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豹変
証明って・・・。
そんなもの、どうすれば・・・?
星斗はソファで座ったまま委縮した。
そっと、眞門の顔色を伺ってみる。
眞門はまだブスっとした不機嫌なままだ。
どうしよう、やっぱり本気で怒ってる。
明生のことをそんなつもりで話したわけじゃなかったのに・・・。
星斗は焦った。
「どうしたの? 早く証明してみせてよ?」
「そんなこと言われても・・・何をどうすれば・・・」
「だったら、俺が勝手に証明させてもらう」
「・・・えっ?」
「星斗、Stand Up 」
眞門は右の人差し指を軽く上にあげ、ソファから立ち上がる様に星斗にCommandを出す。
星斗は肌で感じた。
今の眞門さんのCommandは全然優しくない。
星斗はCommandで指示された通り、眞門の前に立った。
「Strip 」
「!」
戸惑いながらも、Commandに従い、シャツのボタンを外し、シャツを脱いだ。
上半身裸になると、眞門にじっと見つめられたまま、チノパンのベルトをゆるめ、ホックを外し、チノパンを脱いで下着一枚になった。
「どうしたの? 早く、全部脱いでみせてよ」
「・・・・・」
星斗にはためらいがあった。
眞門のCommandにいつもの優しさを全く感じないのだ。
いつもは命令に従うことに悦びを得た。
脱ぐ悦び。
見られる悦び。
体の底から湧き上がってくるような、ゾクゾクするたまらない悦び。
しかし、今日の眞門のCommandに対し、そんな悦びが全く湧きあがってこない。
むしろ、暴力を与えられ、力ずくで無理やり脱がされているような感覚にさえ感じてしまう。
「星斗、Strip 」
一向に下着を脱ごうとしない星斗に業を煮やしたのか、眞門がCommandを再度発令して強引に脱がしにかかった。
Commandには絶対に逆らえないSubの性を持つ星斗。
勝手に手が下着に伸びると、下着をゆっくりと下ろし、眞門の要求通り全裸になった。
しかし、星斗は股間に手を軽く置くことで恥ずかしいところは眞門には見られないように隠した。
「随分、恥ずかしがってるね。凄くいい眺めだよ」
「・・・・・」
「こんな姿の星斗を見たら、たとえ弟の立場でもDomだったら興奮するんじゃない?」
「!」
星斗は眞門の意地悪な言い草にムカっと来て、ムっとした不服そうな顔を露わにした。
Domの眞門は星斗のその顔がとても気に入らなかった。
「ごめんなさい。俺がこんな姿を見られたいのは眞門さんだけです!」
いつもの星斗なら、こう言って直ぐに謝るはずだ。
なのに、今日の星斗に限ってどうしてそれを口にしないのか?
言いようのない怒りが体中を巡り、どうしてだか、腹が立って腹が立って仕方ない眞門は更にきつい口調で、「星斗、Knee !!」と、発した。
星斗はその勢いに負けたように、べたっと床に座った。
「Open 」
「えっ・・・」
「星斗、Open !」
眞門のその威嚇するようなCommandに反応するように、星斗は両手を後ろに着いた姿勢を取ると、両足を開いた。
「Attract 」
「えっ・・・」
「だって、弟は誘惑出来なくても、俺ならあの夜みたいに誘惑してくれるだろう?」
「・・・・・」
「星斗、Attract 」
「!」
眞門はソファに深く座り直すと、見物させてもらうと言わんばかりに、足を組んで、腕も組んだ。
Commandが発令された以上、Subの星斗に拒否出来る力はない。
星斗は右手を伸ばすと、自分のまだ小さいままのペニスを弄りだした。
そして、少しずつ、少しずつ、大きくしていく。
星斗は自分のペニスを弄りながら、眞門を見つめた。
眞門は冷めた目で星斗を見つめる。
そんな程度じゃ、俺を悦ばせられないと言わんばかりの目をしている。
イヤだ・・・。
こんなの、俺がずっと待ち望んでいた週末じゃない・・・。
もっと優しくて甘い夜を期待してた。
俺と眞門さんにしか出来ないふたりだけの時間。
いつか、お別れが来るから、ふたりだけにしか楽しめない時間を作って楽しもう。
そう言ったのは、眞門さんなのに。
俺は少しでも楽しく過ごしたいのに・・・。
なのに、なんで・・。
こんなのイヤだ。
・・・でも、嫌われたくない。
眞門さんには絶対に嫌われたくない。
嫌われたら、生きていけない。
きちんとしなきゃ、許してもらえない。
星斗は許しを請うような瞳で眞門をじっと見つめたが、眞門は全く許す気配がなかった。
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