41 / 311

診察にて・・・

現状の報告を兼ねた診療の為、星斗は寺西の元を訪れていた。 「渋谷さん、その後、体調はどうですか~?」 白衣姿の寺西が以前と変わりなく、優しい口調で尋ねてくる。 「はい・・・まあ・・・」 「あまり変わりませんか?」 「そうですね・・・これと言って劇的な変化は・・・」 「そうですか・・・じゃあ、お薬を変えてみましょう」 「お願いします」 電子カルテに入力する寺西に向かって、星斗は現状の悩みを打ち明けてみた。 「先生が出演されてる動画を見ました。資料で渡された講座の。解説をされていらっしゃる」 「あ、ご覧になってくれたんですか。お恥ずかしい限りです」 と、照れながらもどこか嬉しそうに寺西は笑みをこぼした。 「それで、先生に相談したいことがあるんですけど」 「なんでしょう?」 「あの動画講座に倣って、パートナーを紹介してくれる相談所に行ったんです」 「はい」 「早く平穏な日常を取り戻したいと思って。親からもさっさと社会復帰して働けって言われてますし」 「はい」 「でも、断られました」 「・・・あっ! ひょっとして、首輪、ですか?!」 「はい。相談所の方は同情してくれたんです。でも、首輪を付けたSubには誰も会いたがらないだろうって言われて・・・首輪が外れたらまた来てくださいって・・・」 「そうでしたか・・・」 「俺、どうすれば良いんでしょう? やはり、このまま薬で様子を見るしかないんでしょうか? もし、薬で思う様な効果が出なかったら、その場合はどうなるんでしょう???」 「・・・そうですね・・・」 と、寺西は何やら考え込む。 「・・・そうだ、渋谷さん、眞門さんのことをどう思います?」 「へ?」 「眞門さんのことは苦手ですか?」 「・・・いえ、そんな・・・」 「じゃあ、好き?」 「好きと言うか・・・素敵な方だなって思いますよ」 「じゃあ、イヤな印象はないんですね?」 「・・・はい」 「じゃあ、当分の間、暫定的に眞門にパートナーになってもらっては?」 「えっ?!」 「その首輪もあいつがつけたわけですし、その責任をあいつに取らせましょう」 「いや・・・それは・・・」 星斗は戸惑った。 眞門との夜を思い出すと、眞門に顔を合わせることがとても恥ずかしいからだ。

ともだちにシェアしよう!