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第2話

 書きかけだった短編小説を仕上げようと僕は、再びパソコンへ向かった。  以前は推理小説のシリーズものを書いていたが、三年ほど前に交通事故にあってからは短編小説しか書いていない。  今日は五時に編集者がここへやってくるはずだ。  パソコンに貼られた付箋を見る。そこに書かれた文字は僕のものではない。きっとその編集者が前回書いて行ったものだろう。  律儀に毎回スケジュールとちょっとしたコメントを残していく。  その付箋を自宅の壁に並べて貼っている自分もどうかと思う。  まるで恋する乙女がデートで使ったチケットやレシートを大切にしまっておくみたいだ。  なんだか照れくさくなって苦笑を浮かべながら顔を上げると、相席した男と目があった。  ひょっとして、この男はずっと僕を見ていたのだろうか。そうだとしたら薄気味悪い。  それからその男が気になって何度か様子を伺うと、そのたびに目があった。  そして決まって陽だまりのようなほんわかとした笑顔を見せる。  これってやっぱりストーカーだろうか。そう思うのだが、なぜか彼の笑顔にひかれてついついパソコンから目を上げてしまう。

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