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第14話

彼は心配そうに眉毛を下げてオレを見つめていた。 「さぁ、シロたん。俺を抱いてみてくれ?ドキドキ…」 寝室に入るや否やベッドに横になった勇吾を見つめて、オレは立ち尽くした。 両手を胸の前でもじもじ弄ると、傾げる首がどんどん傾いて捻じれて行きそうになる。 …まず、どうしたら良いの…? 「ふふ…おいで?」 勇吾に手を引かれて、ベッドの中に入る。 オレの猫柄のパジャマに手をかけてズボンを膝まで下ろすと、勇吾がオレのモノを咥え始める。 「あっ…んん…」 膝立ちしたまま彼の口で扱かれて、一気に快感がめぐって頭が真っ白になっていく。 快感に腰が震えて、だらしなく開いた口から、吐息と小さい喘ぎ声が漏れて来る。 「シロ、イッちゃダメだよ…これを勇ちゃんに挿れてくれるんだろ?」 気持ち良くて体が小刻みに震えて、オレは勇吾の柔らかい髪を掴んで快感を堪える。 彼は自分のズボンを下げると、片方の手で自分の中に指を入れ始めた。 あぁ…マジか…そんな事が出来るんだ… 「シロ…可愛いね、大好きだよ。ほら、勇ちゃんは自分でやったからシロの挿れてごらん?」 そう言って勇吾はオレを見つめた。 えっと… オレはちょっと考えると、勇吾をベッドに寝かせて後ろを向かせた。 ふふッと笑いながら大人しく言う事を聞く勇吾は、ふたりきりの時に見せる優しくて甘い彼だった。 首すじに流れる髪が、やけに色っぽくて、ドキドキしてくる。 「じゃあ…挿れてみるよ?」 「うん。」 オレは勇吾のお尻にモノをあてがうと、女の子にする時みたいに力を入れて中に入った。 「あぁ…ヤバイ…」 挿れた瞬間、凄い圧迫感に腰が震えて、奥まで行く前にへっぴり腰になってしまう。 「シロ?根元まで入ってないだろ?」 勇吾がそう言ってオレの顔を見ようと体を捩じると、中が一緒に動いて腰が笑う。 「あぁ…!勇吾、ダメ…動かないで…!だめ、気持ち良くて動けない…動けないもん…!」 女の子の中よりきつくて、締まる。 勇吾の中が、気持ち良くて堪らない…! 快感を堪えてフルフルと震えながら頑張って奥まで入れても、腰がビクついて、上手に動かせない。 オレは勇吾の背中にぺったりとくっ付くと、息絶えながら言った。 「あぁ…ダメだぁ…勇吾、ダメだぁ…オレを捨てて…逃げてくれ…」 「ふふっ…なんだよ、それ…。仕方がないな…じゃあ、勇ちゃんがお手本を…」 勇吾がそう言って体を離そうとした時、ギシッとベッドが揺れた。 「シロ…出来ないの?」 桜二…? おもむろに登場した彼は、オレの後ろに寝転がると優しく髪を撫でてキスをした。 「桜二…桜二…気持ち良くて出来ないの…」 彼の体に体を寄せて彼の胸に顔を擦り付けて甘えると、潤んだ瞳で見上げて言った。 「上手に…出来ない…」 彼はオレを見つめてうっとりと瞳を色づけると、そっとオレにキスをしながら言った。 「シロ、あんなにしたがっていたのに…もう満足しちゃったの?」 そう言ってオレの剥き出しのお尻をサワサワと撫でると、自分のモノを太ももに当てて腰を動かし始める。 「あはは!シロ…大変だ…!」 勇吾がそう言って大笑いすると、オレのモノが締め付けられて、ビクビクと腰が震えて、喘ぎ声が出てしまう。 「ダメ…ダメ…勇吾、動いたらだめぇ…ん…!」 勇吾の背中にしなだれかかると、彼の体に抱きついて、堪らない快感を寄越す動きを止める。 すると、桜二がオレの中に指を入れていやらしく動かし始めた。 「あっ…!桜二!やだぁ!だめ…んんっ…あっ、あっ…あぁっだめぇ…!」 彼の指がオレの中を動いてどんどん本数を増やしていくから、下半身の快感がいっぱいになって、おかしくなりそう! 「シロ、可愛いね。俺が気持ち良くなる様にお手伝いしてあげる…」 オレの背中を後ろから抱いて耳元でそう囁くと、桜二は自分のモノをオレの中に挿れて来た。 「はぁはぁ…だめぇ!何で、何で、今、勇吾にしてるの…!桜二…!だめぇん!あっ、あっ、あぁっ!」 桜二はオレを勇吾に押し付ける様に腰を密着させると、ゆるゆると腰を動かしてオレの中を気持ち良くしていく。 オレの腰をガッチリつかむと、自分の腰の動きとシンクロする様に動かし始めた。 腰を引くときはオレの腰を手で引いて、腰を入れる時は勇吾に押し付ける様にねっとりと動かしてくる… 何これ…! 激しい快感に、頭の中が一気に真っ白になって、気持ち良くておかしくなりそうだ! 「あっ!あっふ!あぁ…!桜二…桜二、ダメぇ…や、やだぁ…だめぇ…!」 小刻みに震える体が弓の様に仰け反って、桜二の体にぺったりとくっ付いていく。彼の胸に頭を擦り付けて、だらしなく与えられる快感に溺れていく。 「あぁ…シロ、凄い…可愛いね…気持ちいの?飛んじゃってるの?」 クスッと意地悪な笑い声をオレの耳元に聞かせて、桜二はオレのパジャマのボタンを外し始める。開いた胸元に手を這わせて乳首を撫で始める。 「あぁっ!桜二、だめぇ!気持ちいの、だめぇ!」 指先で摘ままれた乳首がツンと弾かれて、体中に快感が走る! 「ん~~!」 片手を上げて彼の髪を掴んで必死に快感を堪えると、桜二はオレを見つめながらうっとりと舌を這わせてキスをした。 「あっは…シロたん、気持ち良くなってきたよ?上手に動けるようになったね?あはは…あぁ、シロにされてるかと思うと、勇ちゃんは、すぐ…イッちゃいそうだ…」 勇吾はそう言って体を仰け反らせると、オレの太ももを掴んで自分の足の上で逃げて行かない様に抱え込んだ。