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ボウリングで勝負②
「あーあ、負けちゃった・・・」
最後の投球を終えた眞門は悔しさの素振りも見せずに、星斗に向かって勝敗の結果をそう告げた。
「真剣にしました?」
星斗は眞門に疑いの目を向けた。
「したよ」
「・・・・・」
「どうしたの?」
「・・・・・」
星斗は不満だった。
「だって、ガーター多すぎません? 最初投げた時はプロ並の腕前だったじゃないですか?」
「そう? たまたまじゃない。だって、30歳だよ。あんな重い球をそんな何回も投げれないよ」と、眞門は右肩を解すように回して、白々しく口にした。
嘘だ。
ジムに行ってるし、筋肉バッキバキじゃん。
脱いだら、30才には見えない体してるじゃんっ!
「じゃあ、負けた罰ゲームとして、おいしいお肉でも星斗クンにご馳走させてもらおうかな」と、眞門は口にした。
そうか。
俺が普段から食事をごちそうになることに遠慮がちだから、遠慮させないように気遣って、わざと負けたのか・・・。
星斗は無性に腹が立った。
それが何なのかは分からない。
ただ単に、罰ゲームのお楽しみを奪われただけのことかもしれない。
しかし、自分が欲しいものはそんな優しさじゃない!という怒りが心の底から湧きあがってくる。
「じゃあ、行こうか」と、眞門が足を進めると、星斗は背後から背広の裾を掴んだ。
「ん?」
と、立ち止まる眞門。
「どうしたの?」
「お仕置きしていいですか?」
「ええ?」
眞門は一瞬、耳を疑った。
「眞門さんは負けたんだから、勝った俺の言うことなら、なんでも聞くんですよね」
「・・・ああ」
眞門は否定しなかった。
「Domの俺にお仕置きするの?」
「はい」
「分かった」
眞門は余裕たっぷりの表情で微笑んだ。
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