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病院へ行こう③

「それで、星斗クンはダイナミクスの検査は中学生の時以来していないの?」 今度は、クサイケメンも何か聞きたいことがあるのか、話の話題を変えてきた。 「はい・・・あの、高速降りたら、そこで下ろしてください」 「へ?」 「体で弁償できたんなら、もう、昨日のことは忘れます」 「・・・はい?」 「てか、都合よく記憶にないんで。逆に良かったです。明日からは、男と肉体関係を持ったことはなかった男として、また前を向いて生きていきます」 「!?」 「ホント、こんな体で弁償出来て良かったです。ニートだから、無職だから、ホント、払えるものはこの体だけしかないし・・・」 そこまで言うと、星斗は涙ぐんだ。 「いや、いや、いや、いやっ!  そういう問題じゃないからっ。 多分、何かものすごく勘違いしてるからっ!  このままじゃ、絶対ダメだから。 ね、絶対に病院に行って検査しよう?  てか、強引にでも連れて行くよ」 クサイケメンは駄々をこねる子供をあやすかのような口ぶりだ。 「だから・・・魂胆はなんなんですか!!」 「はいーっ?!」 星斗はキレたように急に声を荒げた。 「セックスだけじゃ弁償できませんでしたかっ!」 「ええっ!?」 「次は俺の臓器が目的ですか!」 「臓器!?」 「臓器を売るんでしょ!  今から闇社会専門の病院に連れて行って、俺の元気な臓器取り出して、臓器を闇ルートで売るんでしょっ!!  俺は一体、あなたの何を壊したんですかーーっ!!」 星斗はそこまで言うと、「母ちゃん~、最後まで親不孝な息子でごめんさない~」と、号泣し始めた。 「なんなんだ、この子・・・素面でもこんな感じなのか・・・」と、クサイケメンは呆れたように口にした。 「星斗クンっ、キミの誤解はなんとなく分かったから、今すぐキミのスマホを出してくれない?」 クサイケメンは運転しながら、星斗にそう声を掛ける。 しかし、星斗は感情に流されての号泣どころで、クサイケメンの言う事を一切聞き入れない。 「星斗クンっ! 星斗クンっっっ!!」 クサイケメンは苛ついたように声を上げる 「ワーーーーンっ!!」と、クサイケメンの呼びかけに反応するように星斗の泣き声は大きくなる。 「チっ・・・」と、クサイケメンは苛ついたように舌打ちすると、目の前に現れた路肩に入って車を急停止させた。 「星斗。こっちを見なさい」 「ワーーーーンっ!!」 星斗は子供がわめくように泣き散らす。 「星斗、Look(私を見なさい)!」 クサイケメンはそう言うと、星斗の顎を無理やり手で持って、自分の方に向かせた。 「Look(私に視線を合わしなさい)!」 「!」 その瞬間、星斗は不思議な感覚に陥った。 なぜか、涙はすぐにピタッと止まり、とてもウワウワとした温かいオーラのようなものが心の中に流れ込んでくる。 「good Boy(お利口さんだ)」 そう微笑んだクサイケメンの瞳はなぜかとても鮮やかなサーモンピンクの色に輝いている。 「本当はこれ、マナー違反になるんだけど、今回は特別に許してね」 「はい」 「星斗、スマホを出しなさい」 「はい」 星斗は言われるまま、素直にスマホをポケットから取り出した。 「『寺西クリニック』を今すぐ検索しなさい」 「はい」 星斗はまた言われるまま、スマホを使って、【寺西クリニック】と、ネット検索する。 「その、開業医がダイナミクス科の専門医であることを確認しなさい」 「・・・できました」 「よろしい。とても良い子だ。彼は俺の友人だから。そいつにキミを診察してもらうよ。その為に今から一緒に行くだけだからね。 星斗は今日はダイナミクスの検査をしてもらう。 いいね?」 「はい」 「よろしい。星斗は本当に良い子だね。ご褒美は何が欲しい?」 「ご褒美・・・?」 星斗はその言葉にうっすらと昨日の夜の記憶が蘇ってくる。 『俺を・・・知未さんのモノに・・・』 その言葉と共に目の前にいるクサイケメンの微笑む優しい顔が蘇ってくる。 「俺・・・」 「ご褒美は何が欲しいかな?」 クサイケメンは優しく微笑む。 この顔。 俺はこの優しい顔を知ってる。 いや、この顔を何度も見た記憶がある。 「俺・・・」 星斗がそう口にした途端、星斗の腹がグウーと空かせた音を鳴らした。 「・・・牛丼食べたい」 「え、寝起きから!?」

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