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眞門知未は語る②

父と母は俺が小学五年生の夏の終わり、二学期の新学期を迎えた頃に離婚した。 俺が父に引き取られ、父の元で育てられることになった理由はいくつかある。 勿論、眞門の血脈を継ぐひとりということもあるが、なにより、一番の理由は俺がDomとして生まれてきたからだ。 Normalの母にDomの息子を育てるのはかなり難しいと判断をしたのだろう。 それに俺にかかる多額の学費の問題もあった。 わが国では、ダイナミクスの検査はまず、出産後にすぐに調べられ、次に第二性徴期にもう一度調べられることになっている。 俺は生まれた時からDomと判明していたため、小学校からDomしか入学が許可されていない小中高の一貫校に入学した。 俺が通った学校は高額な学費と引き換えに、Domとしての教育を徹底的に受けさせられる。 社会での振る舞い方やSubへの礼儀やルールは勿論、Domの欲求の徹底的コントロールやGlare(グレア) と呼ばれるDomにしか使えない能力の本当の使い方、Playで使用するCommand(コマンド)の能力の発揮の仕方などだ。 友人や教師、学校の職員にいたるまで、Domしか校内には存在せず、また、父の他に家に居たハウスキーパー(家政婦)もやはりDomの性を持つ人だった。 小、中、高と俺は周りにDomしか存在しない世界で過ごした。 だからなのか、俺は恋というものを知らなかった。 DomがDomに恋はしない。 完全にないとは言い切れないが、その可能性はかなり低い。 それはDomは性質上、人付き合いが苦手な傾向にあるからだ。 一対一はまだなんとかやり過ごせるが、数人のグループで戯れることをかなり苦手としている。 理由は簡単だ。 リーダーシップを誰もが取りたがるからだ。 そのグループの支配をしていたいのだ。 誰かの命令を聞くのが苦手な性分なのだから仕方がない。 なので、チームスポーツを苦手としている者が圧倒的に多かった。 いくら能力があっても、リーダーシップを取れなくなった途端、その能力を全く発揮できなくなる傾向がある。 逆に言えば、リーダーシップが取れた途端、とんでもない能力を発揮することもある。 学生時代の部活動の運動部も一対一で対戦できるスポーツ(例えば、テニスや卓球のシングルス)の部活動が人気で、バスケ部やサッカー部などのチームスポーツの部はあまり人気がないのが、Normalとは違った面白い傾向だった。 そんなDomしか存在していない環境で育った俺に唯一の異種の人間が現れた。 それが愛美だった。 俺が高校生になった16歳の夏休み、父親の元で育てられながらも交流が続いていた母親から再婚することを伝えられ、紹介したい人がいると告げられた。 それが母の再婚相手と共に連れて来られた、俺より三つ下の13歳の愛美だった。 俺は次第に愛美に惹かれていった。 それは愛美が唯一の異種の存在だったからなのか。 それとも反抗期を迎えて、ツンとしているのに、笑った顔が人懐っこい笑顔だったせいか。 はたまた、信頼関係が築けた頃に俺のことを「お兄ちゃん」と呼んで懐いてくれたからなのか。 理由はいまだに自分でも分からない。 でも、俺は両親と同じ恋路に迷い込んでしまった。 そう、俺はNormalの愛美に恋をした。 この世で一番愛おしく美しい女性。 でも、この恋は絶対に結ばれることはない。 両親を見て、どんな結末が待っているか分かっていながらも、俺は愛美に対する思いを捨てることがずっと出来ずにいた。 そして、星斗クンと出会うことになった昨晩、俺は愛美に呼び出された。 愛美から"夫"を紹介したい、と、言われて。

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