「俺はやっぱり甘えられるよりも、こうやって甘えていたいです」 「俺は甘えてもらいたいよ。こうやって、星斗クンに甘えてもらってると、自分の居場所を作ってもらってる、そんな気がしてすごく落ち着くんだ」 Domの人って、そんな感覚で生きているのか。 星斗はやはり、Subの自分の中にはない感覚だな、と理解した。 「Domって、みんなそうなんですか？」 「何が？」 「いや、うちの弟もDomなんですよ」 「え？」 眞門は初めて聞く話だった。 「弟も偶然、今年の春に分かったみたいで」 「そうなんだ」 「それで、俺のことをSubだって知ったら、今まで辛く当たってごめんなって謝ってくれて。 で、俺はDomだから、Subの兄貴には俺がいつでも味方してやるからなって言ってくれて。 それから、母親からグチグチと説教を受けだすと、弟が毎回庇ってくれるようになったんです・・・」 「へえー」 「もうっ、それがめちゃくちゃカッコ良いんですよ、あいつ。ホントに、常に俺の味方になってくれて。王子様っていうとさすがに言い過ぎになりますけど、特撮ヒーローの主人公みたいな感じなんです・・・俺は変身すら許されないモブキャラ止まりですけど、あいつは間違いなく変身したら、絶対レッドを担うヒーローです。それで、俺みたいなモブキャラを必ず助けてくれるんですよ」 「・・・・・」 「ここだけの話。俺、兄貴なのに、ちょっとトキメいたりするんですよ」 「・・・・・」 「ホント、兄貴なのに、申し訳ないなーって思ってて・・・マジで近親相姦もありえたりするんじゃない！？って思うくらい・・・」 と、星斗は冗談ぽく笑った。 「でも、それがDomの習性なら、俺は弟に遠慮なく甘えておこうかな〜」 「・・・・・」 「ホント、あいつの兄貴に生まれてきて良かったなー」 「・・・・・」 星斗の肩に回していた腕を眞門が急に引っこめた。 「！？　えっ・・・」 弟の話を上機嫌で話していた星斗だったが、気がつくと、さっきまで優しいはずだった眞門の顔がムスっとした不機嫌な顔に変わっている。 「・・・あの、どうかしましたか？」 「星斗。それ、わざと？」 「へ？」 眞門の口調が何やら厳しい。 「俺の前で他のDomを褒めるなんて・・・マナー違反なんだけど」 「えっ、いや・・・ごめんなさい、そんなつもりは・・・」 「星斗のことを癒してるの俺じゃないの？」 「・・・・・」 「てか、星斗のパートナーは俺なんだけど・・・」 「・・・・・」 ヤバい・・・。 また、眞門さんを怒らせたみたい。 知らない間に、何かの地雷を踏んだ・・・？ 眞門が星斗を軽蔑する様に見つめた。 「だったら、俺にしたみたいに、弟をある夜のように誘惑すればいいじゃない？　俺じゃなくて大好きな弟から首輪をもらえたかもよ」 「！」 眞門さんが本気で怒ってる。 なんで、急に怒ってんだろう・・・？　 星斗は状況が全く理解出来なかった。 「弟ですよっ！　弟にそんなこと・・・出来るわけないじゃないですか・・・」 「本当に？」 「当り前ですっ」 「だったら、証明してよ」 「証明・・・？」 「俺が見れて、弟が見れないもの」 「・・・・・」 「俺が星斗のパートナーで、弟は何があってもただの弟だってこと」 「・・・・・」