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眞門の憂鬱
車で送り届ける申し出を星斗に断られた眞門は、駐車場から寺西がいる診察室にまた舞い戻って来た。
「急に無理な診察を頼んで悪かったな。お陰で助かったよ。お礼に昼飯でも奢らせてもらうよ」と、眞門。
「気持ちは有難いけど、今日の昼はどうしても外せない用事があってな。また今度にお願いするよ。それより渋谷さんを送ってくるんじゃなかったのか?」
「ウーン、それが一人で帰るって。俺、随分と警戒されてたみたい」
と、眞門は苦笑いした。
「じゃあ、また連絡くれ」
と、出て行こうと背を向けた眞門に、
「待った」
と、寺西は呼び止めた。
「なに?」
「お前は大丈夫なのか?」
「へ?」
「なんで、初めてのPlay相手に首輪なんかつけた?」
「だから、それは説明しただろう? 星斗クンがSub drop からのSub space に一気に入ったから、もう一度、Sub drop させるにはいかなかったって」
「そうじゃなくて、いくらせがまれても、最初のPlayから首輪をつけるDomがどこにいる?」
「・・・・・」
「いいか、DomがSubに首輪をつけるっていう行為は、それなりの意味、プロポーズにも値する行為だってことはDomの英才教育を受けてきたお前なら充分に知っている事実だろう?」
「・・・・・」
「Domがいくら遊びでもPlay中に首輪をつけるのは、相当、そのSubのことがお気に入りだってことの証明なんだぞ。それを初めての相手のSubにするなんて・・・とてもじゃないが、正気だとは思えないんだが・・・」
寺西はどこか腹正しさを含ませた口調だ。
「本当に渋谷さんを思って、だけの理由か?」
「他にどんな理由があるんだよ?」
「お前も一緒になって暴走してたんじゃないだろうな?」
「・・・・・」
眞門はすぐに否定することが出来なかった。
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