9 / 311

Subでしょ・・・?!

通話を終えた男はソファに座る星斗に、ペットボトルに入ったミネラルウォーターと空のグラスを差し出す。 「お腹空いてない? 話する前になにか食べに行く?」と、男。 星斗はその問いかけを無視すると、「・・・俺、あなたに・・・金で買われたんでしょうか?」と、不躾に質問をぶつけた。 「俺、どんな酷いことをしたんですか! どんな酷いことをして、あなたに金で買われることになったんですか!?」 「へ!?」 「ひょっとして、無理やり・・・ですか? 嫌がる俺を無理やりですか? 酒に変な薬でも混ぜました!? だから、俺の記憶がぶっ飛んでいるんでしょ!」 「いや、ちょっと待ってよ。いくら記憶がないからって、それは失礼過ぎないかな? 確かに、俺たちの間では、そういうことをする奴も平気でいるけどさ、俺はそういうの一切したことないから!」 「俺達?」 「キミを助けた時のあいつらみたいに、Glare(グレア) を使って、無理やりなんて・・・俺、そんな最低なことは一度もしたことないから!」 「ぐれあ・・・???」 星斗は男の話が全く理解できない。 「・・・てか、昨晩は星斗クンの方からおねだりされたんだけど」 男はどこか不満げに口にした。 「おねだり・・・?」 「俺はちゃんと大人の男のたしなみとして注意したよ。これ以上、刺激されると大変なことになるからやめなさいって」 「・・・・・」 星斗は昨晩の記憶が全くないので、何も言い返せない。 「キミ、昨晩に居た居酒屋でヤバイDom(ドム)に引っかかって、Sub drop(サブドロップ)に落ちかかってたんだから」 「ど、どむ・・・? さぶ・・・どろ・・・っぷ?」 「そこを偶然に居合わせた俺が助けたんだけど。Sub dropに落ちかかってるヤバい状況のSubのキミをDomの俺が放っておけると思う? 仕方ないから、キミがSub dropしないように、クズDomに代わってAfter care(アフターケア)してたら、星斗クンが何の勘違いを起こしたのか、おねだりしてきて、それは大変で・・・」 「あのっ!」 星斗は男の話を遮った。 「さっきから、あなたはなにを言ってるんですか?」 「へ?」 「どむ、とか、さぶ、とか、なんの話をしてるんですか?」 「なんの話って・・・だから、星斗クンはSub」 「いえっ! Normal(ノーマル)です!」 「いやいやいやいや・・・、何言ってんの・・・? ・・・え!? 検査してないの?!」 「しました。中学生の時に。Normalでした」 「!」 男はまさか!というような表情で、口をあんぐりさせた。 「星斗クン、これから時間ある? あるよね、ニートなんだから」 「へ?」 星斗はなぜ、それも知っている?!と思うと同時に、ニートだと知られている恥ずかしさと、見下されたような気がして少しの腹正しさも覚えた。 「今から連れて行くから、俺の知り合いの医者に診てもらおう。まずは検査して、確かめようよ」 そういうと、男はテキパキと出かける支度を始めた。

ともだちにシェアしよう!