そして、桜二の腰の動きに合わせて、腰をねっとりと動かしてくる。 「あぁあ!だめ…だめ…!気持ちよすぎて、おかしくなっちゃう!あっああ!だめぇ!」 桜二の腰がオレの腰にくっ付いて離れない。勇吾の中をねちっこく動いて、ズンズンと突き上げる様にオレの中を気持ち良くするから、オレのモノが勇吾の中でビクビクと震え始める。 ヤバい…イッちゃう…! 「あっああ…!勇吾、イッちゃう…オレ、ダメ…もう、イッちゃう!!あぁああ!気持ちいい!ああん…!」 桜二の体を押し退ける様に力を入れて、彼の胸に体を沈めていく。 もう…イッちゃう! そう思った瞬間、桜二の腰の動きが止まって、高まった快感が徐々に冷めていく。 「シロ…キスして…?」 そう言ってトロけて朦朧とするオレの顔を持ち上げてキスすると、桜二はそのまま唇を離さないで、腰をゆっくりと動かし始める。 オレの体を両手で抱きしめて自分に引き寄せると、下半身だけねっとりと動かして、勇吾の中を感じさせながら、オレの中を気持ち良くしていく。 だめだ…こんなの…おかしくなっちゃう! オレの腰が痙攣すると、イキそうなのを感じて動きを止める。そして快感が落ち着いた頃、また腰を動かし始める。そうして快感のピークをずっと持続させる。 汗だくにトロけたオレを両手で抱きかかえて、何度も何度も、イカせないで快感を与え続ける。 「や、やだぁ…!桜二、もう…もうイキたい…イキたいのぉ!勇吾の中、気持ちいから、だめ、だめ、やぁだぁ!ん~~!」 背中に汗をかいて喘ぐ勇吾がエロくて、オレの後ろで食むようにオレを舐める桜二がエロくて、堪らない…! 両手で勇吾の腰を掴んで押し退けようとすると、彼はオレの太ももを掴んで言った。 「シロ…ダメ…気持ちい…そのまま挿れてて…!きもちいからっ…お前の抜かないで…はぁはぁ…」 「だめなの!だめなのぉ…!おかしくなっちゃうからぁっ…あっああ!」 クラクラして、失神しそう… 朦朧とする意識の中、快感だけになった体を勇吾の背中にくっ付けて、口元にあたる自分の手を噛んで震えて喘いだ。 そんなオレの様子を見て、桜二が腰の動きを変えて止める事なく絶頂へと向かわせる。激しい彼の腰の動きに、激しい快感に、翻弄される。 「はぁぁんっ!勇吾、勇吾、気持ちい!あっあああん!」 オレは勇吾の中でモノをビクビク震わせてイッてしまった。ドクドクと彼の中で精液を吐き出して、クッタリと彼の背中に頬を付けてよだれを垂らす。 中にするの…めっちゃ気持ちいい… っていうか、桜二の腰の動きが…ヤバイ。 「シロたん…桜ちゃんの腰つき、凄かったねぇ?」 寝返りをうってオレの頬を撫でると、顔を覗き込んで勇吾がそう言った。 汗だくにトロけたオレを見ると、口端を上げて、満足そうにキスをした。震える舌が彼の舌に絡められると、体がまたビクビクと震え始める。 「可愛い…堪んない…」 勇吾はそう言うと、うっとりとオレを見つめて、汗だくになった髪を手のひらで撫でた。 桜二はオレの腰を掴んだまま、ねちっこく腰を動かし続けてる。 彼のくれる快感にオレが顔を歪めて喘ぎ声をあげると、勇吾が半開きの瞳をうっとりとさせて、オレのモノと自分のモノを一緒に扱き始めた。 そして食むようにキスしながら、囁き声でオレに言った。 「シロの顔、見てるだけでイキそうだよ…?だって、こんなにエッチなんだもん…。」 「あっ…ああ…らめ、イッちゃう…」 勇吾の手を掴んで動きを止めると、勇吾はオレの手を掴んで上に上げた。 「桜ちゃん…カワイ子ちゃんのお手手を繋いでてあげてよ。」 桜二はオレの両手を掴むと、ギュッと体ごと抱きしめて首筋を舐めながら腰を動かし続ける。逃げ場の無くなった快感に、頭の中がクラクラしてくる。 理性が飛んで…本能だけになっていく。 「あぁ!きもちいっ…きもちいぃ…あぁ…あっはぁはぁ…ああん…」 先っぽから出たトロトロの液によって、グチュグチュといやらしい音をさせながら、勇吾が自分のモノとオレのモノを一緒に扱いていく。 堪らない快感に顎が上がって、首が伸びていく。 「勇吾…失神しちゃう…」 桜二がそう言ってオレの体を抱きしめた腕を緩めると、汗で密着した体が離れて、ぐったりと力なくベッドに沈んでいく。 目の前の勇吾がうっとりした瞳でオレの頬を撫でてキスをする。 桜二の腰が動きを変えて、オレの腰を掴んで本格的に責め始める。 「ああ…桜二、イッちゃう…イッちゃうよ…、気持ちい…気持ち良いの…あぁ…!」 ベッドのシーツに爪を立てて引っかきながら、ぐんぐんと押し寄せる快感に満たされていく。もがいた足のつま先までピンと硬直したみたいにフルフルと震える。 「イッちゃう…イッちゃう~!ああっああん!!」 オレが真っ白になってイクと、桜二のモノがオレの中で激しく波打って、ドクドクと熱い精液を吐き出した。 「次は…勇ちゃんに愛させてよ…シロたん。可愛くて…堪んないんだ。」 そう言って瞳をギラつかせた勇吾がオレの目の前から体を起こす。 クッタリと力が入らなくなったオレの腰を持ち上げると、オレの中に勃起したモノを挿れて来る。 「はぁはぁ…あぁ…勇吾、あぁ…気持ちい…はぁはぁ…」 ベッドのシーツに顔を擦り付けるオレの目の前に、桜二が自分のモノを差し出して言った。 「シロ…お口でして…?」 酔ってるの…?いつもはこんな事、自分から求めて来ないのに… ぐったりと項垂れた顔を持ち上げて、桜二を見つめて首を傾げる。 「桜ちゃん…!どっか行ってよ…邪魔なんだよ。」 勇吾がオレの腰を掴みながらそう言って、桜二に怒鳴り散らした。 「ふふ…シロ、怒られちゃった。」 