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応接室にて・・・②

「でも、それじゃあ、眞門さんってDomなのに接待とか人付き合いとか、苦もせずに出来るって、やっぱり凄く優秀な社長なんですね」 「優秀なんですかね・・・」 と、寺西は少し冷めた口調で零した。 「えっ・・・?」 「いや、あいつは幼いころからDomの英才トレーニングを徹底的に受けてますからね・・・でも、それがあいつの足枷になってるんですよ、きっとね」 「足枷、ですか?」 「あいつに魅力を感じますか?」 「へ?」 「Subとして、Domのあいつに魅力を感じますか?」 「・・・充分、素敵な方だと思いますよ」 「それはあいつがイケメンの金持ち社長だからですか? Domのあいつを素敵だと思いますか?」 「・・・・・」 星斗は返答に困った。 Domの眞門に魅力を感じるか?と、問われても正直、何がDomの魅力に当たるのか?  まだダイナミクスの世界に足を踏み入れたばかりの星斗には全くそれが分からない。 ただ、イケメンでお金持ちで親切な社長の紳士に文句はないだろう、と思う。 「眞門は全くモテませんからね・・・非モテ系Domですから」 「え!?」 星斗は意外だった。 星斗から見て、欠点が何一つなく見えるからだ。 「あいつが30にもなって、パートナーがいないのは、まあ、理由はいくつかあるんですが、そのひとつがあいつにDomの魅力が全くないってことです」 「はあ・・・」 星斗は戸惑った。 ルックスや金の力が通用しない世界が存在してるなんて! 「あいつの思考にいつもあるのはね、常に良いお手本のDomでいること、なんですよ」 「はあ・・・」 星斗には、また、寺西の話す意味がよく分からなくなった。 それの何が悪いと言うのだろうか? お手本のDomで居続けるなんて誰もが出来ることじゃないし、素晴らしいことじゃないか。 それがモテないって、どういう事だ・・・? ダイナミクスの世界に足を踏み入れたばかりの星斗には戸惑うことばかりだ。 「しかも、片思いの相手もいますしね・・・」 「そうなんですか?! だったら、俺、パートナーの申し込みなんて・・・」 「ああー、心配いりませんっ。もう永遠に結ばれることのない相手ですから。 あいつは、もう諦めなきゃいけないんですから」 と、寺西はいらない心配だからと、星斗に念押しをした。 「ホントに可哀想な奴ですよ、眞門は。あいつはDom本来の喜びを知らないまま生きているんです。Domの英才教育に長すぎる片思いのせいで・・・」 「はあ・・・」 眞門についてひとり語る寺西の話は、最後までちんぷんかんぷんの星斗だった。 「だから、老舗高級店のうな重をおごりで、しかもテイクアウトして持ってきてくれって頼んだら、文句も言わずに、素直に持ってきてくれるでしょう。 普通のDomなら、こんなことしてくれませんよ。 『俺を誰だと思っているんだ!』の一言で終わりです。 でも、眞門がそれを平気しちゃうのは、Domだから、こうありたいっていう思い込みがあるんですよ。 Domは強い者、守ってやる者、頼られる者。あいつは王子様でありたいんです」 「Domは本来はそうじゃないってことですか?」 「違いますよ、本来、Domは・・・」 と、寺西がそこまで言いかけたところで、トントンと応接室のドアがノックされた。 「はい」と、寺西が返事すると、「おまたせ~」と、うな重が入った紙袋を持った眞門が姿を見せた。 「あれ、星斗クン!?」 眞門は寺西から何も聞かされていなかったようで、星斗を見ると驚いたような声をあげた。 「こんにちは」 「こんにちは。元気にしてた?」 「はい」 眞門がうな重の入った紙袋を机の上に置くと、「待ってました~」と、寺西が遠慮なく、勝手にうな重を紙袋から取り出していく。 「はい、これ、渋谷さんの分です。どうぞ」 「ありがとうございます」 寺西がうな重の箱を星斗の前に真っ先に置いてくれたので、お礼を口にした。 「星斗クンも一緒に食べるんだ? それで、三人分買ってこいって言ったのか」 と、眞門はどこか納得した顔を浮かべた。

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