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アフターケア

気づけば、深夜の2時を過ぎていた。 星斗と眞門は寝室に移動した。 眞門に借りた、一回りぐらいサイズの大きいスウェットを着た星斗は、広いベッドの真ん中で、眞門の胸の中に包まれながら眠りに着こうとしていた。 「・・・あのー、これがAfter care(アフターケア)・・・っていうやつですか?」 欲望に流されてしまい、大切なことを聞けなかったので、今更ながらと思うが確認も込めて星斗は聞いてみた。 「・・・うーん、まあ・・・」 眞門はどこか上の空、そんな返答だった。 それよりも胸の中で抱きしめる星斗の頭を「良い子、良い子」と言わんばかりに、ずっと優しく撫でてる方に心が奪われているようだった。 「そうですか・・・」 「・・・あんまり好みじゃない?」 「そういうわけでは・・・」 正直、星斗は照れくさくて仕方なかった。 20歳にして、初めて抱かれる男の胸の中。 恐ろしいほどに「悪くない」。 そう感じてしまう自分がいる。 女性を抱いて眠った時よりも、今の方が幸福感を感じてしまう。 自分はやっぱりSubなんだ。 改めてそう思う。 しかも、この甘々にされている男についさっきまで、容赦なく尻を叩かれて、歓喜の声をあげてたなんて・・・。 何もかもが自分の想像を超えた先の出来事だ。 眞門と知り合ってから、少し前までの自分の人生ではありえなかったことばかりが起きてる。 「・・・眞門さん」 「ン?」 「俺って人間は、結局、自分の変態性にただ気がついた、ってだけってなんでしょうか・・・?」 「・・・へ?」 「・・・だって、眞門さんにスパンキングされて・・・あんな・・・喜ぶだなんて・・・」 「そんな風に言わないでよ。そんなこと言われたら、俺も変態になっちゃうじゃん。星斗クンにお仕置きしたくて、星斗クンにわざとゲームを負けさせたんだから」 「・・・・・」 やっぱり、そうだったんだ。 だから、あんな物欲しそうな瞳で、ずっと俺を見つめてきてたんだ。 多分、スカイダイビングも俺に罰ゲームをさせたかっただけなんだろうな。 でも、星斗は悪くない気分だった。 自分もどこかで、そういうものを求めていた。 それがさっきのスパンキングでよく分かった。 しかも、その後にこんな甘々なことをされるなら、明日でも明後日でもまたされたい。 俺はこうやって、眞門さんの側にいて、叱られて、甘やかされていたい。 「俺たちにしか出来ないことをして、これからも楽しもうね」 「えっ・・・」 眞門が語りかけてきた。 「俺達は逆だから。普通は永遠を求めてパートナーになるけど、俺達は終わりを求めたパートナーだから。普通と違うんなら、他のカップルが出来ないようなことをして最後まで楽しもうね」 「・・・・・」 そっか。 だから、勝負事ばっかりになっちゃってんのか。 普通じゃない関係だから。 深くなれない関係だから。 いつでもお別れできるように。 後腐れないように。 俺たちのPlayはただのゲーム。 「俺と星斗クンしか作りだせない時間を楽しもうね」 「・・・・・」 「きっと、星斗クンの運命の相手の胸の中はもっと居心地が良いはずだけど・・・」 「・・・・・」 「今は俺の胸の中でこうやって休んで、この首輪を早く外そうね」 「・・・・・」 優しく微笑む眞門の顔を見て、星斗の胸はなぜか寂しさでいっぱいになった。 「おやすみ」 眞門は星斗の額に軽く口づけをした。 「おやすみなさい・・・」 星斗は眞門の胸に近づけるだけ近づいて、顔を埋めた。 Playで得た先程までの幸福感が嘘のようにどこかに消えて失せて、寂しくて仕方なったからだ。

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