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キミは希望

「・・・もう病院には行かなくてもいいです・・・」 星斗は絶望交じりで口にした。 「ダメだよ。検査して、自分のことをきちんと知っておかないとっ」 「だって・・・分かったところでどうなるんですか・・・っ!」 星斗は苛立った気持ちをクサイケメンにぶつけた。 「検査でSubだって分かったら、なにか変わるんですか! なんにも変わりませんよねっ! いや、これ以上、もっと悲惨な人生になるかもしれないってだけじゃないですかっ!」 星斗は表情を落とした。 「頑張っても・・・頑張っても・・・上手く行かない。ニートで底辺でやっと生きてる人間なのに・・・Subだなんて・・・最悪だ・・・」 星斗はやりきれない気持ちで胸が張り裂けそうになった。 「どうして? どうして、Subだと最悪なの?」 「そんなの決まってるじゃないですかっ! 誰かに支配される一生なんて・・・っ!」 クサイケメンは呆れたように「ハァー」と、重いため息をつくと、「Normalの奴らって、なんで自分たちの価値観が一番正しいって思って生きてんのかな・・・」と、更に呆れたように口にした。 「いい? SubはDomが居ないと生きていけないように、DomもSubが居ないと生きていけないんだよ。言い換えるなら、Subが存在してくれるからこそDomも生きていけるんだ」 クサイケメンは運転を気にしながらも、星斗の表情に視線を配った。 「要するに、この世で一人で生きていける人間なんてひりともいない。自分を待ってくれている誰かが居てくれる。その希望があるからこそ、人は生きていけるんだよ」 そこまで言うと、クサイケメンは優しい顔をして、ニコっと微笑みかけた。 「キミは俺たちの誰かの希望なんだ。だから、そんな悲しいこと言わないで」 そう言い終わると、クサイケメンは急に気恥ずかしくなったのか、目線を進行方向に向けて真っ直ぐに戻した。 「・・・・・」 星斗は、なぜか分からないが、クサイケメンにそう諭され、素直に病院でダイナミクスの検査を受けてみようと思った。 それは、Subの自分がDomの男の巧みな言葉使いにコントロールされただけかもしれない。 でも、それでもなぜか悪くない気分だった。 そして、当初は疑いの目でしかみていなかったが、このクサイケメンは悪い人間じゃないかもしれない。 そんな気がし出した。 星斗は、《胡散臭いイケメン》から《本当は良い人かもしれないイケメン》、"かもしれないイケメン"と、心の中での勝手な呼び名をひっそりと昇格させた。

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