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豹変②

「・・・星斗、そんなんじゃダメだよ」 眞門は呆れたように口にした。 「・・・どうすれば?」 「左手が空いてる」 「えっ・・・」 「左手でお尻を解さなきゃ」 「!」 「どうして、そこを解さないの?」 「・・・・・」 「俺は、俺のことを誘惑しろって命令したんだよ」 「・・・・・」 「そこを俺に使わせないつもり?」 「・・・・・」 「その場所こそ、弟に絶対に使わせちゃいけない場所なんじゃないの?」 「・・・・・」 「何してるの?」 「・・・・・」 「早くっ」 「・・・・・」 「俺がそうしろって言ってんだよ、何してるの?」 眞門は何にそんなに苛立つのか、言葉をまくし立てるように口にする。 「・・・どうしてもやらないつもり?」 「・・・・・」 「今日の星斗は聞き分けのとても悪い子だね」 「・・・・・」 「そうか、仕方ない」 眞門の目がギロッとした。 「星斗・・・Attract(お尻をいじる姿で、俺を楽しませなさい)」 「!」 あの夜、眞門さんとカーセックスした夜以来、自分のお尻なんて試したことがない―。 Commandが出された以上、従うしかない星斗は近くにある大きなクッションに背をもたれると、両足を大きく開けたまま、左手で尻の割れ目にある恥部を弄り始めた。 初めての、ぎこちない手つきで、自分の尻の恥部を虐めてみた。 イヤだ、こんなの恥ずかしい・・・。 見ないで・・・。 お願いだから・・・早く・・・早く許してくださいっ! 「気持ちいいだろう?」 眞門の問いかけに星斗は首を横に何度も振る。 「ちゃんとイジってないからじゃない?」 その質問にも星斗は首を何度も横に振る。 「・・・だって、俺、お尻なんて・・・今まで自分でいじったことないっ」 「じゃあ、今、星斗がしている行為をスマホで撮影して、それを弟に送って観てもらおう。で、教えてもらうんだ。ヒーロー並みに頼りになるんだろう? どんな行為を見せれば、どうでも良い存在のパートナーのDomの俺を喜ばせられるか、きちんと教えてくれるんじゃない?」 「!」 星斗はとても悲しい気持ちに襲われた。 なぜか、眞門に助けられたあの夜のDomの女達に遭わされた酷い出来事までが脳裏によみがえってくる。 「どうして・・・どうして、今日はそんな意地悪なんですかっ!」 「だって、星斗は癒してもらえるDomなら誰だっていいんだろう? 俺以外のDomでも」 「違いますっ! 俺は眞門さんが良いっ!」 「本当に?」 「だから、さっきも言ったじゃないですかっ! 俺は眞門さんと出会えて良かったって!!」 そう大きな声で訴えると、星斗は大粒の涙を流して号泣してしまった。 「!」 「俺は眞門さんが良いって言いました!!」 星斗の頬を伝うたくさんの涙を見て、眞門は怒り狂った感情から急に解放されたように我に戻った気がした。 そして、この状況はマズい。 瞬時にそう気がついた。 このまま放置していたら、星斗がSub drop(サブドロップ)に落ちる。 「星斗、Come!(早く、俺の胸の中においで) 」 眞門は急いで自分の胸の中に飛び込んでくるように、星斗にCommandを発した。 星斗は急いで立ち上がると、眞門に飛び乗る様にして抱き着いた。 「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」と、言って、眞門の胸で子供のように泣きじゃくる星斗。 「俺こそ、ごめん・・・」 眞門も素直に謝ると、星斗を安心させるように強く抱きしめた。 星斗は少しすると、Sub drop(サブドロップ)せずに落ち着きを取り戻し始めた。

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