そう言ってオレの頬を包んで撫でると、親指を口の中に入れて、舌を撫でた。 「桜二…」 オレはうっとりとして、彼の指を舐めて吸うと舌で絡めた。 「桜ちゃん…どっか行けって言ってんだろ。…お呼びじゃないんだよ?俺は可愛いシロたんと2人っきりでエッチがしたいの。だから、とっとと消えろよ。」 勇吾は口が悪いんだ…もう…血の気が多いんだ。 桜二のモノを手で掴んで、ペロリと舌で舐めて口に入れて扱き始める。 「ちっ!」 口が悪くて、ガラの悪い勇吾が舌打ちしても、オレは大好きな桜二のモノを熱心に口で愛した。うっとりとした目をして、桜二がオレの髪をかき上げて顔を覗き込んで来るから、口元が緩んでいく。 「あぁ…シロ、気持ちい…お前の中って…何でこんなに気持ち良いのかな…勇ちゃんは、すぐにイッちゃいそうだよ…?この可愛いお尻のせいかな?ふふ…堪んない。」 気持ち良くなって、桜二の事なんてどうでも良くなったのか…勇吾がそう言ってオレの桃尻をナデナデした。 オレの中に吐き出された精液と一緒に、グチャグチャと音をさせながら、勇吾がねっとりとオレの中を掻きまわしていくから、足がガクガクを震えて、力が入らなくなっていく。 押し寄せる堪らない快感に、顔を歪めながら桜二のモノを気持ち良くしていく。 「はぁはぁ…シロ、シロ、可愛いね…お前の可愛いお口で俺のモノを咥えてるの?…堪らないね…堪らなくエッチだよ…」 うっとりとした色っぽい声で桜二がそう言ってオレの髪を撫でる。 桜二のモノがどんどんと硬くなっていく。 オレは勇吾に気持ち良くされながら、彼のモノを口の中に入れながら小さく喘いだ。 「あぁ…シロ…うっうう…!…はぁはぁ…はぁ…」 オレの中で勇吾のモノが暴れて、ドクドクと精液を吐き出すと、彼はオレの背中にヘタリとくっ付いてオレの腰を抱きしめて言った。 「俺のだ!」 ふふっ! そんな事を無視して、桜二はオレが自分のモノを咥える光景をうっとりと眺めて、オレの唇を指で撫でて微笑んでいる。 彼は…本当に官能的でエロいんだ… 勇吾の体が重たくて桜二を見上げると、オレの口の中の彼がグッと硬くなった。 そのまま彼のモノを口から出して舌で舐め上げながら彼に言った。 「顎が疲れた…も、やらない…」 オレがそう言った途端に桜二のモノがドクンと波打って、オレの目の前で射精した。 所謂…顔射だ。 「はぁはぁ…あぁ…シロ、ごめん…」 片足に脱ぎかけのパジャマとパンツ。それと、ボタンを外されて肩からずり下がったパジャマ…。髪の毛は汗だくのボサボサで、顔には桜二の精液が付いている。 こんな状態でベッドに呆然と座っている姿を見て、勇吾が裸のまま大笑いして、ベッドの上を転げまわった。 「桜ちゃん!早く拭いてあげて!シロが…シロたんが…めっちゃ可愛い事になってるから!あははっ!写真に撮って残しておきたいくらい、可愛い!」 オレはただ呆然と座ったまま、さっきまでの強烈な快感の余韻に浸っていた。 「シロ…ごめんね。」 上半身が裸の桜二が慌てた様子で濡れタオルを持ってきた。 綺麗に顔を拭いながら、うっとりとキスして言った。 「体も、綺麗にしようね…」 そう言って桜二に手を引かれて浴室へ行くと、彼に綺麗に体を流してもらった。 隣で自分で綺麗にしてる勇吾を見て言った。 「勇吾は…勇吾は…自立、してるんだね?」 「ぷぷっ!」 彼は吹き出して大笑いして、オレの中を綺麗にしてる桜二も体を震わせて笑った。 どうして? 中を解すのも、中を洗うのも、1人で出来るんだもん。 自立してるじゃないか… 汗だくになったパジャマは洗濯に出されて、新しい下着に着替えると、パジャマなしでベッドに戻った。 「…凄かった…」 オレがポツリとそう言うと、隣で顔を覗き込んでいた勇吾が、プッと吹き出して笑った。 「シロたんは、可愛いね…どうしてそんなに面白い事ばかり言うの?勇ちゃんは腹が捩れそうだよ?ふふ…」 半開きの彼の瞳が、優しくオレを見つめる。 勇吾とは反対隣に、桜二が寝転がって、オレのおでこにキスをする。 だんだんと瞼が落ちて、そのまま眠りについた。 オレを挟んだ2人の体温があったかくて、布団の中が凄く気持ち良かったんだ。 「シロ…可愛い。愛してる。」 誰かがそう言って、オレの頬にキスをした… #依冬 名古屋に居た頃の話… 桜二から聞いた彼の過去の話。 子供を作って、2歳の娘を殺して自殺した…彼のお兄さん。 にわかに信じられなかった。 だから情報網を使って相手の女性の実家を探し当てた。 11月の名古屋。 冬支度を始めた街路樹は、落としきった葉っぱを絨毯の様にして歩道を隠している。 携帯電話を片手に、足元の落ち葉をかき分けながら、目的地の前で目的以外の話をずっと聞いている。 「もしもし?ふふ…そうなんだ。へぇ…でも、それだとホットケーキじゃなくて、パンケーキじゃないか。」 下らない電話の相手は愛しの彼だ。 桜二と一緒にホットケーキを作っている様で、上に乗せる具材についての文句をわざわざ俺に言って来た。 俺の相槌を受けて、自信が出たのか意気揚々とした声で彼が言った。 「だからオレは言ったんだよ?でもね、桜二はそういうホットケーキもあるって間違いを認めないんだ。この人はね、こういう人なんだよ?自分の過ちを認めないんだ。依冬だって、それじゃパンケーキだって言ってるよ?…ほらね?認めないんだ。」 ふふ… 「シロ、そろそろ電話を切るよ?もう行かないと…」 足元に散らばった落ち葉を靴の裏でそっと撫でる。 「分かった。依冬?依冬はホットケーキにはメイプルシロップだろ?チリソースじゃなくて、メイプルシロップって思うだろ?」 