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あの夜の出来事②
眞門に手を繋がれて、非常階段を降り、近くの有料駐車場に止めてある眞門の愛車にふたりは乗り込んだ。
発進した車はしばらく国道を走って、高速道路に乗り込む。
星斗は乗り込んだ直後から、体勢を運転席の方にずっと向けたままで、運転する眞門の横顔をトロンとした瞳で見つめ続けていた。
「・・・なに?」
熱心に見つめられていることにあまり良い気がしないのか、眞門は星斗の様子がどうしても気になるようだ。
「好き」
「ありがとう」
「カッコイイ」
「ありがとう」
「・・・すごくカッコイイ」
「ありがとう」
「・・・好き」
「・・・ありがとう」
星斗もよく分からなかった。
とにかく、眞門から離れたくないのだ。
とにかく、眞門に触れていたいのだ。
とにかく、眞門が好きで好きでたまらないのだ。
眞門と交わりたい。
頭の中がそればかりで占領されていて、なんだかフワフワとしていて、とても気持ちが良い。
体中のどこもかしこも、『眞門が欲しい』、それだけしか湧き上がってこない。
星斗自身もかなり後になって知ることになるのだが、これが、Sub space と呼ばれる現象だった。
「こっち見て欲しい」
「ダメだよ。今は運転中なんだからね」
「ヤダ、こっち見て」
「今は無理だよ」
星斗は自分のシートベルトをいきなり外すと靴を脱ぎ捨て、眞門に顔に近づいて、頬に軽く口づけをした。
「星斗クン・・・?」
「くっつきたい」
「へ!?」
星斗はそのまま眞門に抱き着こうとする。
「・・・ちょっと、コラっ! ダメだって! 運、転、中! 前が・・・前が・・・見えないから・・・っ!」
さすがに声を荒げた眞門。
左手でなんとか星斗を制止ししようとするが、星斗はお構いなしに抱き着こうとしてくる。
「!」
眞門は慌てて、目の前に偶然現れた高速道路の非常駐車帯に車を急停車させた。
緊急停止した眞門の愛車の横をスピードを出した車が何台も追い越していく。
車が停車すると、星斗は眞門に着せられていた上着のスーツを脱ぎ、また上半身裸になると、眞門に抱き着きにいった。
「ちょっと・・・っ!」
と、戸惑う眞門を尻目に星斗は向かい合う様に眞門の膝の上に馬乗りに跨った。
「離れちゃヤダ・・・」
と、可愛く甘える星斗。
「だからって、運転中にこんなことしたら危ないだろう」
「怒っちゃヤダ・・・」
「星斗クン、いい加減にしないとお、仕・・・置き・・・」
眞門が全てを言い終わる前にまた星斗が口づけを始めた。
「星斗クン、酔っぱらてる? それともSub space ・・・か? いや、初対面でそんなわけないか・・・」
星斗の唇が放れた途端、眞門はそう嘆き、星斗の扱いにほとほと困っているようだ。
「星斗クン、俺はDomだからね」
「Dom・・・?」
「いい加減にしてくれないと、無事に帰せないよ」
「帰すの?」
「ああ」
「ヤダ・・・っ!!」
と、星斗は眞門にまた抱き着いてくる。
「・・・あっ、もう、分かった、分かったから・・・!」と、子供をあやす様に星斗の背中を優しく叩いてやる眞門。
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