60 / 311

Domの弟②

「兄貴がSubって知ってたらもっと優しくしてたのにな」 そう言うと、明生は申し訳なさそうに微笑んだ。 「!」 え、ホント、誰・・・?! 誰なの、こいつ!? うちの弟が急にカッコよく見えるんですけど!? 俺の胸がキュンっ!て、なぜだか、キュン!って鳴って仕方ないんですけどーーっっっ!!! 「・・・お前、Domだったの?」と、星斗は確認のため、当たり前のことを尋ねた。 「ああ。今年の春に突然、気を失って倒れたことがあっただろう? あの時の検査でたまたま判明したんだ」 「なら、母ちゃんは? 父ちゃんは知ってるのか?」 「言ってない」 「なんで!?」 「言ったところでうちの親に通じるわけないだろう。ふたりともNormalなんだから。ダイナミクスのことなんて全然理解できてないじゃん」 「でも、だからって・・・」 「それに、学校を転校させられる。DomはDom専用の学校に入学しなきゃいけないみたいな風潮があるから。俺は・・・転校したくないんだ」 「そういえば、お前、部活頑張ってるもんな」 「・・・・・」 知らなかった。 うちの弟は、まだ高校生なのに、誰にも打ち明けず孤独に自分の人生と向き合ってたなんて・・・。 なのに、俺は・・・。 なんか、何かにつけて文句ばっかり言ってた気がする。 「・・・ごめんな、俺、兄ちゃんなのに、お前のことを全然気にかけてやんなくて」 「何言ってんだよ」 と、明生は気にするな、と言わんばかりにまた微笑んだ。 「で、兄貴、その相手は良い人なのか?」 「え?」 「首輪をつけたってことは、パートナーが見つかったってことなんだろう?」 「ああー、それは、なんていうか・・・」 と、星斗は返答に困った。 真実を話すべきなんだろうか? でも、高校生の弟に・・・? 余計な心配を高校生の弟にかけてしまいそうで、いくらニートの兄としてもそれはどうなんだろうか・・・? 良心が痛んだ星斗は真実は隠すことにした。 「何かあったら、遠慮なく俺に相談してこいよ」 「え?」 「兄貴はSubなんだから、遠慮なく、Domの俺を頼れ」 と、今までの無愛想が嘘のように、明生はまたまた優しく微笑む。 「!」 エエーっ、だから、誰なの、こいつ!? こんなの、俺が知ってる弟じゃないんだけどっ。 うちの弟、めちゃくちゃカッコイイんですけどーーーっっっ!!! 「・・・あ、ありがとゥッ⤴」 明生のカッコ良さに思わず緊張して、星斗の声が少し裏返ってしまった。 星斗は咳払いすると、「お前もなにかあったら、俺に相談して来いよ。こんな兄貴でも力になれることがあるかもしれないんだから」と、自分だけ緊張しているのが悔しかったので、少しだけ兄ぶってみた。 「ああ、ありがと」 明生は嬉しそうにまたまた微笑むと、星斗の頭を軽くポンポンと叩いて、脱衣所を出て行った。 「!!!」 ええーっ、なに、今の・・・?! なんで、そんなイケメンしか使えない技を簡単に使っちゃってんの、お前っ?! なんなの、これ!? 俺、明生にトキメいてるみたいなんですけどーーーっっっ?! ダイナミクスの性の世界って近親相姦も当たり前だったりするんですかーーーーっっっ!!?

ともだちにシェアしよう!