「あぁ…そうだね。シロの言う通りだよ。桜二はきっとパンケーキと勘違いしてるんだ。」 俺がそう言うと、彼は電話口の向こうの桜二に、ほらね?と自信満々に言い放った。 通話を終えて携帯電話を胸ポケットにしまうと、立ち止まっていた歩みを再び進めて、目の前に佇む白い建物の中に入って行く。 「こんにちは。先日…お話を伺いと連絡をした結城と申します。」 インターホン越しの相手は落ち着いた様子で、内鍵を外して顔を覗かせた。 物書きの自分が当時の特異な事件を調べて執筆している。 当時の具体的な話を聞きたい。 それが、今回、俺が付いた嘘だ。 「どうも…遠路はるばる…」 玄関を開いて俺を招き入れる、疲れた様子の年老いた母親。 シロのお兄さんの…恋人だった“佐伯春子”(さえきはるこ)の実母だ。 「お時間を頂いて…申し訳ございません。本日はよろしくお願いします。」 丁寧にあいさつをして、丁寧にお辞儀をする。表の“良い人の顔”を駆使して、初対面の相手に取り入った。 公営住宅の小さなアパートの一室。 室内は物が少なく、味気も無い。まるで昨日今日引っ越して来たばかりの様な家財道具の少なさに、驚いた。 「ふふ…当時の話をお聞きになりたいって…?」 そう言ってお茶を入れて目の前に差し出すと、佐伯さんは首を傾げて言った。 「どうして…あんな事を、本にしようなんて思ったんでしょう?」 俺は集めた資料をテーブルに出して、ノートを開くと、それっぽく…はにかみ笑いをして言った。 「子供が絡んだ事件を調べていて、この事件を知りました。情報が少なくて、当時を知る人が極端に少なくて…言葉は悪いんですが、興味が沸きました。虐待を受けて来た子供を保護する側の人間と、保護を受ける側の人間。それ以上の何かが、2人の間に…あったんでしょうね。それが知りたいんです。」 淡々と第三者の様にそう言って、目の前の佐伯さんを見つめる。 彼女は疲れた目をしてポツリと言った。 「当時は…なにもかも、真っ暗闇で…。やっと、最近…笑えるようになってきました。春子は、普通に高校を卒業して…普通に大学に入ると、児童相談所の職員として、子供たちを保護したり…保護者を指導したり…経過を観察するような仕事をしていました。」 相槌を打ちながら、目の端に映る仏壇に飾られた遺影に気付いて、視線を送る。 あの女が…シロのお兄さんを… 「そんなある日、酷く泣き腫らした顔で帰宅したんです。話を聞いても春子は伏せた様に押し黙って…ただ、保護対象の親族の話を聞いた。それが、とても壮絶で…悲しい。と、言っていました。」 それが…シロのお兄さんか。 「春子も…父親のいない家庭に育っているので、同じような境遇に…感情移入したんだと思います。そうしたら、あれよあれよという間に…蒼佑君を連れ来て。彼氏だと、私に紹介したんです。落ち着いた青年で…春子は彼に夢中でした。…まさか、仕事で相談に乗っていた相手だとは…思いませんでした。」 メモをノートに取りながら、母親の様子を伺う。 こんなにあふれた悲壮感は…1人で育てて来た愛娘が自殺した事によるものなのか…それとも、彼女が蒼佑さんの自殺の引き金を引いた事を知っての事か… 「蒼佑君は、自分には弟が2人居て…自分が面倒を見なくてはいけないと、私に言いました。その時は弟思いの優しいお兄さんなんだって、感心するくらいで…彼がそんな背景を持った子だなんて…分からなかったんです。」 彼女は母親に蒼佑さんを紹介していた。 相談者を”彼氏”と言って…連れまわして、独占した。 シロが“兄ちゃんに置いて行かれた”と言っていた時期の話なのか… 深いため息をついて佐伯さんが俺を見る。 俺は彼女を見つめて聞いた。 「弟さんにはお会いに、なられましたか?2人いるうちの1人は…彼の、蒼佑さんの愛情を必要以上に受けていた子になります。春子さんと蒼佑さんの仲を知っていたのか…それとも、何も知らなかったのか…お母さんはお会いになられましたか?」 「いいえ…、ただ…」 そう即答して言い淀む彼女の瞳には、大粒の涙が湛えられて、今にも落ちそうに目じりを揺れる。 「一度、家の近所で…中学生くらいの…体の細い可愛らしい子が、蒼佑君に縋りついて、泣いているのを目撃しました…」 シロだ… 胸が痛い。 ペンを持つ手が動揺で震えるのを隠すようにテーブルから降ろすと、佐伯さんをじっと見つめた。 「あまりに悲しそうに泣くので…何かおかしいと…気付きました。蒼佑君の表情も、苦しそうに歪んでいて…いつも見ていた彼の表情じゃなかった。」 お兄さんを追いかけて来たのか…それとも偶然出会ったのか、シロは自分から離れて行きそうなお兄さんに必死に縋ったんだ… 可哀想だ… 「…春子にその話をすると、あの子はひどく動揺して…その子の事を罵り始めたんです。まるで、ドラマの中で激しく嫉妬して、相手を罵る女性の様に…口汚く罵ったんです。私は驚いて、春子に言いました。あなたは…一体何をしてるの?…と。」 でも…と佐伯さんは続けて俺を見つめて言った。 「春子は…蒼佑君を独り占めしたかったみたいです。私は知らなかった…。泣いていたあの子が、そんなひどい環境に居た事も、蒼佑君が、それを必死に守ってきた事も…何も知らなかった…!もし、もし、知っていたら…私は娘を止める事が出来たのかもしれない。でも、当時は知らなかった…。だから、熱を上げている程度に受け取って…いつか落ち着いて、良い関係に落ち着くって…そう、思っていたんです。」 あぁ…この人は自責の念を感じているんだ。 知らなかった事に… きっと事件当時、警察から事情聴取を受けて、事のあらましを…シロの家の事を知ったんだ。 