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ある夜の出来事④
「お兄さん」
カズキにそう声を掛けられ、表情を落としていた眞門はカズキにまた視線を戻した。
「安心してください。俺が、愛美を思う存分幸せにしますんで」
眞門はカズキの隣にいる愛美を見た。
そう言われた愛美は満更でもなさそうに嬉しそうに微笑んでいる。
カズキが美酒を味わう勝者のようにジョッキに残っていたビールを一気に飲み干した。
なんだ、これ・・・?
恥をかかされたような気がして、眞門の中で一気に怒りの炎が燃え盛った。
なんで、お前ごときの奴に、この俺が、上から目線で言われなきゃいけないんだよ・・・っ!
なんで、お前ごときのクソ野郎が勝ち誇ってんだよ・・・っ!
なんで、お前から愛美とのお別れを言われなきゃいけないんだ・・・っ!
Normalなだけで、社会の常識さえない持ち合わせていないクソ野郎なお前に、何もかもが優秀な俺がそんなこと言われなきゃいけないんだ・・・っ!
お前なんかより、俺の方がはるかに何もかもを手にしているはずだっ!
お前が俺より欠けているのは、Normalに生まれてこれなかったってだけだっ!
ふざけんなっ!!
クソ、クソ、クソ・・・っ!!
なんで、コイツなんだ!!!
嫉妬や屈辱から燃え上がった炎はDomの性質が加わったおかげで、怒りの炎へと変わり、徐々に制御できないものになってくると、全てが怒りに飲み込まれてしまい、興奮で眞門の体は小刻みに震え始めた。
「なんで・・・なんで・・・なんでなんだよ・・・っ」
体を震わせながら、眞門が悔しそうに呟く。
「お兄ちゃん・・・?」
愛美が眞門の異変にすぐに気がついた。
怒りが制御できなくなった眞門は、思わず、愛美を睨み付けてしまう。
「!」
愛美は驚いた。
いつも優しい顔しか見せない眞門が鬼のような顔をして、自分を睨み付けてきたからだ。
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