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牛丼店にて!?②
真っ赤に染まった肉がクサイケメンの手によって、星斗の口の中に運ばれた。
「! 辛いっっっ!」
星斗の瞳に涙が浮かんだ。
その瞬間、クサイケメンは自らの興奮を抑え込もうとしているのか、己の左手を拳を作る様にギュッと丸く握った。
星斗は思った。
さっきまで優しかったクサイケメンの目がギラついている。
男だから分かる。
これは興奮している雄の瞳だ。
そして、自分はこのギラついた瞳で見つめられることが嫌いじゃないと思った。
それよりもこの瞳でずっと見られていたい。
今までの人生で味わったことのない興奮が体中に湧き上がってくる。
「星斗。もう一口食べるといいよ」
「お願いします」
「open 」
クサイケメンのその号令に星斗は自然と口が開いてしまう。
クサイケメンのスプーンから真っ赤に染まった肉が星斗の口に運ばれる。
「・・・うぅぅぅ~~~」
星斗は涙目になりながら、辛さに唸った。
そんな星斗を見て、クサイケメンはまたギュッとこぶしを握り締めた。
「星斗は本当に良い子だね」
そう言われた瞬間、星斗はクサイケメンに抱き着きたくなった。
抱き着いて、もっと褒められたいと思った。
そして、この衝動は一体なんなんだろう?と、不思議に思う。
「・・・あの、もう一口」
「星斗。昨日も注意したけど、褒められたいからって星斗が要求しちゃダメだろ?」
「えっ・・・」
「私に褒められたければ、私の言う事をまず聞く。いいね?」
「!」
クサイケメンの瞳がサーモンピンクの色にまた輝いた。
星斗はその瞬間、自分の全てが溶けてなくなりそうな感覚に陥った。
自分はこの世からいなくなり、この男の所有物として、この男の体の中で生きていくのだ。
そんな錯覚を思わせる。
「はい」
「よし、良い子だ」
クサイケメンはまたスプーンに一口分ほどの真っ赤に染まった肉を乗せた。
「open 」
星斗はその号令にしたがって、口を開いた。
その瞬間、
「あの、お客様っ!」と、店員に声を掛けられた。
「当店では食事中のPlayは他のお客様のご迷惑になると考えておりますので、ご遠慮願いますか」
ハッ!と、するように、スプーンを握ったクサイケメンの手が止まった。
「・・・すみません!」と、店員に向かって、クサイケメンは低姿勢で謝った。
「ひょっとして新婚ですか?」と、今度はヒソヒソ声で話しかけてきた店員。
「へ?」と、クサイケメン。
「新婚さんだから、我慢できなかったんですね。分かります。羨ましいですよ。可愛いSubさんで。その首輪、とっても似合ってますよ」
店員はそう付け加えると、本当は二人を応援してますよ♪というような、とても気持ちの良い笑顔を見せて去っていた。
「・・・新婚って、どういうことですか?」
星斗は店員の言葉の意味をクサイケメンに聞いてみた。
「・・・あ、もうこんな時間だ。お店を出ようか? ねえ? 予約してある診察時間に間に合わなくなっちゃうよ」
クサイケメンは星斗の質問にはあえて答えず、はぐらかして席を立った。
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