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無様なDom

眞門を自宅まで送り届けた玄関で、強制的に服従される眞門のGlare(グレア)に包まれてしまった星斗は、何も抵抗することが出来ず、眞門の胸の中で大人しく抱きしめられていた。 「服が雨でびしょ濡れじゃないか。寒かっただろう」と、眞門は穏やかな表情で星斗を見つめた。 しかし、眞門の瞳はまだ灰色に染まったままだ。 星斗は眞門との優しい言葉遣いとは裏腹に恐怖を感じる。 「気づいてやれずにすまなかった。まずは、一緒にお風呂に入って、冷たくなった体を温めよう・・・。星斗、Strip(服を脱ぎなさい)」 眞門が星斗にCommandの発令を口にした。 星斗は緊張したように、大きく唾をのみ込むと、服の端に手を掛けた。 「星斗」 そう言うと、眞門は星斗の顎をクイっと持ち上げ、強引に視線を合わせた。 「ダメじゃないか」 「えっ・・・」 「そうじゃないだろう?」 「でも、脱げって・・・」 「Strip。そうCommandを出されたら、まずはパートナーである私に確かめなさい」 「・・・何・・・を?」 星斗は答えが分からず、眞門をただ見つめた。 「『自分で脱ぎますか? それとも脱がせてくれますか?』だ」 「・・・・・」 この人は誰なんだろう? 俺が全然知らない眞門さんだ。 星斗は単純にそう思い、戸惑った。 「Commandを出されたら、Subの星斗に拒否権はなくなるんだから、どう脱ぐかが大切なんじゃないのかい。俺を喜ばせてくれる。それが俺のパートナーになったSubの星斗の役目だろう」 「・・・・・」 「確かに今までそれを丁寧に教えてこなかった俺も悪かった。けどね、どうして、そんな大切なことを星斗には教えなかったと思う?」 「・・・分かりません」 「期間限定のパートナーだったからさ。期限を終えたら、星斗が他のDomにそんな甘えた行為をすることになるのかと思うと、想像しただけで、胸糞悪いって腹の底ではいつも感じていたんだよ。だから、絶対に教えてやるつもりなんてなかった・・・でも、安心しなさい。星斗は永遠にもう俺のものだから。誰にも渡さないからね、ちゃんと星斗の役目をこれからは教えていくよ」 語尾にいくにつれ、眞門の口調は厳しくなった。 眞門さん、本当にどうしちゃったんだろう・・・? 星斗は包まれる邪悪なGlareと眞門のあまりの豹変ぶりに、頭の中での理解が全く追い付かなかった。 「じゃあ、もう一度。星斗、Strip(服を脱ぎなさい)」 「・・・自分で脱げば良いですか? それとも・・・脱がせてくれますか?」 星斗は戸惑いながらも教えられた通りに口にした。 「そうだな・・・今夜は特別に俺が脱がしてあげようか」 「―――――」 眞門は星斗の無反応な様子が気に入らなかった。 「どうしたの? 嬉しくないの?」 「・・・嬉しいです」 星斗は眞門を恐れてそう口にした。 「じゃあ、そう言って、『お願いします』って言わないと」 「・・・嬉しいです。お願いします」 星斗がそう言うと、眞門は嬉しそうに微笑んだ。 眞門は星斗の服に手を掛けた。 星斗は抵抗出来ることもなく、ただ眞門に身を任せた。 パーカーを脱がせ、下に着こんでいたTシャツを脱がせ、星斗をまずは上半身裸にした。 その間、星斗は最大限に頭の中で考えを巡らせた。 どうすれば良い・・・?  どうすれば良いんだ・・・? とにかく、おかしくなった様子の眞門さんをどうにかしないと・・・。 ・・・そうだ、safe word!! 眞門さんが以前、言ってた。 ムリな状況だと感じたら、safe wordを遠慮なく使えって。 確か、俺たちのsafe wordは・・・『知未さん、ストップ』だ。 「知未さん・・・」と、星斗が口にした。 「ン?」 呼ばれた眞門が星斗を見つめた。 「知未さん、ストッ・・・」 「Stop(やめろ)」 「!」 星斗がsafe wordを言い終わる前に、眞門が先にCommandを発令した。 そんな・・・っ!! 星斗は動きが封じられたのか、口元が全く動かせなくなった。 「悪い子だな―、星斗は。いつから、平気で噓をつく子になったの? 俺にはsafe wordは使わない言ってたじゃないか・・・」 「・・・・・」 確かに言ったけど、それは前の眞門さんだからであって、今のおかしくなった眞門さんにじゃない・・・っ。 どうしよう。 寺西先生の解説では、safe wordがSubの唯一の切り札だって言ってたのに・・・。 打つ手がなくなった星斗は絶体絶命の立場に追い込まれたと感じた。

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