「春子さんと蒼佑さんの…娘さんの事について、教えていただけますか…?」 俺がそう言うと、佐伯さんは表情を硬くして、ジッと膝に置いたであろう手を見つめて俯いた。 俺は焦った様に佐伯さんに謝罪しながら言った。 「…すみません。不躾な事を聞いてしまいました。申し訳ありません…。ただ、それが蒼佑さんの行動の引き金になった、と…思っているんです。どんな関係で…どんな様子で、子供の事を可愛がっていたのか…それが知りたいんです。」 それが知りたいんだ… もし、シロのお兄さんが彼の事を愛していて…彼を守るためにこの事を隠して死んでいったとするならば…俺は彼の事を少しだけ理解出来るかもしれない。 大嫌いな彼のお兄さんが…彼を守ったうえで死んだとするならば 「…春子は妊娠しました。それが誰の子かなんて…すぐに分かった。難しい境遇の蒼佑君との関係を、私はもろ手を挙げて賛成することは出来ませんでした…。彼が春子を見る目も…彼が春子に話しかける声も…どことなく虚ろで、健康には見えませんでした。春子は妊娠した事実を…蒼佑君には伝えなかった。」 淡々と話し始める佐伯さんの話をメモを取りながら聴き入る。 「どうして彼に話さないんだ。彼に認知してもらったのか。仲の良かった私たちは…そんな話で喧嘩が耐えなくなった…。頑張って1人で育てて来た娘が…道を踏み外していると、焦って…。私は娘を責めて…彼女に共感すらしなかった。孤立していく娘を黙って無視して…家を出て行ったあの日も、何も話さなかった…」 家を出て行った…春子さんは妊娠した後、実家を出たのか。 そして…蒼佑さんと暮らしたのか…? 「この先の話は…当時、警察から聞いた話です。春子は妊娠した事も、出産した事も、蒼佑君に伝えはしなかった…。蒼佑君の弟さんが…環境が変わって行く事に順応出来ないで、一時的に興奮状態が酷くなっておかしくなってしまったそうです…。それをきっかけに彼は春子に会わなくなって…春子は黙って彼の子供を産んだ…」 シロ… 「あの子は…蒼佑君を諦められなかった様で、産んだ子供が2歳になる頃。彼に会いに行った様です。そこで…蒼佑君はやっと自分に娘が居ると知った…。警察に言われたんです…児童相談所の職員という立場で、相談者と親しくなって関係を持つ事。私情を挟んで相談者の環境を強引に変えた事。悪戯に相談者に接触した事。全て責められました。私の娘が…一方的に…責められました。可哀そうに…!」 立場が変われば正義も変わる。産んだ娘なら、なおさら…この人も辛いんだろう。俺は彼女の話を頷いて聞いて、同情した。 「そうですね…。一方的に責められるなんて…あってはならない。2歳だったお孫さんには会われましたか?」 「いいえ…!会えなかった…会えなかったんです…!春子を…あの子を拒絶してしまったから…。あの子は1人で、必死に…育てていたんです…!不安だったろうに…1人きりで…小さな子供を抱えて…可哀想に、ごめんね…ごめんね…お母さんが傍に居てあげれば良かった…」 孫の話になった途端、興奮した様子で話す佐伯さんに、無言で頷きながらメモを取って行く。それはまるで同情する様に、彼女の気持ちに寄り添っている様に見える。でも、心の中では嫌悪して、軽蔑した。 …下の躾が悪いんだ。妊娠すればどうにかなるなんて…。そんな考えするような女…ろくでも無いな… 「蒼佑さんは…その子を殺して…自殺した。なぜ、そこまでしたんでしょうか…。幼い命は気が違えていたとしても簡単に殺せる訳無いでしょう?春子さんは蒼佑さんをどうやって追い詰めたんですか?」 棘のある物言いに、佐伯さんの表情が硬く怒りを滲ませる。 「…追い詰めた?…警察が調べた話では…結婚を迫ったようです。でも、それは当然の事でしょう?子供が出来たんだから…!女親が1人で育てられる訳、無いじゃないですか…。蒼佑君は春子の申し出を拒んで、私の孫を…殺した!」 「佐伯さん…私は客観的にこの事件を調べています。蒼佑さんのご家庭は決して普通では無かった。それは児童相談所の職員であった春子さんもよくご存じだったと思うんですよ。そんな彼に、普通を求めたって…それは酷な事ではないですか?彼には…何よりも大切な存在が既に居たんだ。」 俺はそう言うと、テーブルの上に置いた資料から当時のシロの虐待と保護の記録を彼女に見せて言った。 「産まれた時から母親から疎まれて虐待を受けて来た子供が居ました。蒼佑さんの弟です。何度も虐待の通報を受けて、一時保護を受けながらも、結局は母親の元に戻されていた。6歳の頃、その子は母親の売春客から性的虐待を受けていました。それを全て見て来たのが蒼佑さんです。そして、その子を必死に守ってきたのも彼だ。この時の経験が…トラウマや心の傷を受けたと…春子さんは見立てたようです。しかし、そんな人から…弟を奪うような事を、何でしたんだ…。それは治療でも何でもない。自分勝手な私情以外の何物でもない。」 冷たくそう言い放つと、佐伯さんの顔を見て言った。 「結婚を迫った…それだけですか?」 彼女は瞳からボロボロと涙を落とすと、唇をかみしめて吐き捨てるように言った。 「…いつも、いつも…!娘が責められる!かわいそうに!どうして…!どうして…!」 あんたの躾がなっていないからだよ… ひとり親だからってなんだ。そんな家庭沢山ある。 そのうちの子供がみんなあんたの娘の様にクソって訳じゃない… あんたの躾が悪いから、クソみたいな女になったんだよ? 「蒼佑さんの弟さんにお会いしました。」 