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・・・いいの?

眞門はソファから降りると、星斗に向かって、床に正座した。 「星斗。 昨晩、俺がしでかしたことは本当に反省しています。 DomがSubをSub dropさせるなんて、言語道断、以ての外。最低最悪です。 どんな言い訳をしても到底許されることじゃない。 本当に申し訳ありませんでした!」 そう言うと、頭が床に着く程深く下げて、星斗に向かって土下座をした。 「それで、勝手な言い分だとは思いますが、もし、許してもらえるなら、俺の正式なパートナーになってください!!」 眞門は土下座したまま、そう続けた。 「・・・・・」 星斗は返答に困った。 知未さんを長年苦しめていたトラウマには同情するけど、知未さんに酷い目に遭わされたのも事実で、今後、また同じ目に遭わされないとは限らない。 ・・・でも、あの、何よりも負けを嫌う知未さんが俺に土下座して、謝るなんて。 眞門の土下座は星斗にとって、目を疑うほどの信じられない姿だった。 相当深く反省はしてるってことなんだよな・・・。 でもな・・・だからってな、許せるもんじゃない・・・でもな・・・絶対に俺が折れてあげなきゃ、知未さんはこの頭を上げないだろうし・・・でもな、知未さんのやったことをそんな簡単に許しても良いのか・・・?  俺のことがいくら好きだって言ってもさ・・・まあ、俺も知未さんのことはまだ嫌いまではいってないけどさ・・・顔は2度と見たくないとか口にしちゃったけどさ・・・まだ完全に嫌いにはなってないけどさ・・・でもな、知未さんって思ってる以上に酷い人だったしな・・・。 星斗は返答を迷いに迷って、ある決断に至った。 「あの・・・」 星斗がそう口にすると、眞門は下げていた頭をようやく上げた。 「はい」 眞門はフラれる。 そう覚悟をした。 星斗が答えを出すのに時間が掛ったからだ。 自分のことをまだ好きでいてくれたら、もう少し早く、簡単に許してくれるはずだ。 「期間限定をまだ続けるっていうのでどうでしょう?」 「えっ?」 「・・・その・・・お試し期間といいますか・・・知未さんがやらかしてしまった事情は分かりましたけど・・・俺もそれですんなり知未さんを信じるわけにはいかないので・・・」 「いいの?!」 眞門はえらく驚いた様子だった。 「え?」 「あんなことをしでかした俺にもう一度チャンスをくれるの?」 「え、まあ・・・とりあえずは・・・それで良いかと・・・」 「でも、そしたら、俺はもう二度と星斗のことを離さないよ。星斗が出会うはずの運命のDomから、星斗のことを奪い取るつもりでいるから、星斗は必然的に運命のDomとはもう出会えなくなるけど、それでも良いの?」 「・・・・・」 「俺、星斗のことを全力で落しにいくよ」 「・・・・・」 星斗は返答に困って、黙り込んでしまった。 なんて言えばいいんだよ、この返し。 てか、めっちゃ照れるじゃん。 こんなこと言われたの、初めてだ。 なんて、返すのが正解なのかさっぱり分かんないっ! 「落とせるものなら落としてみてくださいよ」って、高飛車に出てみる? そんな高飛車に出れるの、人生で今回が最初で最後かもよ。 しかも、相手は知未さんよ? 一生の記念に言っとく? それとも、「知未さん、それ恥ずかし過ぎ・・・」って、頬を赤らめて可愛く照れてみる・・・? Subっぽく言ってみる??? そんな器用なこと出来るのか、俺!? でも、そんな可愛いこと言えるのも今回だけかもよ・・・? ニートの俺にとったら、こんな場面に遭遇するの、これが最後かもよっ! あー、だったら、なんか、記念に言っておかないと!! 星斗が上の空でそんなことをもやもや考えていると、「星斗」と、眞門が星斗の隣にいつの間にか移動していた。 「それはPlayもありで良いの?」 「へ?」 「お試し期間。Playも含んでるの?」 「あー、えっと・・・」 ・・・そんなことまで考えてないよっ。 てか、記念のセリフを言い逃しちゃったんじゃん! 星斗はそれを残念がると、Playをどうするべきか悩んだ。 「星斗、今、全裸でいるの分かってる?」 「・・・え?」 「あれ、やったげよっか?」 「あれ?」 「気持ち良かったんでしょ? 俺、ちゃんと習ってあるから上手いよ」 「なんのことですか?」 「ジャップカサイ」 「なんですか、それ?」 眞門はわざと星斗の耳元で囁く。 「睾丸マッサージ」 「!?」 睾丸マッサージと囁かれるだけで、チンコが勃つ日が来るなんて思ってもなかった!! 星斗は股間を思わず両手で隠した。 「あの・・・」 「ん?」 「Playは・・・ありにします」 「了解です。星斗の正式なパートナーに選ばれるよう、精一杯精進させて頂きます」 そう言うと、眞門はとても嬉しそうに微笑んだ。 その笑顔を見て、「結局、知未さんの望み通りに俺は流されてしまうんだな」、と、自分のSubの性質には抗えない、と、半ば諦めに近いものを星斗は仕方なく受け入れた。

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