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あの夜の出来事⑥

星斗が恍惚にまみれた表情で眞門を見つめる。 眞門は、自分の采配でイヤらしく顔を歪める星斗が愛おしさでたまらなくなった。 「星斗・・・」 「はい・・・」 「Cum(射精(イっ)ってよし)!」 「!!!」 そのCommandと共に、星斗の先端から白濁の体液が勢いよく、また放出された。 「星斗、Come(おいで)」 そのCommandが発せられると、首の後ろで組んでいた両手を放し、星斗は眞門に抱き着いた。 「よしよし、偉かったねー、お仕置きによく耐えたね」と、星斗の頭を優しく撫でてやる眞門。 「本当に初めてだったの・・・? なのに、Domからの射精管理に従えるなんて、優秀なSubだね、星斗は」 星斗は甘えたまま、頭を撫でられる。 「初めてなのにとてもうまく出来たから、お利口の星斗にご褒美をあげなきゃね・・・ご褒美は何が欲しい?」 星斗は眞門を物欲しそうに見つめた。 「ご褒美・・・? ご褒美をくれるの・・・?」 「ああ。私の指示が上手く出来たんだから、当然ご褒美をもらえるよ」 「じゃあ・・・知未さん・・・」 「えっ・・・」 「知未さんが欲しい・・・」 「・・・・・」 「俺を離さないで・・・」 「・・・・・」 「俺を・・・俺の全部を・・・知未さんのモノにして・・・」 「・・・・・」 眞門は星斗をじっと見つめた。 星斗の瞳を見てると、不思議と自分もそうしたいという欲望に駆られる。 このまま星斗を所有していたい。 「・・・分かった・・・それじゃあ、ご褒美は首輪(カラー)にしよう。星斗に首輪をつけてあげるね」 眞門は運転席と助手席の仕切り部分にある収納ボックス《=コンソールボックス》を開けると、ピンクのレザーの首輪を取り出した。 数日前、眞門はDomの部下にどうしてもと頼まれて、大切な取引先の社長の娘の誕生日を祝う仮装パーティーに参加させられることになった。 しかし、Domのプライドとして、仮装で人の笑われる種になるような格好は絶対に避けたかった眞門は、そのDomの部下に、無理やりバニーボーイの格好をさせ、蝶ネクタイの代わりにピンクの首輪を付けさせた。 そして、そのピンクの首輪にリードをして連れて歩き、自分はこのド変態ウサギの飼い主ですという設定で、スーツ姿に目元を覆う仮面をつけただけという強引な仮装でパーティーに参加した。 勿論、パーティー後、Domの部下は眞門の車に乗り込むなり、Domにとっての屈辱的なピンクの首輪をすぐに外すと、眞門に散々抗議し、二度と見たくないと声を大にして、その首輪を車に置いていった。 眞門はそれを思い出し、ピンクのレザーの首輪を取り出した。 眞門は星斗の首にそのピンクの首輪をつけてやる。 「痛くない?」 星斗はうんと、頷いた。 「嬉しい」 星斗はまた眞門に抱き着いた。 「知未さんのモノになれて嬉しい」 星斗はギュッと抱き着いた。 「知未さん」 「ん」 「もう一回」 「え?」 「俺にまだまだ痕を残して」 「・・・・・」 「俺にいっぱい匂いもつけて」 「・・・・・」 「俺の体に知未さんを残して」 星斗はそう言うと、眞門をまた誘惑する様に口づけを始めた。 ※  ※ あの夜の出来事を思い出し、思わず遠い目をしてしまう星斗。 やはり、何度思い返してみても、あの夜の出来事は星斗にとっては信じがたいものだった。 ・・・それで、目が覚めたら、眞門さんの寝室にいて、ピンクの首輪がついてることに気がつく、と。 「・・・・・」 そりゃ、中だしされてるよっ。 だって、俺がお願いしたんだもんっ。 てか、初めての相手に中だし要求するって何よっ。 それ、何のご褒美よっ 俺はどんだけ淫乱なのよ・・・っ。 てか、初対面で中出しを要求した相手にパートナーになってください、なんて・・・どんな顔してお願いするのよっ! 「無理だ・・・絶対に無理だ・・・恥ずかし過ぎて死ぬわ・・・」 それに・・・怖い。 あんなふうに我を忘れて、全てを求めてしまった自分が本当に信じられない。 大体、高速道路で堂々とカーセックスするなんて正気の沙汰じゃないよっ。 ・・・そして、何より、あの夜を思い出す度に股間を熱くしている自分が一番恐ろしいっ! 「はあー、俺、どれだけ自分にドン引きしたら気が済むんだろう」と、呟いた。

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