俺がそう言うと、佐伯さんは顔を上げてボロボロと流れる涙をそのままに言った。 「…お元気ですか…」 「いいえ。お兄さんの記憶が途切れ途切れになっていて、話を伺っても思い出せないそうです。突然バタッと倒れて、酷い頭痛を抱えて起きる…そんな発作を起こすそうです。狂っているのか、正常なのか…その狭間を行ったり来たりしてる様に見えました。彼は100パーセントの被害者です。まともな相談員が居れば、彼の未来は違った。私はそう思うんですよ。」 俺はそう言うと、彼女を見て首を傾げて言った。 「彼は、お兄さんの自殺を…自分のせいだと思って今も苦しんでいます。それでも、ご自身の娘さんが“可哀想”だなんて…お思いになられますか?」 分かってる。娘を…孫を無くした人に、酷い事をしていると自覚している。 でも発端はこの人の娘の一方的な執着心だったんだ… 俺の大切な彼を苦しめてる…責任を、取って貰いたいね。 許せないんだよ。 シロを傷付ける奴が、許せない。 俺の言葉に佐伯さんはたじろいだ様子を見せて、伏し目がちに言った。 「…弟さんに…話すと言ったそうです。警察から…そう聞きました。」 「蒼佑さんにとったら…脅迫ですね。」 テーブルに広げた資料をまとめると、出されたお茶にも手を付けず、一礼をした。 「思い出したくないお話を、教えていただき、ありがとうございました。」 そう言って立ち上がると、玄関へと向かった。 「知らなかったんです…知らなかった…そんな境遇の子だなんて、知っていたら…」 そう言って俺の背中に言葉をぶつける佐伯さんに、振り返って言った。 「でも、今は知っている。そうですよね。」 そして当時、春子さんはそれらを知った上で蒼佑さんに執着した。 これが愛? 違うね。 判断力が低下してるイカれた男にしがみ付いたんだ。 そして、彼の環境をグチャグチャにした。 大切なものをボロボロにして、取り返しのつかない事をした。 …罪深いね。 往々にしてこういう事をするのは、どうでも良い人間なんだ… 早々に佐伯さんの自宅を後にして、帰路につく。 彼女さえいなければ、シロは今頃、お兄さんとまだ一緒に居た。 それが良い事なのか、悪い事なのかなんて分からないけど、確実に一緒に居る事だろう。 弟に話す… そう言われた蒼佑さんは、シロに知られる前に…証拠と共に、死んだ。 「ふふっ…!」 口元が緩んで笑いが込み上げる。 葉っぱの落ち切った街路樹を見上げて、彼が良くするように、手のひらを上に上げてヒラヒラと落としてみる。 「シロ…お兄さんは、お前を守ったんだ…。その為に死んでいったんだ…」 目の前で頭を割って血を流した愛しい弟。 そんな彼に、子供が居る事なんて…知られてしまったら、きっと悲しみに暮れて死んでしまうと思ったんだ…。橋の上で春子さんに会っている所を目撃されて、彼が揺らいでいる状況ならなおさらだ…。絶対に知られてはならない…そう、思ったんだ。 不器用なまでに…シロを愛していたんだ。 それが歪んで汚くて、醜くて、倫理観に欠けている物だとしても…俺はあんたの選択を理解した。 理解した… 「ふふ…本当だ。シロの言った通りだ。桜二は…お兄さんにそっくりだ。」 1人そう呟いて来た道を戻る。 どうしてだろう…俺は彼の恋人なのに… 桜二の存在が、頼もしいだなんて思ってしまうんだ。 彼がいれば…シロは大丈夫だって、思ってしまうんだ… #勇吾 「シロたん。シロたん。おはよう?」 目の前でスヤスヤ眠る可愛い寝顔を指で突いてみる。 自分の口がニヤけているって気付いてる。 でも、直しても、直しても、自然とニヤけて行くんだ… 目の前の可愛い子に夢中なんだ。 「シロ…?眠いの?」 うっすらと目を開く彼にそう言って、サラサラの薄ピンクの髪を撫でてあげる。 「勇吾…綺麗だね?」 彼はそう言うと、俺の頬を撫でてにっこりと笑った。 あぁ…可愛い… 「そんなに綺麗だと…人間じゃないみたいだ…」 ポツリとそう言うと、瞼を落として再び眠り始めた。寝起きが悪いようだ… クッタリと力なく眠る彼の首筋を指先でなぞる。 真っ白な肌に、うっすらと指でなぞった後が浮き出て…興奮してくる。 「シロたん…シロたん…勇ちゃんは人間じゃなかったら、何なの?」 そう言ってゴロンと向かい合う様に寝転がると、眠った彼をギュッと抱きしめて彼の首筋に顔を埋めていく。 ほのかに香る石鹸の香りに口元を緩ませて、彼の体温に興奮して、ゆるゆると腰を動かす。堪んない…堪んなく、可愛い… サワッと髪を摘まむように触られて、うっとりと彼を見下ろすと、目を閉じたまま口元を緩めて彼が言った。 「天使か…妖精だ…」 ぷぷっ! 俺が?天使か、妖精…?ぷぷっ! シロは素直で、幼稚で、子供のよう。だからかな、彼の感性は面白い。 俺や夏子の様な荒んだ心の大人を癒してくれるんだ。 それなのに…やけに達観した人生観を持っている。 達観?…いいや、諦めの中で生まれた反骨精神なのか… コネを駆使して偉そうにふんぞり返る偽物が居る、彼らは本物を蹴落として、チャンスすら与えない。俺は自分のいる世界をそう卑下して、悲観した考えを彼に言った…でも、彼は俺よりも俯瞰した物の見方をして言ったんだ…。誰が何を言おうと、どう評価を下そうと、本物かどうかなんて、見れば分かるんだ。って…正直痺れた。 カッコいいって…思ったんだ。 それらすべての不条理を受けたとしても、自分は輝けるって言っている様で… 強い子だって思った。 この子は…健気で…強い。 唇の色まで失った様な彼を見つめながら聞いてみる。 「なぁんで?なんで、妖精や天使が人間界にいるんだよ…。シロたんは本当におバカさんだね?」 