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何度だって君を好きになる
初めて一人で社員食堂へ行った。
辺りを見渡してもそこに蓮の姿はなくて、少しだけホッとした気持ちになる。
あまり食欲のない僕は、焼き魚定食を注文してトレイに乗せると、空いている席へ座ろうとした。
「おい、長谷川大雅! こっちこいよ」
名前を呼ばれて顔を上げると、同じ部署のもう一人の同期である白石正尚(しらいしまさたか)がこっちこっちと手を振っている。
僕は迷わずに足を進めて、正尚の元へ向かった。
「お疲れさま」
「お疲れ。あれっ、長澤は?」
「うん…。これからは別の人と一緒にお昼食べるって」
「へえ…、そっか。じゃあ、大雅はこれから俺たちと食べればいいじゃん」
「でも…」
「遠慮することないって。一人で食べるより、みんなで食べた方が楽しいだろ?」
「うん…」
「よし、決まり!」
二カッと笑顔で言ってくる正尚に、自然と笑顔になった僕は、ゆっくりと椅子に座った。
だけど、せっかく声をかけてくれたのに、僕の頭の中は蓮のことでいっぱいすぎて何も考えられない。
今、蓮はあの女の人と楽しくゴハンを食べているの?
笑顔で話をしているの?
真っ直ぐに見つめて、キスをするの?
勝手な妄想ばかりが頭を過っていく…。
結局、ほとんど喉を通らないまま昼休みが終わり、オフィスへと戻った。
「おかえり大雅」
僕よりも先に戻っていた蓮が、声をかけてくる。
「ただいま」
「さっきはゴメン…。早く伝えてればよかったんだけど…」
「いいよ。気にしないで」
「でもさ…」
「もういいから…。仕事に戻りなよ」
優しい言葉をかけることができなくて、目を合わせることなくPCに向き合う僕。
蓮も僕の様子を気にしながら、自分のデスクへと戻って行った。
僕の座っている場所からは、蓮の大きな背中が見える。
今の僕にはちょうどいい。
蓮の顔を見ることは、まだできそうもないから…。
胸の奥が苦しくて、顔を見ると泣いてしまいそうだから…。
それからの僕たちは、ほとんど会話をすることなく時間だけが過ぎて行った。
それでも僕の見つめる先には蓮がいる…。
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