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After careの夜

お仕置きの時間を終えると、星斗は寝室に連れていかれ、恒例となったAfter careの時間が今度は始まった。 お仕置きで受けた痛みを癒すように、星斗は眞門の胸の中に包まれるように抱かれていた。 「・・・ごめんね、星斗クン。とても痛かったよね・・・」 さっきまでの怒りが嘘のように、眞門はいつもの優しい眞門に戻っていた。 眞門の胸の中で優しく包みこまれる、上半身裸の星斗の体には、すでに紫に変色してしまった噛み痕や強く吸うことによって出来てしまう赤い痣が胸の辺りを中心に無数に刻まれていた。 「いいえ」 確かに痛かった。 でも、その分、同じくらいの悦びがあった。 眞門に罰せられる悦び。 眞門に躾される悦び。 眞門が触れる唇から、少しずつ、眞門に支配されていく―。 『眞門の所有物でありたい』 気がつくと、そんな願いの下で体の全てを眞門に預けていた。 これがSubって生き物なんだ・・・。 星斗は明らかに自分の中で変わっていく性の欲求を静かに受け止めていた。 「星斗クン。もし、イヤだって思ったら、いつでも、Safe wordを発動して良いんだからね」 「えっ・・・」 「我慢することないんだからね」 「・・・・・」 自分を諌める様に口にした眞門は、星斗の体に刻まれた痕を見て、とても反省している様子だった。 しかし、星斗は思った。 我慢なんかしていない。 むしろ、あのまま、もっとめちゃくちゃにされても良かった。 こうやって、眞門の胸にずっと抱かれることが許されるなら、もっと酷いことをされても構わない。 「Safe wordを発動したら、Domは大変な目に遭うんじゃないんですか?」 「らしいね。俺も詳しいことは分からない。俺は発動された経験が一度もないから。聞いた話だと、酷い場合は入院するDomもいたって話だけど・・・」 「入院って・・・そんなヤバいことが起きるんですか?」 「当然だよ。PlayはDomが全責任を持って行う行為だ。己の欲望に流されて、Subの心を見失ったら、発動されて当然だ」 「・・・・・」 「Safe wordはSubのPlay中の心理状態とリンクするんだ。Subの心が闇に落ちて行けば落ちていくほど、Safe wordの威力は増す。だから、悪いDomは最初からSafe wordを設定しなかったり、Subの口をテープなんかで塞いで、物理的に発せなくする奴もいる」 星斗はなぜか寂しくなった。 眞門がどうして、そんな話をし始めたのか。 どうして、自分との間にSafe wordなんて言葉を持ち出すのか。 確かに信頼関係のない相手なら、Safe wordが必要なのは分かる。 けど、俺は眞門さんという人を信頼している。 信頼しているDomに身を任せる事がそんなにいけない事なのか? 信頼するDomと欲望に流されてしまう事がそんなにいけないことなのか? むしろ、自分は眞門となら欲望の果てまで行き着いても構わない。 それで眞門に殺されることになったとしても本望だと思っている。 「・・・俺は・・・眞門さんには絶対使いません、Safe word」 「えっ・・・」 「信じているんで、眞門さんのこと」 「・・・・・」 「眞門さんは悪意を持って、俺を傷つけたりしない」 「・・・・・」 「俺は・・・知未さんという人を信じています」 「・・・・・」 「知未さんになら、安心して全てを委ねられます」 眞門は優しく抱いていた星斗をギュッと強く抱きしめた。 「・・・ありがとう、星斗クン。今夜の俺にそんなことを言ってくれて。それ、Domにとって、一番の褒め言葉なんだよ」 星斗はすごく嬉しかった。 こんな自分が眞門の役に立てた。 そんな気がして、すごく嬉しかった。 「ありがとう。来週も会ってくれるかな?」 「俺も会いたいです」 ふたりはまた会う約束をして、この夜のPlayを終えることにした。

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