俺の言葉に彼は、ふふッと口元を緩めて笑った。そして、うっすらと瞳を開くと俺を見つめる。 優しい微笑みを湛えて俺を…見つめるんだ。 薄ピンクの髪に、真っ白な肌…俺にはお前の方が、天使に見えるよ… 「天使も妖精も、人間の食べ物を食べるとこっちの世界の人になっちゃうんだって…昔、誰かがそんなこと言っていた…」 クスクス笑いながらそう言うと、俺の髪を撫でて、ギュッと抱き付いて来る。 あぁ…シロ、可愛いね…良いんだよ。勇ちゃんに甘えて、俺に甘えて…良いよ。 彼を抱きしめて彼のうなじを見つめる。細くて真っ白な人形の様な体。 「勇吾は、本当は天使か妖精なんだけど…悪い事をして追放されたんだ。それで、人間界の食べ物を食べて…今に至るんだよ。きっと。」 俺の腕の中でそんな戯言を言うと、クスクスと1人で笑ってる。 「悪い事って…何をしたの?」 彼の髪に顔を埋めてそう尋ねると、クイッと顔を上げて、俺を見つめて言った。 「人殺しと…無銭飲食…」 ふふっ! 可愛い彼の髪を優しく撫でながら、色づいて来た唇にキスをする。 俺は昨日、このカワイ子ちゃんにファックされた。ぷぷっ! 桜ちゃんが乱入してこなかったら、もっと良かったのに… あいつの事だから、シロが俺に上手く出来ない事を分かっていたんだ。“しかたないな~、じゃあ勇ちゃんがお手本を見せてあげる!”って展開まで予測したんだ。 そうなるくらいなら、俺をオナホールだと割り切って、シロを昇天させて楽しむ方を選んだ…。昨日の3P、俺にはそう見えたね…フン! 必ずシロの傍に居て、いつも寄り添って、いつも監視して、いつも俺の邪魔ばかりする。 俺とシロが作った“ふたりだけの秘密”もことごとく、彼の知る所となった。 桜二は遊びだったら良いよって言ったもん。隠し事をされる方が、桜二は嫌みたい… そう言ったシロの言葉を思い出す。 そうだよ。知ってるよ。 だから俺はシロと、桜ちゃんには話せない…秘密が作りたいんだ。 共通の秘密を持つことで、俺とシロの仲を強化させたい。 「シロたん…勇ちゃんと遊びに行こうよ…ふたりっきりで。」 体を起こしてベッドの上でぼんやりとするシロの、丸まった背中にくっ付いてそう聞くと、お腹をポリポリと掻きながら言った。 「ん~…今日は依冬とお昼ご飯食べる約束したんだ…」 全く! シロの周りには二つの防壁がある。 ひとつは桜ちゃんで…もうひとつはビースト依冬君だ。 この子は20歳かそこらなのに、ジャガーに乗って、ポルシェに乗って、ボルボに乗る。 所謂、金持ちのボンボンだ…そして、ビーストなんだ。 物腰が穏やかそうで、爽やかそうな笑顔を向けるのに、一旦敵認定されると、手のひらを返したように上等な皮肉を言う。 厄介な奴。 「何時に?何時にランチに行くの?」 彼の背中にくっ付いて、彼のポリポリ掻いたお腹を触って、Tシャツを捲し上げながら乳首を撫でる。 「んっ!やだぁ…」 ヤダじゃないだろ?勇ちゃんの事、好きだろ? 俺は彼の体を離さないで、嫌がって体を捩るシロの胸を弄って、彼の首元に何度もキスをする。 「ん~、シロたん…シロたん…大ちゅき。チュッチュッチュ…!」 「…何してんの?」 寝室の入り口で、夏子が歯ブラシを咥えながら俺を見つめる。 …面倒な奴。 「夏子さん、おはよう…早起きだね?爺さんみたいだ…」 シロはそう言ってベッドから降りると、フラフラと廊下を行ってしまった… 「ちっ!」 舌打ちして夏子を睨むと、彼女は肩をすくめて言った。 「シロに本気になってるでしょ?…桜二に、殺されるよ?」 フン! 「本気?俺はシロたんと遊んでるだけだよ?お前がシロたんをレイプしたのより、もっと健全で大人な関係だ。お互い遊んで、じゃれてるだけ。」 俺がそう言うと、夏子は首を傾げて言った。 「へぇ…そんな風には見えないし、桜二もきっとそう思ってる。あの子に初めて会った時から、あんたはシロに夢中。のめり込んで、本気になってる。確かにあの子のステージで見せるセンスは毎回度肝を抜かされるし、あんたの好きな演出力も備わってる。夢中になる要素はいくつもあるけど、こんなに骨抜きにされちゃって…どうすんのよ。」 知らねえよ。 「放っとけよ…」 俺はそう言うと、ベッドから降りて、シロが歩いて行った後をトボトボと付いて行く。 「意外だよ、あんたって…実はそういうタイプだったんだね。」 背中に夏子の声を聞きながら、リビングのソファに座るシロを見つめる。 「シロたん?依冬君とは何時にランチへ行くの?」 「ん~…13:00。今日は韓国料理屋さんなんだ!一緒にプデチゲを食べて、昨日食べられなかったサリ麺を食べてくる!その後、陽介先生とKPOPアイドルの掛け声の練習をして、仕事に行くつもり~。」 なんと!お前は意外と忙しいんだな… 俺の方を見つめてそう言うと、シロは首を傾げて聞いて来た。 「勇吾は?」 ふふ… 「勇ちゃんは今日13:00までシロと一緒にふたりきりで過ごす。その後、渋々仕事に行って、終わったら、シロのお店に行ってシロとエッチをする。こんな予定だよ?」 「あ~はっはっは!」 大笑いしながらソファの背もたれに転げる彼の隣に座り込んで、彼の体をギュッと抱きしめる。 俺は…本気だよ。 お前と一緒に居たいんだよ。ふたりきりで過ごしたいんだよ。 可愛いお前を独占して、向けられる笑顔は全て自分の物にして、満たされたいんだ。 「…予定は未定だからな…。言うだけならタダだ。シロ、おいで…ご飯にしよう?」 桜ちゃんがそう言ってシロに甲斐甲斐しくご飯を提供している。 フン! 邪魔な奴。 俺はシロのTシャツを引っ張ると言った。 