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星斗の相談はなぜか、講座へ
「支配されるなら、よりよい"ご主人様"を選びたいじゃないですか?
ダイナミクスの世界は複雑なんですよ。
Domは支配する側、Subは支配される側。
なのに、相手を選ぶ主導権を握っているのは常にSubの方なんです。
Domは常に選ばれる側の人間です」
「?」
「なので、本来、首輪はつけたいものではなく、つけさせたいものなんですよ」
寺西はニコッと優しく微笑む。
星斗は、「?」を、顔いっぱいに浮かべる。
「でも、先生は動画講座では、首輪はSubの支配される欲求を満たすための道具だから、つけたいものなんだって、そう言ってたじゃないですか?」
「勿論、それはあります。けど、あくまでもそれは教科書に載せるための表向きの理由です。本当は、DomがSubに浮気されないように首輪をつけたことが始まりなんですよ」
「???」
この辺りから星斗は、寺西の話に全く理解が追い付かなくなった。
なんで、表向きと裏向きの理由があるの???
「DomはこのSubが運命の相手だ、そう思ったら、一途になる傾向があります。
まず、浮気は絶対にしません。というより、他のSubが目に入らなくなるんです。
なので、Domは恋に落ちると、ストーカー気味になる傾向があります。
でも、それは当然と言えば当然のことなんです。
自分の欲求と恋心を満たしてくれる相手なんて、めったに見つけられませんから。
Subはどちらかというと優柔不断です。
常に迷います。
フラフラとする生き物です。
でもそれは、より良い主人を探す為には必要なことなんです。
自分の一番居心地の良い居場所はどこにあるのか?
それを探すためには必要なことです。
だから、そんなSubが逃げないように、他のDomに奪われないように、DomはSubに首輪をつけたいんです」
「・・・・・」
「でも、この実態が世間的にバレてしまったら、Subはどうなるでしょう?
Domの、何が何でも首輪を付けてしまおうとする横暴が始まります。
Subが大変な目に遭うことは目に見えているんです。
なので、Subの人権を守るためには表向きの理由が必要なんですよ」
・・・なんか、難しい。
結局、Subは支配される、"ご主人様"を自ら選ぶって事!?
Subにそんな性質があるから、Domは無理やり、自分を選ばせようと躍起になって、首輪をつけたがるって事???
実は力関係が、Dom>Subではなく、Sub>Domだってこと???
それを表沙汰になると、Domは暴走するってこと???
星斗は自分なりにそう理解してみたが、これが正解なのかどうか分からないので、難しい顔を浮かべてしまう。
それを見かねた寺西は、
「要するに、渋谷さんの悩みは実はもうすでに解消されているということです。
眞門が渋谷さんに首輪をつけさせたいと思っているということは、渋谷さんを運命のSubだと確信しているってことです。
なので、一生愛されると思って安心してください」
と、付け加えた。
「・・・そんなっ、俺にそんな価値ないですよ・・・っ。知未さんになら分かりますけど、俺にはそんな価値はありません・・・っ、誰が俺のことを好きになるんですか・・・知未さんぐらいですよ、こんな俺を好きだなんて言ってくれる、物好きなひとは・・・」
星斗はまた表情を暗くした。
寺西は思った。
渋谷さんの本当の悩みはこれなのではないか?、と。
「渋谷さん、何か勘違いしてませんか?」
「へ?」
「私、渋谷さんとお会いする度に口酸っぱく言ってますけど、Normalの考えをダイナミクスの性の世界に持ち込んでは絶対にいけません」
「・・・でも・・・」
「こちらの世界はNormalの世界とは別世界です。私、以前から、眞門はモテないと言ってますよね?」
「へ?」
「眞門は良い男かもしれませんが、魅力のあるDomではありません」
「・・・ん?」
星斗は戸惑った。
唐突に何の話???
「あいつは本当にモテませんよ。大体、あいつ、やる事が陰湿でしょ」
「・・・・・」
俺、その人の【仮】がついてる恋人なんですけど・・・。
その人のことが大好きなんですけど。
その相手に向かって、『モテない』って、そんな何度も言います?
うーん・・・陰湿ではないと思いますけど・・・まあ、見た目とは裏腹にねっちこいのは確かです・・・。
「逆に、渋谷さんは男性としては魅力がないのかもしれませんが、Subとしては大変魅力がありますよ」
「へ?」
「渋谷さん、ご自身の性の傾向はお分かりで?」
「・・・多分、依存かな~って、思ってます」
そう言うと、恥ずかしかったのか、星斗は肩を竦めてみせた。
「そうですか。私も渋谷さんはそうかなと思っています。依存系Subは今、希少種で大変人気があります」
「へ?」
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