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Domの弟
眞門とまた週末に会う約束をして別れた星斗はその日のうちに帰宅した。
そして、深夜を迎え、ようやく家族の最後になって、入浴が許された順番が星斗に回ってきた。
好きな時間に入浴が許されないなんて・・・やっぱりニートの肩身は狭い。
そんなことを嘆きながら、風呂に入ろうと脱衣所で星斗が服を脱ぎかけた時、脱衣所のドアが突然開いた。
「! なに!?」
現れたのは、星斗の弟の明生だった。
「歯磨き」と、入って来た用件だけを無愛想に言う明生。
星斗の家は風呂と脱衣所と洗面所が同じ空間にあった。
明生は星斗に構わず、洗面所に来ると、歯磨きを始めた。
星斗も明生に構わず、服を脱ごうとしたが、ジローっと何やら観察されているような視線を感じる。
「!」
星斗は思わず振り返った。
明生が鏡越しに星斗を見つめている。
「・・・な、なに?」
明生の視線が気になって、星斗が鏡越しに問いかけた。
明生は歯を磨きながら、振り向いて、星斗を見つめる。
「そのピンクの首輪はどうしたの?」
「へ・・・?」
「おふくろから聞いたけど、兄貴、Subなんだって」
「ああ」
「おふくろは働きたくないから、嘘ついてるだけって言ってるけど?」
「まあ・・・そう言われても当然だよな・・・」
明生は口の中をゆすぎ終わると、星斗にゆっくりと近づいてきた。
「・・・な、なんだよ?」
明生から奇妙な圧を感じる。
明生が星斗をじっと見つめる。
「兄貴、Kneel 」
「!」
明生がCommandを発した途端、星斗はペタンっ!とその場で座り込んでしまう。
「えっ・・・」と、唖然とし、明生を見上げた星斗。
「マジか・・・嘘じゃなかったんだ・・・」と、驚きと共に洩らす明生。
「なんで?! なんで、お前がCommandを使えるの?!」
明生はゆっくり腰を下ろすと、いきなり、星斗をぎゅっと抱きしめた。
「!?」
「ごめんな、今まできつく当たって」
「えっ・・・」
「だって、兄貴がNormalなのが羨ましくて・・・Normalのくせに、なに我がまま言ってんだって・・・Normalだとばかり思ってたから兄貴にずっと八つ当たりしてた・・・辛い思いさせたよな、ごめんな」
そう言うと、明生は星斗の頭を優しく撫でる。
誰だよ、これ・・・!?
俺の知ってる弟じゃないんですけどーーーっっっ!?
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