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Subでしょ・・・?!
通話を終えた男はソファに座る星斗に、ペットボトルに入ったミネラルウォーターと空のグラスを差し出す。
「お腹空いてない? 話する前になにか食べに行く?」と、男。
星斗はその問いかけを無視すると、「・・・俺、あなたに・・・金で買われたんでしょうか?」と、不躾に質問をぶつけた。
「俺、どんな酷いことをしたんですか! どんな酷いことをして、あなたに金で買われることになったんですか!?」
「へ!?」
「ひょっとして、無理やり・・・ですか? 嫌がる俺を無理やりですか? 酒に変な薬でも混ぜました!? だから、俺の記憶がぶっ飛んでいるんでしょ!」
「いや、ちょっと待ってよ。いくら記憶がないからって、それは失礼過ぎないかな? 確かに、俺たちの間では、そういうことをする奴も平気でいるけどさ、俺はそういうの一切したことないから!」
「俺達?」
「キミを助けた時のあいつらみたいに、Glare を使って、無理やりなんて・・・俺、そんな最低なことは一度もしたことないから!」
「ぐれあ・・・???」
星斗は男の話が全く理解できない。
「・・・てか、昨晩は星斗クンの方からおねだりされたんだけど」
男はどこか不満げに口にした。
「おねだり・・・?」
「俺はちゃんと大人の男のたしなみとして注意したよ。これ以上、刺激されると大変なことになるからやめなさいって」
「・・・・・」
星斗は昨晩の記憶が全くないので、何も言い返せない。
「キミ、昨晩に居た居酒屋でヤバイDom に引っかかって、Sub drop に落ちかかってたんだから」
「ど、どむ・・・? さぶ・・・どろ・・・っぷ?」
「そこを偶然に居合わせた俺が助けたんだけど。Sub dropに落ちかかってるヤバい状況のSubのキミをDomの俺が放っておけると思う? 仕方ないから、キミがSub dropしないように、クズDomに代わってAfter care してたら、星斗クンが何の勘違いを起こしたのか、おねだりしてきて、それは大変で・・・」
「あのっ!」
星斗は男の話を遮った。
「さっきから、あなたはなにを言ってるんですか?」
「へ?」
「どむ、とか、さぶ、とか、なんの話をしてるんですか?」
「なんの話って・・・だから、星斗クンはSub」
「いえっ! Normal です!」
「いやいやいやいや・・・、何言ってんの・・・? ・・・え!? 検査してないの?!」
「しました。中学生の時に。Normalでした」
「!」
男はまさか!というような表情で、口をあんぐりさせた。
「星斗クン、これから時間ある? あるよね、ニートなんだから」
「へ?」
星斗はなぜ、それも知っている?!と思うと同時に、ニートだと知られている恥ずかしさと、見下されたような気がして少しの腹正しさも覚えた。
「今から連れて行くから、俺の知り合いの医者に診てもらおう。まずは検査して、確かめようよ」
そういうと、男はテキパキと出かける支度を始めた。
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