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第6話
振り向きざまに佐山にキスをした。
「抱いて」
全身の羞恥をかなぐり捨てて、僕はささやいた。
佐山は細い目を見開いている。
佐山自身へ手を添えると、先程まで元気だったそこがすっかり脱力していた。
「柔らかくて気持ちいい」
さわり心地が気に入ってしばらく弄んでいたら、次第に固くなってきた。
佐山は大きな溜息をついた。
「馨さんて小悪魔ですよね。今日は控えようと我慢していたのに……どうなっても知りませんよ」
どうなっても知らないと言いながら、佐山の愛撫は優しかった。
僕の身体がとろけてしまいそうなほどに、優しくほぐしていく。
「ああん……」
佐山の舌が胸を這うだけで甘い吐息が唇から零れ落ちた。
男を身体の中へ受け入れるなんてことは、僕の記憶の中では初めての行為だった。
なのに身体は佐山を覚えている。
彼を待ちわびて僕の中は蠢いている。
「記憶を司るのは脳にだけじゃないんだって。心臓にも、皮膚にも指先にも……ここにも記憶は刻まれている」
笑いながら僕は佐山の欲望を突いた。
「あなたって人は」
なにが佐山のスイッチを押したのかわからないうちに佐山の猛りが後孔にあてがわれた。
「待って!」
怖くなって僕は叫んだ。
「待てない」
「ちょ、ちょっと……うぅっ!」
佐山の質量に呻き声を上げる。
始めはゆっくりだった佐山の動きが次第に速くなってきた。
猥雑な水音が脳を麻痺させる。
「あっ! いやぁ!」
頭からつま先まで痺れのような不思議な感覚が突き抜けた。
「なに、こ、これ……」
「馨のいいとこ」
嫌がる僕を面白がるように、佐山は同じ場所を攻め立てる。
嫌だったはずなのに、はしたなくもっともっとと腰を振ってねだってしまう。
「あああああ――っ!」
やっとふたりで絶頂を迎え、僕は不思議な感覚から解き放たれた。
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