69 / 311

ボウリングで勝負②

「あーあ、負けちゃった・・・」 最後の投球を終えた眞門は悔しさの素振りも見せずに、星斗に向かって勝敗の結果をそう告げた。 「真剣にしました?」 星斗は眞門に疑いの目を向けた。 「したよ」 「・・・・・」 「どうしたの?」 「・・・・・」 星斗は不満だった。 「だって、ガーター多すぎません? 最初投げた時はプロ並の腕前だったじゃないですか?」 「そう? たまたまじゃない。だって、30歳だよ。あんな重い球をそんな何回も投げれないよ」と、眞門は右肩を解すように回して、白々しく口にした。 嘘だ。 ジムに行ってるし、筋肉バッキバキじゃん。 脱いだら、30才には見えない体してるじゃんっ! 「じゃあ、負けた罰ゲームとして、おいしいお肉でも星斗クンにご馳走させてもらおうかな」と、眞門は口にした。 そうか。 俺が普段から食事をごちそうになることに遠慮がちだから、遠慮させないように気遣って、わざと負けたのか・・・。 星斗は無性に腹が立った。 それが何なのかは分からない。 ただ単に、罰ゲームのお楽しみを奪われただけのことかもしれない。 しかし、自分が欲しいものはそんな優しさじゃない!という怒りが心の底から湧きあがってくる。 「じゃあ、行こうか」と、眞門が足を進めると、星斗は背後から背広の裾を掴んだ。 「ん?」 と、立ち止まる眞門。 「どうしたの?」 「お仕置きしていいですか?」 「ええ?」 眞門は一瞬、耳を疑った。 「眞門さんは負けたんだから、勝った俺の言うことなら、なんでも聞くんですよね」 「・・・ああ」 眞門は否定しなかった。 「Domの俺にお仕置きするの?」 「はい」 「分かった」 眞門は余裕たっぷりの表情で微笑んだ。

ともだちにシェアしよう!