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病院へ行こう②

車がマンションの地下駐車場から出ると、星斗は外の風景を確かめた。 星斗が予想した通り、豪邸が立ち並ぶ高級住宅街の高台に建つマンションだった。 やっぱり、この人はセレブだ。 星斗の中で確信に変わった。 クサイケメンの愛車は国道を少し走ると、すぐに現れた高速の乗り込み口に進入した。 星斗は初めて乗った高級車の走りに感嘆してしまう。 凄い。 全然振動が伝わってこない・・・。 めっちゃ静かだ。 そして、座席が高級ソファかーっ!ってくらいに体が沈み込む。 そんな高級車の感激に酔いしれる星斗の脳裏にある思いが遮った。 そもそも、クサイケメンは何歳なんだ? スーツに身を包んだ見た目は30歳前後・・・ぐらい??? 星斗は何かを確かめる様に運転席のクサイケメンの横顔をチラチラと眺める。 「・・・ン? なに?」 星斗の視線に気がついたのか、クサイケメンは優しい口調で声を掛けてきた。 「あのー、御職業は?」 星斗はそれが一番の気がかりだった。 疑いようがない金持ちは分かった。 じゃあ、どうやって、そんな大金を稼いでいるのか? 正当に稼いでいれば、自分みたいな底辺ニートに親切にする理由がない。 セレブが底辺ニートに親切にするってことは、昨晩、クサイケメンがプラスになるような何らかの取引をしたはずだ。 海外ドラマではよくある、そこから犯罪に巻き込まれるストーリーだ。 自分の記憶が全く思い出せない今、星斗はその疑念がどうしても拭えなかった。 「会社経営だよ」 クサイケメンは当たり障りない答えで返答してきた。 星斗は何のヒントにもならない返答に「チッ」と、心の中で舌打ちをした。 「星斗クンはなんでニートに?」 「へ?」 「昨日の夜、居酒屋で酔っぱらって叫んでたよ。『まだ、50万の貯金があるんだから、ニートやっててもいいだろうっ!』って」 「・・・・・」 そうか・・・。 俺は昨晩、悪酔いして、ニートであることと貯金額までバラすような醜態を晒していたのか・・・。 それほど泥酔してたから、このクサイケメンと取引した記憶も覚えていないんだな・・・。 星斗はますます自分の疑念が正しいように思い込んでしまう。 「一緒に飲んでた連中にバカにされたんだろうね、きっと」 「だから、俺は体で償ったんですか?」 「へ?」 「俺、酔っぱらって、どんな酷いことをしでかしたんですか?」 「・・・ン?」 「なにか壊したんですよね? あなたの大切な何かを・・・?」 「・・・・・」 クサイケメンは一瞬、戸惑った顔を見せた。 「そうだね・・・そうなのかもしれないね・・・」と、クサイケメンはどこか照れくさそうに口にした。

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