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懺悔
眞門は螺旋階段を上り、リビングにやってくると、今も心配をしているであろう直属の部下にスマホで電話を掛けた。
通話がすぐにつながると、「・・・ああ、心配かけて本当にすまなかった・・・ああ・・・大丈夫だ。今日はこのまま休みを取らせてもら・・・う・・・」
部下と通話する眞門の前を、螺旋階段を駆け上がって来た全裸の星斗が全速力で駆け抜けて行く。
「! また後で電話する!!」
眞門は慌てて通話を切ると、玄関に向かう星斗を追いかけて、服を着る寸前の星斗を捕らえた。
「どこ行くの!」
眞門はそう言いながら、星斗を逃がさないというように、背後からがっしり捕まえると、リビングへと引きずっていく。
ミッションに失敗した星斗は、「帰るに決まってるじゃないですかっ!」と、全裸のままでジタバタとした。
「なんで! きちんと話しよう!!」
「俺には話なんてないです! いいから放してくださいっ!」
「無理っ!」
眞門がそう叫ぶと、ふたりはそのままの体勢でリビングにあるソファへとなだれ込んだ。
「星斗、お願いだから、落ち着いて」
星斗は起き上がって、眞門に視線を合わせると、
「無理です! 俺は知未さんの顔なんて二度と見たくない!!」
と、怒りに任せて、あるがままの気持ちを叫んだ。
「俺が昨日、どんな思いで首輪を外したか分かりますか! どんな怖い思いをして、知未さんに抱かれようと思ったか分かりますか! どんな決意で知未さんが欲しいって口にしたのか分かりますか!」
星斗の瞳に涙が滲んだ。
「俺、まだ二十歳なんですよっ・・・絶対探せば、知未さんよりもっと良いDomに出会えるはずです!
なのに、昨日の夜、知未さんの愛人でこれからは生きて行こうと決めたんですよ!
色んな人を傷つけることになる。
それでも俺はそれで生きていこうと決めたんです。
目立たない影のように生きて行くんだって!
それは・・・知未さんのことが・・・あなたのことが大好きだったからです!」
「・・・・・」
「その想いが・・・どれだけ辛かったか・・・知未さんに分かりますか!!」
眞門は駆り立てられたように星斗を強く胸の中に抱きしめた。
「・・・ごめん。本当にごめん。いっぱい傷つけて、本当にごめんっ」
「Subだからって、傷つくことに何でも慣れてるわけじゃありません!」
「うん、ごめん・・・本当にごめんね・・・」
眞門はそう言うと、星斗の頭を優しく撫でる。
「知未さん、酷いです! 知未さんがそんな酷い人だと思ってませんでした!」
「・・・うん、ごめん・・・」
「ごめんで済まないです!」
星斗はそう訴えると、眞門の胸で号泣し始めた。
「・・・どうして、こんな酷いことしたんですか!!」
星斗はワーッと声に出して号泣して、眞門の胸の中で訴えた。
「うん、ごめんね・・・本当に星斗にはダメDomでごめんなさい。いつも怖い思いばかりさせてごめんなさい。でも・・・昨日の夜に言ったことは全部本気だから」
眞門は星斗を胸から引き離すと、真剣な眼差しで見つめた。
「星斗のことは俺も大好きだ。愛してる。一生、俺だけのSubでいて欲しい」
「・・・だったら・・・だったら、なんで、俺に誤解されるようなことしたんですか! 俺に嘘いて、会ってくれなかったり、妹のこともわざと誤解させたり・・・」
「うん・・・そうだよね・・・」
眞門は何かに迷っているようだった。
自分の気持ちを落ち着かせるように、大きく一呼吸した。
「今まで誰にも話したことのない話があるんだけど・・・この話を星斗には話さないと前に進めないから、まずはその話を聞いてもらえる?」
「・・・なんですか?」
「俺が小学5年生の夏の終わりの出来事なんだ」
眞門は自分の胸の奥にずっと仕舞い込んでいたトラウマを星斗に話すことにした。
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