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眞門の憂鬱②

「いいか、Subほどじゃないが、Domも早く、きちんとしたパートナーを見つけないと、メンタルが不安定になってくるんだぞ。お前の主治医として何度も忠告してるが、いつまでも症状を抑えるだけの薬とワンナイトの相手だけでは、そのうち、メンタルも体調も不調に襲われるぞ」 「・・・・・」 「まさか、今回の渋谷さんとの件。お前もその傾向が表面化し出しているわけじゃないよな?」 「・・・・・」 「お前は自分のDomの欲求をきちんとコントロール出来ているんだよな?」 「・・・・・」 念押しするような寺西のその問いかけに、眞門は病院に来る前に立ち寄った星斗との牛丼店での出来事を思い出し、とっさの返答に詰まってしまった。 「DomはSubと違って、暴走すると犯罪を犯すことが多々あるんだぞ。俺は友人が犯罪者にはなってほしくないんだが」 「変な冗談はやめろよっ、俺がそんなミスをやらかすわけないだろう? 元エリート医学生だぞ」 「お前、さっき、自分でダイナミクス科は専門外だって言ってたじゃないか」 「・・・・・」 眞門は真っ当な反論が浮かばず、口をつぐんだ。 「もういい加減、愛美ちゃんのことは諦めがついただろう?」 「!」 眞門は失恋したばかりで、痛いところをついてくると思った。 「・・・愛美のことは関係ないっ」 と、眞門が全てを言い切る前に、寺西は強引に言葉を被せた。 「いや、あるっ! 愛美ちゃんがいたから、お前は30を迎えてもまだ、パートナーを作れなかったんだろう? 大体、いくらお前が頑張ったって、愛美ちゃんとは永遠に結ばれないことをお前が一番よく理解出来てただろう?」 「・・・・・」 「それに、愛美ちゃんはもう結婚した。お前と結ばれることは100%なくなった」 「・・・・・」 「お前の運命の恋は終わったんだ」 「・・・・・」 「だから、いい加減、パートナーを探せ。いいな、これは主治医の命令だ」 「・・・・・」 【運命の恋は終わった】 それは充分に分かっている。 しかし、眞門は、まだパートナーを作るという気持ちは湧いてこなかった。 診察室を出た眞門は、「俺は全然大丈夫だろう?」と、自分に問いかけてみる。 その返答のように、途中で立ち寄った牛丼店の事件が脳裏によみがえってきた。 あの時。 星斗クンの激辛で歪ます顔を見てたら、たまらなくなった。 Subが自分で自分をイジメるなんて・・・とてもいじらしくて、可愛くて、興奮が抑えきれなかった。 そして、どうしても自分がその刺激を与えて、困った顔をさせて甘えてさせたかった。 その衝動をどうしても抑え込むことが出来なかった。 「・・・・・」 ・・・でも、まだ大丈夫だろう? 俺は・・・。 まだ、独りで全然平気だろう? そう判断したというよりは、そう言い聞かせているようだった。 「昨晩だって、俺はうまく対処したはず・・・」と、また自問自答し、星斗と出会うことになった昨晩の出来事を今度は思い返してた。

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