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立ち寄って・・・

高速を降りると、病院にたどり着く前に、運よく現れた牛丼チェーン店に立ち寄ることが出来た。 クサイケメンは牛丼チェーン店の駐車場に車を止めた。 「それじゃあ、ご褒美に牛丼をご馳走するよ」と、クサイケメン。 「あのっ」 星斗は車から降りようとするクサイケメンを呼び止めた。 「これ、取っても良いですか?」 星斗は自分の首に装着したままのピンクの首輪を指し示した。 朝から色々と混乱していて、首輪の存在をすっかり忘れていた。 星斗は首輪を装着したままの格好を他人の目に晒すのがなんだか恥ずかしかった。 「ああ。勿論」 と、クサイケメンは頷いた。 「それで、これ、なんですか?」 星斗は疑惑の首輪について尋ねてみる。 「俺の居場所が分かるようにマイクロチップが埋められてるとかですか? それとも逃げたら爆発する仕組みとかですか?」 「そんなことあるわけ・・・」 と、星斗の突拍子もない質問にクサイケメンは呆れた。 「うーん・・・」と、困惑を洩らすように口にすると、「・・・知らない人にはどう言ったら分かりやすいのかな・・・契約みたいなものなんだけどね・・・」と、続けた。 「契約・・・ですか?」 「うん。でもね、昨夜はお遊び。Play中にテンションが高くなって、ノリでしたお遊びって感じだから。全然気にせずに外してもらっていいんだよ」 「そうですか・・・」 星斗はそう言われて、なぜか急に悲しい気持ちに襲われた。 「俺が外してあげようか」 「お願いします」 星斗が了承すると、クサイケメンは星斗の首に両手を伸ばした。 「・・・星斗クン?」 「はい」 「この手、なに?」 クサイケメンが困った声で告げた。 気がつくと、星斗の両手がクサイケメンの手首をがっしりと押さえ込んでいる。 まるで、首輪を外すことに抵抗しているかのようだ。 「なんでしょう?」 星斗も困惑した顔を浮かべる。 自分の意識とは関係なく手が勝手に自ら行動を起こしたような感覚だった。 「いや、なんでしょう?じゃなくて、手を退けてもらえる? じゃないと、首輪が外せない」 「はい」 「早く」 「はい」 「うん」 「はい・・・」 「・・・うん」 「・・・・・」 「・・・星斗クン?!」 クサイケメンは唖然とした。 いつの間にか、星斗の瞳が涙でいっぱいになっているからだ。 「どうしたの?!」 「わかりませんっ!!」 「分かりませんって・・・」 「首輪が外されると思ったら、すごく悲しい気持ちになってきて・・・なんなんですか、このやるせない悲しい気持ち・・・」 星斗の瞳から、大粒の涙が零れだす。 「き、星斗クン!?」 「怖い・・・」 「怖い!?」 「ヤダ・・・っ」 「・・・・・」 「なんか、すごくヤダっ・・・怖い・・・めちゃくちゃ怖い・・・この首輪はつけたままでいたい・・・なんなんですか、この・・・言いようのない、とてつもない不安な気持ちは!!」 「嘘だろう・・・マジか・・・」 そう呟くと、クサイケメンはまた困った顔を浮かべた。 「俺に一体、何したんですか!」 星斗がそう叫ぶと、大声で泣き出してしまった。 「!」 クサイケメンはあまりの出来事に対応できず、ただただ唖然とする。 「ヤダーーーっっ! 本当にヤダーーーっっ!! 何がイヤなのか全然分かんないけど、本当にヤダーーーーっっっ!!!」 「分かった、分かったから、星斗クンっ。一回、落ち着こう」 クサイケメンはなだめる様に口にする。 「星斗クンの気持ちは分かったから。この首輪の件はお医者さんに相談しよう」 「とりあえず、外さなくても良いんですか?」 「ああ、病院まではつけたままで行こう」 そう言って、クサイケメンは首輪から手を放した。 すると、星斗の涙はパタリと止まった。 「それで、どうする? 食べる?」 「・・・恥ずかしくないですかね? 首輪をつけたままでも」 「うーん、どっちかという、星斗クンより俺の方が恥ずかしいことになるんだよね・・・それ、安物のおもちゃだから・・・」 そう言うと、クサイケメンはまた困った顔を浮かべた。 「?」 困った顔をしながら口にしたクサイケメンの言葉が、星斗はいまいちよく理解できなかった。

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