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家族と食事会へ

翌日。 日曜日の夕暮れ時を迎えようとしている頃、眞門は愛美との待ち合わせ場所へ愛車で向かった。 愛美と合流した後に母親を迎えに行く段取りになっているからだ。 と、眞門のスマホがメッセージが届いたことを知らせる。 星斗からだった。 【お忙しいところすみません。どうしても、会ってお話したいことがあります。時間を作って頂けませんか。よろしくお願いします】 眞門は返信する内容に迷った。 星斗クンとは、もう会わないつもりでいるのだから、きちんとそれを伝えるべきだ。 それが俺だ。 というか、それが今までの俺だった。 なのに、なぜか、星斗クンに対してはそれが出来ない。 出張だから会えないなんて・・・。 なんで、俺はあんな嘘のメッセージを送ってしまったのか・・・。 ・・・いや、違うな、本当は分かってる。 自分の中に棲む得体の知れない何者かが、あの夜からずっと俺に語りかけてくる。 『お前は星斗を本当に手放すつもりなのか?』 それが原因だ。 俺はその声に耳を傾けてしまう度、星斗クンにお別れを言うことに躊躇してしまう。 だから、あんな情けないメッセージを返信してしまったんだ。 眞門は散々悩んだ挙句、結局、また自分の中にあるポリシーに反するような、星斗と会う機会を残せてしまうようなメッセージを返信してしまう。 【週末に突然の出張になったのは、新しい事業を始めたせいです。今はその事業に時間を取られています。当分こちらには帰ってこれないので、仕事が一段落したら、こちらから連絡します。申し訳ない】 返信した後、眞門は自己嫌悪に陥った。 何やってんだ、俺は・・・。 もう、ダメDomなんかじゃなくて、ダメ人間だっ・・・! 俺はいつから、こんな情けない人間になった・・・!? マナーをきちんと守る俺はどこにいった!? きちんとお別れを告げてあげないと星斗クンが迷惑するだけだろうっ。 眞門は星斗と出会ってから、30年かけて積み上げてきたものが音を立てて全て崩れて行く。 そんな気がした。 眞門はなんとか気持ちを立て直すと、愛美との待ち合わせ場所に向かった。 待ち合わせ場所に到着すると、既に愛美の姿があった。 愛美は眞門の愛車を見つけると、笑顔で手を振りながら、すぐに車に乗り込んできた。 「久しぶり」 はしゃぐように笑顔を振りまく愛美を見て、眞門は久しぶりの再会にも拘らず、既にげんなりとした。 着物の柄に使われるようなクラシック調の花の絵柄が散在したデザインのチョーカーを愛美が首に付けて現れたからだ。 あの野郎・・・っっっ。 眞門はすぐに愛美の夫、カズキの仕業だと考えた。 誰でもパッと見ればわかる着物柄に使われるような和風の花のデザイン。 着物デザイナーのカズキが制作したチョーカーに間違いないとすぐに見当がついた。 あいつ、マジで俺にケンカを売ってんのか?! 眞門は思わず勘ぐりたくなった。 Domにとって、首輪(=首元につけるアクセサリー。チョーカーなども勿論含む)にどんな意味があるのか? カズキはそれを知っていて、愛美にわざと付けさせたのではないか? 「・・・それ、凄く似合ってるな」 眞門はわざとらしく愛美のチョーカーを褒めてみた。 「ホントに!? カズキさんが今度プロデュースする新商品なの。今夜、食事してくるって伝えたら、折角だからお兄さんにぜひ見てもらって言われたから付けてきたの。褒めてたよって伝えておくね。絶対に喜ぶと思う」 愛美は嬉しそうに笑みをこぼした。 眞門は心を読まれないように笑顔を作った。 あの野郎、やっぱりわざとだろうっ。 いつか、絶対、息の根を止めてやるからなっ。 覚えてろよ! 眞門は心でそう固く誓う。

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