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病院へ向かう車の中で・・・

牛丼店を後にした星斗たちは、クサイケメンの愛車に再び乗り込むと、本来の目的地である病院に向かうことにした。 走る車の中の星斗の表情は暗い。 とても落ち込んでいるようだ。 運転するクサイケメンはそれが気になった。 「・・・ごめんね、もっときちんと食べたかったよね・・・」 「・・・・・」 「暴走してごめん・・・」 「・・・・・」 「ホント、昨日からダメDomだな、俺・・・」 クサイケメンの呟きは星斗の耳には届かなかった。 「・・・俺、やっぱりSubなんですね・・・」 落ち込んだ表情のまま、星斗は口にした。 星斗は牛丼店での先程の出来事に、驚きよりもかなりのショックを受けていた。 今まで生きてきて、あんなにも誰かの支配下に入りたいと願ったのは初めてだった。 思い起こせば、学生時代にクラスメイトを力ずくで牛耳るクラス一の乱暴者がいた。 星斗はその乱暴者とは好意的な距離を保てていたが、彼の支配下に入りたいとは一度も思ったことがなかった。 むしろ、暴力でクラスメイトを支配する彼のことを星斗は心のどこかで最低なクズ野郎だと見下していた。 なのに、このクサイケメンにはそんな軽蔑な気持ちを起こさせるような感情が全く生まれてこなかった。 むしろ、この男と混じりたい。 そんな衝動に駆られっぱなしだった。 この衝動こそが所謂、ダイナミクスの性もった人間の証なんだと考える方が素直に受け止めやすかった。 我が国では出産時と思春期の2回に、ダイナミクスについての検査が行われることになっている。 そこで、Sub/Dom/Switch /Normal、男女とは別の四つの性が判明する。 性はプライベートの問題が孕むため、秘密裡に本人に通達される。 Sub/Dom/Switch が判明した者はそこからまた個人情報を守られながら、それぞれの特徴にあった講習や教育を受けることになっている。 その講習や教育はそれぞれの性の安全性を守るためにも、行政からの強制指導となっていて、絶対に受講しなければならない。 しかし、Normalを通達された者は中学の保健体育の授業で基礎知識を教えられる程度で、ダイナミクスの性についてはそういう性をもった人たちがこの世界にはいる、という程度の知識しか持ち合わせていない。 なので、Normalで今まで過ごしてきた星斗はダイナミクスの性についてきちんとした知識がなく、特にSubに対してはあまり良い印象を持っていなかった。 世間一般にSubの性は支配されるもの。 弱い生き物。 弱い生き物だから、正体を一生隠して生きる者。 そんなイメージだ。 誰かとも分からない奴の支配から逃れるために、これからの人生、怯えながら暮らすことになるのか? 誰かの支配下になったら最後。 その人物に一生を支配されながら生きていくのだ。 それってすごく惨めな人生なんじゃないか? 俺の人生はこれでもう詰んだ。 底辺ニートなのに、更に詰んだ。 星斗はそんな不安に襲われていた。

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