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ある夜の出来事 ー非常階段にて④
「分かっただろう? キミ達は愚かでバカで何の教養も持ち合わせない、社会の役にすら立つことのできない、出来損ないのDomなんだって」
「・・・はい。本当に申し訳ありませんでした」
「じゃあ、どうすればいいか分かるね?」
女は最後の力を全力で振り絞って、ゆっくりと眞門にスマホを差し出した。
「よろしい。やれば、お利口のSubみたいに出来るじゃないか」
眞門はそう言って、スマホを奪うと、自分の足元にストンと落とした。
そして、怒りに任せて何度も何度もスマホを踏んづけると、スマホを粉々にして
使えなくした。
「!」
それと同時に、Domの女達の脳裏に恐怖のビジョンが流れ込んできた。
今度は自分たちの番だ。
自分達がこんな風に粉々にされてしまう。
そんな恐怖のビジョンを流し込んでくる。
「粉々にしても良かったよね?」
「もちろんです」
「よろしい。とってもお利口なDomだ」
「・・・・・」
眞門は女の頭を手で優しく撫でてやる。
Domの女は思った。
「Domにとって、こんな屈辱的な行為を敢 えてするなんて許せない!」
しかし、恐怖で逆らうことが出来なかった。
「じゃあ、次は君たちの番だよ」
「!」
「お利口なんだから、分かるね?」
「!!」
ヤバい。
この男は本気だ。
流し込んでくる恐怖のビジョンは脅しだけじゃなかった。
私たちを本気で痛めつける気でいる。
何も抵抗できない以上、どうすることも出来ない。
彼女たちは焦った。
と、Subの若い男が眞門の異様なGlare のせいで、呼吸がついに出来なくなったのか、苦しそうに軽い痙攣を始めた。
それが目に入った眞門はすぐに異様なGlare の放出を止めた。
そして、若い裸の男に駆け寄る。
「大丈夫か!!」
Domの女たちは眞門の異様なGlare から解き放たれた瞬間に、我先にと逃げ出すように階段を駆け下りて行った。
眞門はスーツの上着を急いで脱ぐと、裸でいたままの若い男にかけてやり、優しく抱きかかえた。
そして、「もう、大丈夫だからね」と、優しく声をかけてやる。
眞門は瞳の色を今度はサーモンピンク色に染めて、恩人の青年を見つめた。
あまりの酷い仕打ちの後に、更に自分の特殊なGlare を浴びたのだから、Subの青年が既にSub drop していてもおかしくない。
そんな青年の意識を早く正常に戻してやらないと、この青年はとても危険な状態になる。
そう焦る眞門はルール違反(=本来、Glare はSubの了承を取ってから使うもの)と知りながらも、Subを癒したり、不安を取り除いてやることが出来る、癒しのGlare のオーラを発した。
癒しの優しいGlare を放出しながら、眞門は恩人である青年の様子を見守った。
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