「シロ?毎日同じ料理で飽きないの?たまには外で食べようよ…勇ちゃんが連れて行ってあげる。ふたりっきりで行こう?」 「ふふ…勇吾はふたりっきりが好きなんだ…」 シロが困った顔をして首を傾げるから、俺は同じように首を傾げて本心を誤魔化す。 誰にも邪魔されない、ふたりっきりでお前と過ごしたいんだよ。 一緒にふたりきりの時間を過ごして、ふたりしか知らない時間を過ごしたい。 お前の視線も、お前の声も、お前の笑顔も、お前の体も、俺にだけ与えられる様に。 「桜二~卵焼き、美味し~い!」 そう言って満面の笑顔を桜ちゃんに向けて…キャッキャと笑うシロ。 俺は彼の正面に座って、頬杖を付くとモグモグとご飯を食べる彼を見つめる。 …お前は俺と遊んでるつもりでも、俺はお前に本気になって…お前を本気にさせようとしてる。 桜ちゃんはそれに気付いてるから、俺の事が殺したいくらいにムカついてる。 夏子の言った通り、俺はシロに夢中だ。彼の気を引きたくて仕方がない。 兄貴の写真を見せられたって、俺が覚えてるのは彼の小さい頃の顔だけ。隣に居た男の顔なんて覚えて無いし、そもそも…見てない。 「ごちそうさま~!美味しかった~!」 そう言って席を立つと、ついでに俺の頭を撫でる。 お茶碗を持って洗い物をする桜ちゃんの腰に纏わりついて甘える。 前は見れた。 やれやれと思いながらも平気だった。 でも、今は…見たくないよ。 それくらい…俺はお前に夢中なんだ。 ダイニングテーブルから立ち上がって、自分の荷物を手に持つと、夏子に言った。 「…ホテルに戻る。」 「お?じゃあ、あたしも一緒に行こうかな?」 化粧前の地味顔の夏子はそう言うと、いそいそと着替えを済ませる。 シロの連絡先は桜ちゃんがガードしていて教えて貰えない。 だから、ここに来るしか無いんだ。 シロと時間を過ごすには、ここに来るしか無いんだ…。 そうすると、このイチャつきを見せつけられて…正直、傷付く。 こんな気持ちが自分にまだあったなんて驚きだよ。 彼のショーを見て、ときめく様に…彼の笑顔を見て、胸が苦しくなる。 それはまるで、恋をしているみたいに甘酸っぱくて癖になる感覚。 それと同時に、思い通りに行かない状況に涙がチョチョ切れそうになるんだ。 「桜ちゃん、帰るわ~!シロ、またね~?」 俺がそう言うと、シロがキョトンとして言った。 「あれ?勇吾、オレと13:00まで遊ぶんじゃないの?」 ん? 俺はキョトン顔のシロを同じ様にキョトンとして見つめ返した。 …良いの? 彼の背後で桜ちゃんが、俺を睨みつけるのを感じて口元がニヤける。 シロが言い出したら…彼は止められないんだ。 桜ちゃんは、彼の犬だから…彼の意志を阻害出来ないんだ…ふふっ! 「…遅いから。」 「ん?」 「…支度が遅いから…待ってられないの。一緒に遊びに行くなら、早く着替えてよ。」 ニヤける口元を押さえながらそう言うと、シロは慌てて支度を始めた。 やった… 思いもよらないタイミングで、彼を独占出来る事になった。 皮肉の混じった軽口も、言ってみるもんだな… 俺はシロを待つ中、カウンターに両肘を付いて桜ちゃんに言った。 「じゃあ…桜ちゃん、シロを借りて行くよ?」 そんな風に俺を睨みつける顔、彼に見られたら…昨日の夜みたいに怒られるよ? 優しくしてッて…あはは! お利口にしなよ、わんちゃん? 「出来た~!」 そう言って猫のトレーナーを着たシロがやって来た。 あぁ…それを着るのか… 桜ちゃんに抱きついて、スリスリしながらシロが言った。 「桜二、行ってくるね?」 「何かあったらすぐに電話してね。」 含みを持たせた桜ちゃんの言い方に、吹き出しそうなのを堪えて素知らぬ顔をする。 「んふふ、大丈夫だよ?行ってきま~す。」 そんなやり取りを背中で聞きながら、顔がニヤけてしまう。 「あたし、知らな~い。」 そう言って夏子が両手を上げてエレベーターへ向かう。 「シロたん?勇ちゃんと行こ~う?何処に行く?水族館?動物園?ショッピング?なぁんでも買ってあげるよ?勇ちゃんは黒いカード持ってるからね?」 桜ちゃんと引き離して、俺が彼を言葉通りに、独占する。 睨みつける桜ちゃんの視線も、纏った怒りのオーラも、俺は全然気にならない。 彼の腕を掴んでエレベーターに乗せると、扉が閉まるまで、桜ちゃんが俺を睨み続けていた。ふふっ! 「シロ坊、良いの?桜二、怒ってない?」 「え…?どうして?どうして怒るの?遊びに行くだけだよ?」 シロは夏子の顔を見て首を傾げると、俺を見て言った。 「勇吾、遊びに行くんだよね?」 「そうだよ~。勇ちゃんとふたりきりで遊びに行くんだ。んふふ!」 夏子が余計な事を言って、シロの気を桜ちゃんに向けるから、俺は彼の体に纏わりついて、髪に何度もキスをして気を紛らわせる。 全く、厄介な奴だ! 「シロを奪還したぞ?」 彼に聞こえない様に、小さい声で夏子にガッツポーズをすると、彼女は肩を下げて言った。 「略奪の間違いでしょ…本当、どうなっても知らないからね?シロ坊があんたに本気になったら…それこそ、血を見る惨劇が起こるよ?」 全く…厄介で、面倒な奴だ。 シロが俺に本気になったら…それこそ、こっちのもんだ。 彼を連れてイギリスに逃げちゃえば良いんだからね、フン! 「シロ?タクシーに乗って一旦ホテルに戻るよ。一緒においで?」 彼をタクシーに押し込めて、物理的に桜ちゃんから引き離していく。 誰にも邪魔されない…俺だけの…シロだ…

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