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病院へ行こう

星斗は男にマンションの地下駐車場に連れてこられると、男の愛車の助手席に乗る様に指示された。 男の愛車は見ただけでわかる、黒光りした国産のセダンの最高級車だった。 星斗は最高級車の乗り心地に誘われて、何の躊躇もなく、助手席に乗り込んだ。 助手席に座った瞬間、革シートの肌触りに驚嘆した。 すげえ、超スベスベだー。 さすが、最高ランクの高級車だー。 星斗は運転席に乗り込んだ男の横顔を眺めた。 この人、どれだけ金持ちなんだよ。 この見た目の若さでこれだけの金持ちって・・・やっぱり堅気の仕事じゃ無理だよな。 星斗はこの男のことを未だ信用できずにいた。 さっき教えられた話はこの男の作り話かもしれない。 高級車の誘惑に負けて、あっさりと助手席に乗り込んだものの、星斗は慎重にそう考え直し、心の中で《胡散臭いイケメン》と勝手に名づけ、略して、クサイケメンと悪意をもって呼び事にした。 「あの」 「なに?」 「ここってどこなんですか?」 「ここ? ☆県のL海岸」 星斗はなるほどと納得した。 ☆県のL海岸なら、昨晩、友人たちとはしゃいでいた大都会から高速を使えば、車で一時間ほどにある街だ。 「部屋からの眺め最高だったろう?」 「はい・・・」 星斗は否定する要素もないので素直に認めると、クサイケメンは嬉しそうに微笑んだ。 星斗はこのクサイケメンが見せる笑顔は嫌いじゃないな、と、やっぱり思ってしまう。 「ここに住んでるんですか?」 「ああ」と、答えると、「そうだ・・・」と、クサイケメンは思い出したように呟き、星斗のスマホと財布を鞄から取り出し、星斗に手渡した。 「そのハーフパンツが汚れてたから、洗濯しようと思って。で、洗濯する前に、ハーフパンツのポケットに入っていたスマホと財布を取り出したんだ。勿論、ちゃんとプライバシーは守ってるから。どっちの中身も見てないからね」 「・・・ありがとうございます」と、星斗は素直にお礼を言ったが、本当は俺の個人情報を調べてたんじゃない?と疑った。 しかし、すぐに、ニートの俺に知られたらマズイ個人情報なんかひとつもないじゃん、と、思い直すと、とても悲しくなった。 クサイケメンがエンジンをかけると、車を発進させた。

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