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期間限定の・・・

星斗はうな重をご馳走になると、寺西のクリニックを後にした。 ・・・美味いっ! 美味過ぎだっ!! 俺が今まで食べてきたうな重の中でNo. 1。 いや、今までの食べてきた全食物の中でもNo. 1と言っても過言じゃない美味さだった・・・。 「ハアー」と、星斗は軽くため息をつく。 まさに、勝ち組と負け組の現実だよ。 ・・・当然だ。 あんなご馳走を普段から食べてる人が俺なんかを相手にするわけがない。 そんな落ち込みを抱える星斗の背に向かって、「星斗クンーっ!」と、眞門が走って、後を追いかけてきた。 「良かったら、車で送ってくよ」 と、眞門。 「えっ、いや、でも・・・ご馳走になった上に送ってもらうだなんて・・・」 「気にしないで乗って。外は暑いから」 「いや・・・」 星斗はやんわりと断った。 ふたりきりで車に乗るなんて・・・。 「ごめんね、パートナーの申し込みを断る様な形になって」 眞門は改めて、謝りに来たようだ。 「ああ、全然気にしないでください」 「じゃあ、車に乗って」 「はあ・・・」 躊躇いを見せる星斗。 「・・・俺、やっぱり嫌われてる?」 「え?」 「なんか、警戒されてるよね」 と、眞門は苦笑いを浮かべた。 「いえ、違うんです!」 「なにが?」 「・・・その・・・俺、思い出したんですよ、この前の夜のこと」 「そうなんだ」 「全てではないんですけど、大体のことは・・・」 そこまで言うと、星斗は申し訳ない表情を浮かべた。 「俺・・・眞門さんに合わせる顔がないなって、本当に申し訳なく思ってて・・・」 「どうして?」 「いや、あんな醜態をさらしておいて、記憶がないからって、眞門さんのことをずっと悪者扱いしちゃって・・・本当にすみませんでした」 と、星斗は頭を深く下げた。 「いいよ、誤解が解けたんなら。もう気にしなくて」 と、眞門はいつもの優しい笑みを浮かべる。 「でも、思い出せて良かったです。Domの初めての人が眞門さんってことを思い出せて」 「え?」 「一応、これでも20歳は過ぎてるんで、経験はいくつかあるんです。 そういう、大人の行為的なことは。 でも、ずっと、そういう大人の行為がすごく苦手で・・・。 『あれしなきゃ、次はこれしなきゃ、これしたら怒るかな? これしたら喜ぶのかな?』みたいな、段取りに気を取られるっていうか、全然楽しめないって言うか・・・自分を全く解放出来ないみたいな感じで・・・その・・・正直、好きじゃなかったんです、大人のそういう行為が」 「・・・・・」 「でも、思い出した眞門さんとの経験はそう言うものが全くなくて・・・認めたくないんですけど・・・あれが本来の俺なのかもなーって・・・」 星斗は恥ずかしくなって、思わず、顔を下に向けた。

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