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誰・・・?
「スゲェ・・・」
星斗は螺旋階段を上りきって驚いた。
上がった先には海岸が一望出来る全面ガラス張りの広々としたリビングルームが広がっていたからだ。
星斗は導かれるように窓際に立って、海岸の景色を眺めた。
寝室のあった下の階で見た景色よりも更に眺めがよく、遠くまで街の景色も眺めて、海もキラキラと輝いている。
こんな眺望の良い部屋に平然と住んでるなんて、どんな金持ちだよ・・・?
星斗は海の景色を眺めながら、今、自分の置かれた状況に更に不安が募った。
俺は、この先、一体どうなるんだろう・・・?
多分、この首輪がある限り、そいつから逃げられないんだ・・・。
その時、
「・・・起きたの?」と、星斗の背後から、渋い男の声が聞こえた。
「!」
星斗は慌てて振り向いた。
「!!」
そこには風呂から上がったところなのか、濡れた髪をタオルで拭きながら、腰にバスタオルを巻いただけの上半身裸の男が立っていた。
星斗が目を合わせると、その男は軽く笑みを浮かべた。
笑った顔はとても優しい顔だった。
とても裏社会などにいるような悪い人間とは思えないほどの優しい顔つきをしている。
どちらかと言うと、黒髪で端整な顔つきが好青年といった印象を与えて、硬い職業についてる社会人だとも思わせた。
星斗はその男を強く見つめた。
いくら観察してみても、誰だか、全く分からない。
間違いなく見知らぬ男だ。
男は自分を見つめたまま、困惑している星斗の顔が気になったのか、「・・・ん?」と、また、やさしい笑みを浮かべて問いかけてきた。
「・・・誰、ですか?」
「えっ・・・」
「どちら様ですか・・・?」
男も困った顔をする。
「・・・え、覚えてないの?」
「・・・はい」
男は「まいったなー」と、顔から伝わるほどの困惑した表情を見せると、左手を顎に当てて何やら考え込んだ。
男は言葉を選ぶように星斗に告げる。
「・・・昨日、Playしたこと覚えてる?」
「Play・・・?」
星斗は悩んだ。
Play。
一体、何の隠語か分からない。
「・・・ゲームでもしたんですか?」
「・・・ゲーム?」
「確かに俺、格闘ゲームは得意ですけど」
「・・・・・」
男は呆気に取られているようだ。
男は腕を組むと、
「Sub space に入ったら記憶無くすのかな・・・?」と、首を傾げて、呟く。
「あのー、どうして、俺は裸なんでしょう? 服はっ?! スマホは?! 後、この首輪はなんですか?!」
まだ首を傾げている男に向かって、星斗は矢継ぎ早に自分の疑問を投げかける。
「だから、俺たちは昨日、Playを楽しんだんだよ」
「・・・・・」
「で、Playしてたら、星斗クンが・・・」
「!? きらとって、どうして俺の名前を知ってるんですか?!」
「知ってるっていうか、覚えるよ。覚えなきゃっ。だって、Play中に何度も名前は使うだろう?」
「あのっ、だからっ、Playってなんですかっ!」
「昨日は・・・セックスまでした」
「へっ・・・?」
「昨日はセックスまでしたよ、覚えてない?」
「セックス・・・? セックスって、あのS E X ・・・ですか?」
「えっ、うん・・・その、エスイーエックス・・・だけど・・・?」
「でも、それって男と女でするものじゃ・・・?」
そう星斗が口にした瞬間、男の腰に巻いていたバスタオルが外れて、床に落ちた。
「あっ・・・」
男の股間にぶら下がる堂々としたシンボルの存在が星斗の目に入った。
デカい・・・。
てか、同じ男として文句のつけようがない、見本のような見事なフォルムだ。
そして、俺はなぜかコレに見覚えがある・・・。
星斗は男の股間を呆然と見つめる。
「昨日、それを・・・使いましたか?」
「へ?」
「昨日、それを、俺に・・・どうやって使ったんですか・・・?」
「えーっと・・・」
男はそう言いながら、バスタオルを拾って腰に巻いた。
「それ以上大きくして、俺のどこに使ったんですか!!」
「・・・・・」
男はただ、バツの悪そうな顔を浮かべた。
「とりあえず、キミもシャワーを浴びておいで。それから、落ち着いて、ゆっくりと話をしよう」
男にそう諭され、星斗は昨晩に自分が何をしでかしたのか? すぐに想像出来てしまい、とても悲しくなってしまった。
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