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第11話
しばらくすると、ハルは眠りにつき、俺は温めていたレトルトのお粥のガスを止めた。
眠っている間、あまり音を立てないよう気遣いながら、買ってきていた飲み物やプリンやゼリー、ヨーグルトは冷蔵庫にしまう。
改めて、ベッドの傍らで、ぐっすり眠っているハルの寝顔を眺める。
瞼を閉じた長いまつ毛、薄く開いた唇、熱のせいか頬は紅潮したかのようなピンク色。
さすがに風邪で寝ているハルを襲うつもりはないが、やっぱり可愛いな、とハルの寝顔を見つめた。
「.....ぱい」
「ん?」
「せん....ぱい....」
「どうした?ハル」
どうやら寝言らしい、ハルは目を開けはせず、ただ独り言のように呟いているだけだ。
「....かないで」
行かないで、か?と俺はハルの瞼にかかる前髪を払い、
「....何処にも行かないよ。ハル。傍にいる。安心して寝てろ」
俺は眠っているハルに声を掛けた。
「....き」
「ん?きついのかな」
俺はハルの額に貼っていたシートを取り替えようと、ハルの額に触れた。
「....すき。せんぱ、い」
ドキッとした。
そのまま、すーすー、寝息を立てるハル。
先輩、てだけで、俺かどうかもわからないってのに、なんで、ドキドキしてるんだ、馬鹿か、俺は....。
恥ずかしさと少しのジェラシーの中、ハルの額のシートをそっと、真新しいものに取り替えた。
ふと、そんな時だった。
ドンドン、けたたましく、ハルの部屋の玄関のドアがノックされる。
ノックというより、叩いている、と言っていいだろう、次第に音は激しさを増し、ついにはどうやら、ドアを蹴っているようだった。
「開けろよ、ハル!居るんだろ!?居留守、使ってんじゃねーよ!」
挙句の果てには、怒声まで聞こえ、ハルもさすがに目を覚ました。
「なんだ?騒がしい奴だな」
俺が立ち上がりかけると、ハルは俺のトップスの裾を引っ張った。
「あ、開けないで、先輩。無視して」
「無視、て....」
こうしてる最中も、ドンドンガンガン、容赦なく、ドアが叩かれ、蹴られている。
ハルは俺を見上げ、泣きそうになりながら、首を横に振り、俺を制止した。
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