼の隣に座ってお水を差し出した。
「水飲んで?」
オレの言葉に体を起こしてコップを受け取ると、ゴクゴクと喉を鳴らしてお水を一気飲みする。そのままオレにキスして桜二が笑って言う。
「優しいね…シロはお水まで持って来てくれるんだ…」
「夜の分のお薬、まだ飲んでないよ?先生が、何か食べてから飲んでって言っていた。プリンならあるよ?プリン…食べる?」
桜二の返事も聞かないままベッドを降りるとリビングに戻った。プリンとスプーンを手に持って、お水を新しくコップに入れると、クスリの袋を抱えて寝室に戻った。
ベッドの上に上がって桜二の隣に座り込む。薬の袋を彼に渡して、プリンの蓋を開けてあげる。
「はい、あ~ん?」
「ふふ…可愛い…」
あ~ん、と言って一緒に開いてしまうオレの唇を指で撫でながら、桜二がプリンをパクリと食べた。とっても穏やかな顔で、オレの差し出すプリンを食べるんだもん。死にかけていた事なんて…忘れてしまいそうだよ。
「シロも食べてごらん?美味しいよ?」
桜二がそう言ってオレの口にプリンを運ぶ。
「あ~んして?」
桜二がそう言って、オレのだらしなく開いた口にプリンを入れて微笑む。
そのままチュッとキスして、舌の入る甘いプリンのキスをする。
「このまま抱いてしまいたいよ…可愛い俺のシロ…」
「薬を飲んで?」
オレは塩対応して彼が手に持った薬の袋をゴソゴソと探った。
「こっちにおいで?」
そう言ってオレの体を抱き寄せる彼に、お水と薬を手渡す。
「桜二?これを飲んで、そして、また寝るんだ。」
きちんと世話してやらないと…怪我が治らない。怪我が治らないと…甘えられない。
甘えられないと…耐えられない!
これ以上、この欲求不満を抱えたまま生活するのは無理だ!
「え…さっき沢山寝たから、眠くないよ…」
「寝たら良くなるって昔の人が言っていた。はい。おトイレは?ない?じゃあ寝て!」
オレは有無を言わさずに桜二をベッドに押し倒した。
「一緒に寝てよ…?」
そんな甘ったれた声を出して、桜二がオレの腕をナデナデする…
「かわい…」
彼の唇にチュッとキスしてチュッチュッと何度もキスする。
あぁ…このまま襲い掛かりたい…!
でも、無茶したら傷が開いて…また入院する事になるって、脅されたんだ。
「寝て!」
オレはそう言うと、ベッドから降りて寂しがる桜二を無視してリビングへ戻った。
「シロも何か食べて…倒れちゃうよ?」
「オレはね、夜は食べないんだよ?いつも仕事してるときはビールしか飲んでない。だけど、倒れたことなんて無いよ?ふふん!」
ダイニングテーブルに戻ると、依冬は自分のプリンをオレにくれた。彼はどうやら全て食べ尽くしてしまった様だ。太ってる訳でも無いのに、こんなに食べるなんて、凄い燃費が悪い体だ。
スープを温めて貰ってる間、プリンを食べて依冬の顔を見つめる。
「薬飲んだ?」
「飲んだ。」
「シロも、もう眠たそうだね…」
温めたスープを飲みながら依冬の顔を見つめて笑う。さっきまで爆睡してたのに、もう眠たくなって来てるんだもん…笑っちゃうよね。
「うん…眠い…」
オレはそう言って、依冬に抱きついて甘える。あったかくてよろけない依冬の体。
「一緒にお家に帰る?」
「ふふ…ダメだよ。朝、桜二に薬を飲ませなきゃダメなんだ。早く治して元気になって貰わないと、オレが持たないよ…」
彼が目の前に居るのに、あの、甘くて濃厚で、最高にトロける魅惑のエッチが出来ないんだ。もう1か月も我慢してる…これ以上は気が狂っちゃうよ。
スリスリと依冬の肩に顔を擦り付けて甘ったれる。
「じゃあ…明日の朝、仕事前にまた来るよ?」
玄関まで彼を見送って、寂しそうに帰って行く彼を見つめる。
「クゥ~ン…」
そう小さく呟いて1人でクスクスと笑った。
歯を磨いて、部屋の電気を消すと、桜二の眠るベッドに戻る。
「わぁ…シロ、お帰り…!」
なんだ、起きてたのか…
桜二はオレの体を後ろから抱きしめて、ホクホクと喜びの声を上げてる。妙に触れたがるけど、興奮したって内臓が破裂する恐れのある男なんかとセックスなんてしないもん。
「シロ?依冬は帰ったの?」
「うん…明日また来るって…」
オレの体を抱きしめる桜二の腕を撫でながら、ぼんやりする。
オナニーしたい…
今ここでオナニーしたい…
桜二に気付かれない様に、そっと自分のモノを撫でると、腰がビクッと跳ねた。
「シロ…?」
もう気付かれたの?オレは素知らぬ顔で桜二を振り返って言った。
「な、なぁに?」
「今日はね、移動するからって強めのお薬を点滴したんだ。だから眠たかったけど、明日からは普通に過ごせるよ?」
そうなんだ…
桜二の声が頭の上から聞こえて気持ちいい…彼の胸に頬を付けて、頬ずりしながら自分のモノを撫でる。
あぁ…気持ちいい…このまま抜きたい。
「シロ?俺がやったらダメなの?」
いつの間にか彼の胸に荒い息を漏らして、顔を擦り付けながらオナニーに没頭し始める。ダメだぁ…気持ち良くて止まらない。
「して…桜二がして…」
腰が震えて、オレはもうすぐにイッちゃいそうだ…
桜二はオレに後ろから覆い被さると、愛おしそうに口元を緩めてキスをする。濃厚で熱い彼の舌がオレの舌を絡めて吸い上げると、頭の芯がジンジンして、体中が喜ぶ。彼の手がオレのモノを握り込んで、いやらしく動き始めると、キスした口端から喘ぎ声を漏らして感じまくる。
「ふっ…んん…あっ…ああん…桜二、桜二…!イッちゃう…イッちゃうの…もうダメなの…我慢できない…あっああん!」
彼の体に自分の体を押し付けて、腰を震わせてあっという間にイッてしまった…
「可愛い…もっとしよう?」
嬉々としてそう話す桜二を振り返って、彼の唇にキスをする。
そのまま彼の大きくなったモノをパンツから取り出して、同じように扱いてあげる。荒くなっていく彼の息を口の中に入れて、全部飲み込んでいく。
オレの桜二…オレの兄ちゃん…愛してる。
口が外れそうになっても、執拗に彼にキスをして、舌を絡め続ける。
絶対に離さないよ…オレの可愛い桜二様…
呻き声を上げて桜二がイクと、彼の顔を見つめて笑う。
「桜二…可愛いね…愛してるよ。」
そう言って甘くてトロけたキスをした。
もう少しだけ我慢したら、きっと気持ち良くセックスが出来るんだ…
綺麗に手を拭いてあげて、自分の手のひらも綺麗に拭いた。そして抱き合う様にして眠る。足を絡めて、一つになったみたいにくっ付いて眠る。
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